月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

労務お役立ち情報

2023年4月1日から中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります。

大企業ではこれまでも、月の時間外労働60 時間以上の超過分に対して50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられていました。中小企業については13年もの間、猶予措置がとられていましたが、2023年3月末でその猶予措置が終了となります。

改正内容について詳しく解説していきます。

改正のポイント

これまで中小企業の1カ月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)の割増率は25%でしたが、改正により、60時間を超える労働時間に対して50%の割増率で計算をする必要があります。

参照:厚生労働省リーフレット

 

中小企業に該当するかどうかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断されます。

参照:厚生労働省リーフレット

深夜・休日労働の取扱いは下記の通りです。

深夜労働との関係

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、
深夜割増率25%+時間外割増率50%=75%

休日労働との関係

月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った労働時間は含まれます。

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいです。

代替休暇

月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払いの代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することが出来ます。

参照:厚生労働省リーフレット

代替休暇制度導入に当たっては、過半数組合、もしくは過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

労使協定で定める事項

1.代替休暇の時間数の具体的な算定方法
2.代替休暇の単位
3.代替休暇を与えることが出来る期間
4.代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

この労使協定は事業所において代替休暇の制度を設けることを可能にするものであり、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定されます。

代替休暇の時間数の具体的な算定方法

次のような算定方法になります。

代替休暇の時間数-(1カ月の法定時間外労働時間数-60)×換算率
換算率=代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率-代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率

【例】割増賃金率を25%と定めており、2023年4月1日以降、月60時間の時間外労働に係る割増賃金率を50%と定めた事業場において、1カ月76時間の時間外労働を行った場合

換算率 50%-25%=25%
(76時間-60時間)×25%=4
→代替休暇の時間数は4時間

就業規則の変更

割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。詳しくはモデル就業規則や社会保険労務士にお問い合わせください。

【就業規則の記載例】
(割増賃金)
第〇条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。
1カ月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次の通りとする。この場合の1カ月は毎月1日を起算日とする。

① 時間外労働60時間以下・・・25%
② 時間外労働60時間超・・・・50%

まとめ

今回の改正に当たって必要な実務は、まず60時間超の時間外労働をしている従業員の把握です。60時間を超える時間外労働が発生している場合、4/1以降は割増率を50%以上にして計算をする必要があり、場合によっては、就業規則の変更や、代替休暇を導入するにあたっては労使協定を結ぶ必要があります。

代替休暇は会社にとっては残業代の支払いを抑制でき、労働者にとっては健康の維持に繋がることから、労使双方にとってメリットのある制度として期待されていますが、60時間を超えるほどの長時間労働が行われている会社では、代替休暇を付与することが現実的ではない可能性もあります。また、運用上の給与計算や管理が複雑になり難易度が上がる懸念もあります。

代替休暇制度を設ける場合には、社内の需要を適切に見極め、導入の際には社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

労務お役立ち情報
この記事が気に入ったら
いいねをして、cashmoをチェックしよう!
FOLIO

タイトルとURLをコピーしました