労働契約の終了事由に関する主な種類やルールについて

労務お役立ち情報

労働契約の終了には、自己都合の退職や定年、解雇、契約期間の満了(雇止め)などがあります。特に解雇などの会社都合での退職には、トラブルになるリスクを多く残します。使用者として、労働契約の終了事由について十分に理解しておくことが重要です。

今回は、労働契約の終了に関する主な種類やルールについて解説していきます。

解雇について

使用者から一方的な意思表示によって労働契約を終了させることを解雇といいます。解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働契約法第16条により労働者を辞めさせることはできません。解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要です。

例えば、解雇の理由として、勤務態度が悪い、業務命令に従わない、会社のルールに違反したなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。また、法律で解雇が禁止されている主なものは以下の通りです。

●労働基準法
業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
●労働組合法
労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
●男女雇用機会均等法
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇
●育児・介護休業法
労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。そして、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。
予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。(労働基準法第20条)。
さらに、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。

有期労働契約の場合

有期労働契約については、あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたものなので、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています(労働契約法第17条)。そして、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

また、有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています。
(厚生労働省:「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)

さらに、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります。(労働契約法第19条)

整理解雇

使用者が経営状況の悪化などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効かどうか厳しく判断されます。

①人員削減の必要性
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
②解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
③人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
④解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

退職勧奨について

解雇と混同しがちなものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、使用者が労働者に対し、退職を促して労働者が合意の上で退職することをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇とは異なります。

労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由意思であり、労働者は勧奨退職に応ずる義務はありません。退職勧奨は単なる合意解約の申し込みに過ぎないので応ずる義務は無いのです。

なお、退職勧奨に応じて退職した場合には、会社都合の退職となり、自己都合による退職とはなりません。

まとめ

解雇や雇止め、退職勧奨など使用者側からの働きかけによる労働契約の終了によって、労働者の生活に少なからず影響を与えるので、使用者は、労働者が受けるダメージを最小限に抑えるよう、可能な限り配慮をすることが求められています。

法令や労使間で定めたルールの遵守はもちろん、労使間での事前の十分な話合いや、お互いの信頼関係や尊厳を守る配慮は、労使間の紛争防止に不可欠です。

参照:厚生労働省「適切な労務管理のポイント