時間の経つのは早いものでもう年末です。皆様にとって今年はどのような年であったでしょうか。
私の印象では、一言でいうと「嵐の前の静けさ」のような一年だったのではないでしょうか。経済先般では悪い状況ではなく、適温経済の中で(株式の乱高下もありましたが、)歴史的な株高となる一方で、これまでの延長線上にない未来の到来に身構えている状況のように感じております。
そう感じさせるものの一つは、既存政治を否定するポピュリズムの世界的な台頭です。特に、米トランプ政権が誕生し、現在はその姿勢をより鮮明化し「Make America Great Again」を合言葉になりふり構わぬ政策を連発しています。米国の活動は、米中の覇権争いが根底に感じられ決着がつくまで終わらないでしょう。世界の秩序が大きく変わる予感がします。
もう一つは、ITの目を見張る進化です。AI、IoT、ブロックチェーン等によって今後の10年間に起こる社会・経済環境の変化は、明治以降の変化全体をはるかに超えるポテンシャルを感じます。
このような状況で現状の日本人のマインドはどうなっているのかを2年前の記事と同様にベストセラービジネス書から見てみましょう。日本出版販売会社の調査ですが2018年の上半期で売れているビジネス書は以下のようになっています。
2年前のトーハンのビジネス書の上半期の調査では、アドラー心理学の入門書、「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」とその続編である「幸せになる勇気」が1、2位で、その他のトップ10の他の書籍の多くが自己啓発に近い内容で、日本のビジネスパーソンのマインドの内向き志向が読み取れました。
ただ、今年はビジネス書のベストセラーを見ますと、自己啓発本はかなり減り、将来動向に関した本に関心が集まっているようです。内向き志向から未来を見る方向へ少しずつ変わってきているのではないでしょうか。
特に、ご注目いただきたいのは、「お金2.0」「10年後の仕事図鑑」「AI v.s. 教科書が読めない子供たち」の3冊です。すべてAIや仮想マネー等によって引き起こされる現在の社会や経済の大きな地殻変動を予測しています。現在の常識が非常識になり、業種も働き方や生き方まで大きく変わるであろうことを予測しています。はじめの二冊は変化を楽観的に捉え、最後の1冊は悲観的に捉えており、AIがシンギュラリティ(人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念を指します。)に到達するかどうかも最初の2冊は肯定していますが、最後の一冊は否定しています。主張はかなり異なりますが、今後、生き残っていくために目指すべき点についての結論は変わらない点が面白いところです。それは、他の人がまねできない独自の価値を提供できる人や組織になることが成功の秘訣であるとのことです。つまり、コアなファンを持たない個人や企業は生き残れないということと思います。お正月休みに一読されてはいかがでしょうか。