2024年の労働法関連の主な法改正事項について解説します

労務お役立ち情報

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を是正する「同一労働同一賃金」制度が2021年4月から中小企業に適用されて3年が経過しました。働き方改革の推進が伴って、今年も労働法関連の法改正が幅広い分野にわたって行われます。

今回は労働法関連の2024年の主な法改正事項5つについて説明していきます。

時間外労働の上限についての適用猶予終了

この改正が2024年度における最大の法改正と言えます。いわゆる「2024年問題」です。

時間外労働の上限規制は2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されていましたが、建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師の事業・業務については適用が猶予されていました。今回の改正で適用の猶予が終了します。

時間外労働の上限規制とは、残業の時間に上限を設け、過度の残業をなくし、働く方の健康を確保するようにするためのものです。

特に自動車運転の業務については高齢化や深刻な人手不足に加えて、上限規制が強化されることで物流の混乱が予想され、また、建設業の業務については資材などの高騰もあり価格高騰や完成の遅れなどが予想されます。

引用:厚生労働省「建設事業、自動車運転の業務、医師に係る時間外労働の上限規制について

労働条件明示のルール改正(2024年4月)

「労働基準法施行規則」と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正に伴い、労働条件の明示事項等が変更されます。

全ての労働者(有期労働契約の労働者を含む)に対して、2024年4月以降の労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必要になります。

有期労働契約の労働者に対しては、有期労働契約の締結時及び契約更新時に更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容の明示、更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)説明することや、「無期転換申込権」が発生する有期労働契約の契約更新時に無期転換を申し込むことができる旨と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

※無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申し込みにより、無期労働契約に転換されるルールのことをいいます。有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申し込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は無期転換を断ることができません)

引用:厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?

裁量労働制の見直し(2024年4月)

今回、裁量労働制の導入手続きなどが見直されます。

特に影響がありそうな点は、従来は事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定締結などの手続きで導入可能でしたが、企画業務型裁量労働制のように専門業務型裁量労働制の適用においても本人から同意を得る事が必要になるという点です。また、同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定めることが必要になり、手続きが比較的煩雑になります。

引用:厚生労働省「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です

障害者法定雇用率の引き上げ(2024年4月)

現在は障害者の法定雇用率は2.3%ですが、2024年4月からは2.5%に引き上げられます。これにより従業員を40人以上雇用している企業では、障害者の雇用が義務付けられます。更に、2026年4月からは2.7%への引き上げも決定しています。
※法定雇用率とは、民間企業や国、地方公共団体は、障害者雇用率に相当する人数以上の障害のある方を雇用しなければならないとする制度のことです。

常用労働者100人超の事業主が達成できない場合は、障害者雇用納付金として不足1人につき月額50,000円を納める必要があり、達成した場合は、障害者雇用調整金として超過1人につき月額29,000円(令和5年3月31日までの期間については27,000円)が支給されます。

引用:厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について

社会保険の適用拡大(2024年10月)

2022年10月から従業員数100人超の企業について社会保険(健康保険・厚生年金保険)について適用拡大されましたが、今回は、2024年10月から厚生年金保険の被保険者数50人超の企業も、一定の要件を満たした短時間労働者の社会保険への加入が義務化されます。

加入対象の要件は以下の通りで、全てに該当する方になります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2カ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではないこと
※法人事業所の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)全ての適用事業所の被保険者の総数、個人事業所の場合は適用事業所単位の被保険者数となります。

引用:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック

最後に

今回は主な法改正事項5つを取り上げましたが、他にも労働安全衛生法やフリーランス関連などで改正、施行がある予定です。日頃の業務に影響するものが多く、働き方や採用の見直しが必要になってくるかもしれません。まずは自社の状況を把握し備えておく事が今後ますます重要になってきますので、専門家に相談してみるのはいかがでしょうか?