はじめて人を雇うときに考えること、決めること

労務お役立ち情報

継続的な事業活動を行っていくにあたり、事業を拡大する段階は人を雇うことが選択肢にあがります。

役員のみのときとは異なり、人を雇うということは労務管理等において留意しなければならないポイントが複数存在します。今回は、はじめて人を雇うにあたって考えなければならないこと、そして決めなければならないことにフォーカスをあて解説していきます。

採用前のチェックポイント

人を雇うことを検討するに至る背景として、現状の業務で手が回っていない、または将来的な事業の拡大などが挙げられます。

前者の場合は早急に募集をかけるべきですが、後者の場合、逆算していつからどのような業務を展開する予定なのかを可視化し、スケジュールを組みましょう。あまりにも早く採用してしまうと、事業拡大前に人件費過多となり、経営への負担となってしまいます。また、雇っても与える仕事が少なく、労働者にとっては「成長の機会のない職場」だと見切りをつけられる可能性もあります。もちろん教育に時間をかけられるというメリットもあります。

逆に採用が遅すぎると、業務に手が回らなくなり対応が遅れ、顧客からのクレームやヒューマンエラーによる損害などが発生する可能性があります。

採用にあたっての契約形態の相違点とは

どのような契約形態で採用するかによって、手続きや人事・労務面での管理が大きく異なります。契約形態は原則として次の2つに区分されます。

業務委託契約

労働・社会保険諸法令が適用される労働者とは異なり、外注するイメージです。同じ空間の中で仕事をするにしても労働者ではないことから指揮命令ができず、業務受託者の裁量に委ねる必要があります。そして、成果物に対して報酬を支払うこととなります。

雇用契約

前述の業務委託契約と異なり、雇用契約の場合は「労働者」として、使用者の指揮命令により業務を課すことができます。その代わりに労働者保護の観点から労働・社会保険諸法令が適用されます。具体的には労働基準法や最低賃金法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などが適用対象となります。よって、業務委託契約よりも雇用契約の方が管理が複雑と言えます。

はじめての採用を行うにあたっての必要な手続き

以下は、雇用契約を中心に解説していきます。「労働者」として、採用を行うにあたっては、以下の手続きが必要となります。

適用事業報告

労働者を雇い入れることにより「労働基準法」が適用される事業所であることを届け出る要があります。

保険関係成立届

これは、労働保険(労災保険と雇用保険を総称)を成立させる届出となります。労働保険のうち、労災保険は労働時間数に関わりなく、1人でも労働者を雇い入れるにあたっては成立させる必要があります。労災保険とは業務災害や通勤災害が起きてしまった際に、労働者への災害補償を事業主に代わって国が補償する制度です。

概算保険料申告書

労災保険を公的な制度として維持するには保険料の拠出が必要です。当然、事業主に代わって国が補償をするという性質上、事業主が国へ納めるという立て付けです。労働保険料の納付方法は当年度の保険料を概算で支払い、実際に支払った賃金が確定した翌年度に不足額があれば、差額を支払うという形を採用しています。よって、保険関係成立届と併せて、概算保険料申告書に当該労働者への採用年度に支払う賃金の年間総支払額を記載し、保険料を納める手続きが必要となります。尚、支払いは銀行振り込みや電子納付でも可能です。

36協定

全く時間外労働をさせる予定がない場合、届出は不要ですが、突発的に時間外労働が生じる可能性がある場合には届出をしておくべきです。本来、労働者には1日8時間・週40時間を超えて労働を命じてはなりません。しかし、本協定を締結し、届け出をすることで、面罰的効果と言い、労働基準法違反ではなくなります。尚、36協定の有効期限は最長で1年間であり、継続的に見直し、締結、届出が必要となります。

尚、適用事業報告、保険関係成立届、概算保険料申告書、36協定は、会社所轄の労働基準監督署が届出先となります。

雇用保険適用事業所設置届

労働保険のうち、雇用保険は以下の2つの条件にあてはまった場合、法律上当然に加入が義務付けられます。

・週に20時間以上の労働
・継続して31日以上の雇用見込み

上記の2点に当てはまる労働者を雇い入れる場合には、雇用保険の被保険者となりますので、後述する雇用保険被保険者資格取得届と併せて雇用保険の設置が必要となります。

雇用保険被保険者資格取得届

前術の通り、雇用保険適用事業所設置届と合わせ、雇用した者については雇用保険被保険者資格取得届も必要となります。留意点としては、採用者に前職がある場合で、かつ、前職でも雇用保険に加入していた場合、被保険者番号が付番されています。よって、採用時に雇用保険の被保険者番号を確認しておくことで手続きがスムーズになります。尚、不明の場合は届出の際に前の職場名を記載することで確認できる場合があります。

尚、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届は会社所轄のハローワークが届け出先となります。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

社会保険とは健康保険と厚生年金保険を総称しており、パートやアルバイトとしての採用であっても、週および月の所定労働時間が正社員の4分の3以上の場合、社会保険に加入しなければなりません。

尚、役員が無報酬などで、社会保険に加入していなかった場合や、会社設立と同時に、人を雇うという場合は、新規適用届と言い、社会保険の設立が必要であり、新規適用届と併せて健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を届出することとなります。

はじめての採用にあたっての人事面での留意点とは

コロナ禍により、採用活動の形も再考が求められており、対面・非対面どちらで面接を実施するか、採用後の研修をどのように行うかも、過去の事例があてはまらないことが少なくありません。また、一度採用したら終わりではなく、どのような基準で評価し、労働条件の設定や変更(例えば初任給の決定やその後の昇給)をしていくのか、はじめての採用がその会社の将来的な基準となることから、最初から大企業が採用している基準を当て込んでしまうと後の運用が苦しくなります。よって、会社の身の丈に合った制度の導入が必要です。

はじめての採用にあたっての労務面での留意点とは

まずは出退勤の管理です。労働時間は1分単位での管理が求められ、どのように管理していくのかも重要です。手書きやエクセルは、法で求める水準に達していないということではありませんが、紛失やデータ消失等のリスクがあります。このような事故に備え、クラウド型の管理ソフトの導入も検討してみましょう。安価な価格で提供されており、費用対効果は決して悪くありません。

まとめ

人を雇うということは、様々な管理が必要となります。特に、雇用契約の場合は労働者保護の観点から、様々な関係法令の遵守が求められ、万が一遵守できていない場合、罰則が適用されることもあります。そして、初めての雇用は届出先の行政機関もそれぞれ異なることから、専門家へ依頼してノンストップで行うことも現実的な選択肢となります。

キャシュモでは、社会保険労務士を始め税理士や財務・経理の専門家がワンチームで、労務その他の経営に関するアドバイスをおこないます。また、社会保険の手続・給与計算・経理などのバックオフィス業務のアウトソーシングも提供します。更に、マネーフォワードやfreeeを始め、各種クラウド型システムの導入支援も行います。はじめて人を雇う時に少しでも不安がありましたら、是非キャシュモにご相談下さい。

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