労働基準監督署と調査について

労務お役立ち情報

ニュースなどで名前は知っているけれどあまり馴染みのない労働基準監督署。

労働問題に関して相談できる機関で労働者にとっては味方であり、経営者にとっては敵のようなイメージを持つ人が多いかと思います。実際には労働基準監督署はどんな機関なのか、また労働基準監督署の調査とはどのようなものなのかを説明していきます。

労働基準監督署について

労働基準法、その他の労働関係法令に基づき、事業場に対する監督及び労災保険の給付等を行う厚生労働省の第一機関であり全国に321署と4支署あります。

内部組織は、労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付や、相談対応、監督指導を行う「方面」(監督課)、機械や設備の設置に係る届出の審査や、職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導を行う「安全衛生課」、仕事に関する負傷などに対する労災保険給付などを行う「労災課」、会計処理などを行う「業務課」で構成されています。
MVC②

引用:厚生労働省「労働基準監督署の役割」

労働基準監督官の権限と調査

労働基準監督署には、企業が法令違反をしていないかを調査する労働基準監督官がいます。
労働基準監督官は監督指導することで法違反を是正させることを目的として強い権限を持ち、強制的に立入検査し、場合によっては逮捕することもできます。

労働基準監督官の調査は主に2種類あり、無作為に事業場を抽出し必要書類を提出させて立入調査する『定期監督』と従業員や元従業員などの会社関係者からの申告に基づいて立入調査する『申告監督』があります。
調査した結果、調査に入った事業場の約7割で法違反が発覚しています。主な法違反の内訳は下のグラフのようになっています。

MVC②

引用:厚生労働省「労働基準監督署の役割」

労働時間に関しての誤った解釈

固定(定額)残業手当

時間外労働や休日労働に対して固定(定額)残業手当を支払っているから、残業代は全てに支払っていると認識している事業主が多いです。
残業や休日労働時間が固定(定額)残業手当で設定した時間を超えてしまった場合は、更に上乗せして超えた分の割増賃金を支払わなければなりません。
また、固定(定額)残業手当を支払っていることで事業主による労働者の労働時間の把握義務を果たしている事にはなりません。どちらにしても労働時間を把握しておかなければなりません。

変形労働時間制

1カ月単位や1年単位の変形労働時間制を採用している事業場において誤った運用をしているために結果的に残業代未払いの状態になってしまっているケースがあります。
事業場の所定労働時間や勤務体系によって割増賃金が発生するラインが異なりますので、お近くの社会保険労務士に相談するか下のリーフレットで確認することをお薦めします。

1カ月単位の変形労働時間制リーフレットはこちら
1年単位の変形労働時間制リーフレットはこちら

名ばかり管理職

「管理職には残業代を支払わなくていい」という事で役職を付けて残業代を削減できると認識している場合が多いです。単に役職を付ければ労働基準法上の管理監督者になるわけではありません。以下の3点で実態を踏まえて総合的に判断されます。

①経営者と一体的な立場で仕事をしている
②勤務時間について厳格な制限がない
③その地位に相応しい給与、報酬が支払われている

また、労働基準法上の管理監督者に合致する場合であっても、深夜労働についての割増賃金や有給休暇に関しては他の労働者と同じ扱いになります。
管理監督者とはこちら

◆他に法令違反としてよく指摘される事項として

・入社時における労働条件の書面による明示違反(雇用契約書などの未作成)
・就業規則の未作成(10人以上の事業場)
・36協定の未届け

以上の事項が多いようです。

常に備えておくべきもの

労働基準監督官が調査に入る前に主に以下の帳簿を用意するよう通知があります。通知があってから作成するのは不可能なものもあるので常に備えておく事が大切です。

① 労働者名簿
② 出勤簿
③ 賃金台帳
④ 雇用契約書又は労働条件通知書
⑤ 就業規則(10人以上の事業場)
⑥ 時間外労働、休日労働に関する協定届(36協定)
⑦ 健康診断個人票
⑧ 有給休暇管理簿     など

まとめ

企業のコンプライアンス(法令順守)が重要である事はわかっているけれど何から手を付けたら良いのかわからないというのが本音だと思います。
最近では従業員や元従業員などが労働基準監督署に密告するケースも少なくありません。
日頃から従業員とコミュニケーションを取り、問題の改善に努める事が重要です。

また、10月には最低賃金の引上げが見込まれますので給与水準などの見直しも必要です。
総合的な見直しには時間と手間を要するため日常業務に支障をきたす事もございます。
適正に効率よく是正していくためにお近くの専門家に相談してみてはいかがでしょうか?

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