産後パパ育休(出生時育児休業制度)の創設 ~令和4年10月から新たに創設~

労務お役立ち情報

令和3年度の男性の育児休業取得率は13.97%と9年連続で上昇し、過去最高となっています(令和3年度雇用均等基本調査)。厚生労働省では、男性の育児休業取得の更なる推進を図り、男女とも仕事と育児の両立を促進する施策として、「改正育児・介護休業法」が令和4年4月から順次施行され、令和4年10月からは 従来の育児休業において分割取得が可能なる制度や、新たに産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)が創設されました。

今回は、創設された産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)を具体的に説明していきます。

対象期間

子の出生直後、女性は産後休業(最大8週間)を取得できます。この期間にその配偶者も育児に参加できるよう子の出生後8週間以内(産後休業中)に4週間まで休業を取得可能です。業務の都合などにより分けて取得したい場合には、2回まで分割取得可能です。

対象外となる労働者

子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに契約が満了することが明らかな有期雇用労働者は対象外となります。

また、労使協定を締結することで、下記の労働者が対象外になります。
・雇用された期間が1年未満の労働者
・申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者
・週の所定労働日数が2日以下の労働者

申出期間

原則は、休業の2週間前までに会社に申し出をすることになります。例外として、会社が雇用環境の整備などについて、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めた場合は休業の1ヶ月前までに申し出るよう規定することができます。

休業中の給付金と社会保険料免除

同時に成立した雇用保険法の改正により、産後パパ育休中に給付される給付金制度も創設されました。これにより、現行の育児休業時と同様に雇用保険から所得補償が受けられます。また、休業した日が同一月内に14日以上あれば社会保険料免除の対象となります。

支給要件
・休業開始日前2年間で賃金支払基礎日数が11日以上(若しくは就業している時間数が80時間以上)の月が12ヶ月以上あること
・休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業時間数が80時間)以下であること
支給額
休業開始時賃金日額(原則、休業開始前6ヶ月間の賃金を180で除した額)×支給日数×67%
申請期間
出生日の8週間後の翌日から起算して2ヶ月後の月末まで

育児休業、産後パパ育休や 経済的に支援します – 厚生労働省」

産後パパ育休中の就業

労使協定を締結し労働者が合意した範囲内で休業中に就業することが可能です。

具体的な手続きの流れは以下①~④のとおりです。

①労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示(候補日等がない場合はその旨)
③労働者が同意
④事業主が通知

なお、就業可能日等には上限があります。

◦休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
◦休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

例)所定労働時間が1日8時間、1週間の所定労働日が5日の労働者が、休業2週間・休業期間中の所定労働日10日・休業期間中の所定労働時間80時間の場合
⇒就業日数上限5日、就業時間上限40時間、休業開始・終了予定日の就業は8時間未満

育児休業等を理由とする不利益取り扱いの禁止・ハラスメント防止

育児休業等について申し出た事や取得した事を理由に、会社が解雇や降給、降格など不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。今回の改正で、妊娠・出産の申し出をしたこと、産後パパ育休の申し出・取得、産後パパ育休期間中の就業を申し出・同意しなかったこと等を理由とする不利益な取り扱いも禁止されます。また、会社には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。

◆ハラスメントの例
・上司から「男のくせに育児休業を取るな!」と言われ、取得を諦めざるを得なかった。
・産後パパ育休の取得について同僚から「自分なら取得しない。迷惑なんだけど。」と言われ苦痛に感じた。

まとめ

政府は男性の育児休業取得率を2025年までに30%を目標としていますがまだ開きがあります。2023年4月には従業員が1000人を超える企業に男性の育児休業の取得率を公表するよう義務づけます。今回の改正により、男女問わずワークライフバランスに考慮した働き方ができる社会になることが期待されます。会社側は出産、育児についての意識改革や就業規則の改定などの対応が必要です。この機会に専門家に相談してみてはいかがでしょうか?

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