8月の記事「数字の把握と活用で競争に勝つ!」では財務諸表にまとまる前の数字、たとえば「顧客別売上」、「新規既存客比率」などといった数字の把握と、その活用法に関する記事を掲載いたしました。今回は財務諸表の読み方の一つとして、「財務分析」の指標をいくつかご紹介いたします。
財務分析とは何か
財務分析とは、財務諸表(決算書)の数字を用いて、様々な角度から企業を分析することです。いくつかのカテゴリーに分けることができますが、「収益性」、「安全性」、「資金繰り」の3つに分けるのが一般的です。
収益性の視点:売上高経常利益率、総資本経常利益率
経営が効率よく行えているかを分析します。本業の損益に銀行の借入返済に係る支払利息なども加えた経常利益を、売上や資産額と比べることによって、「企業の儲ける力」を測ります。
売上高経常利益率=売上のうち利益として残る割合
=経常利益÷売上高×100(単位:%)
総資本経常利益率=企業が使ったお金でどれだけ利益を稼ぎだせているか表す指標
=経常利益÷平均総資本※×100(単位:%)
※平均総資本=(前期末資産の部合計+当期末資産の部合計)÷2
どちらの指標も高ければ高いほど、効率的に経営が行えていることになります。
安全性の視点:自己資本比率、当座比率
企業の財務が健全であるかを確かめる分析です。貸借対照表(B/S)の借方は資産の「運用状況」、貸方は「資産の調達源泉」を表していますが、そのバランスに注目することで安全性を確かめます。
自己資本比率=企業の根本的な安全性
=自己資本※1÷総資本※2×100(単位:%)
※1自己資本=純資産の部合計-新株予約権-少数株主持分
※2総資本=資産の部合計
当座比率=当面の安全性
=当座資産÷流動負債×100(単位:%)
自己資本比率は長期的、当座比率は短期的な安全性を表しており、数値が高いほど倒産しにくい企業であることになります。
資金繰りの視点:運転資金日数バランス
企業の経営というものは、売上を増やす、利益を増やすことはもちろんですが、現金の動き(キャッシュフロー)にも着目する必要があります。売掛金などの売上債権と、在庫などの棚卸債権、買掛金などの仕入債務のバランスに着目する分析手法です。
運転資金日数バランス=取引条件および在庫条件による運転資金の圧迫度
=売上債権残高日数※1+棚卸資産残高日数※2-仕入債務残高日数※3(単位:日)
※1売上債権残高日数=売上債権÷売上高×365
※2棚卸資産残高日数=棚卸資産÷売上原価×365
※3仕入債務残高日数=仕入債務÷仕入高×365
「回収は早く、支払は遅く」というのが資金繰りの鉄則ですので、この指標はマイナスであるほうが良好な状態です。
次回は、実際に上場企業の財務諸表を基に財務分析を行い、それぞれの指標をどのように活用するのかをご説明いたします。