給与計算を外注するメリットデメリット

経理お役立ち情報

会社が継続的に事業を行っていく為には労働者を雇用し、労働力の提供を受けることが必要不可欠です。そして、労働力の提供を受ける代わりに、労働時間に見合った一定額以上の給与を支払う必要があります。給与計算は会社がいかなる状況であっても毎月発生する業務であり、また一定の知識や経験値も必要であることから、給与計算の外注を検討する会社も少なくありません。

この記事では、給与計算を外注する際のメリットデメリットにフォーカスをあて解説していきます。

給与計算の重要度

給与計算は労働者を雇用し、事業を継続するのであれば必ず必要となる業務です。例えばある従業員が、有給休暇が付与されていない段階で病気になり、1か月間全く勤務しなかったとしても、社会保険加入対象者であれば労使折半した額の社会保険料の徴収が必要です。なので、1か月間給与計算業務が全く発生しないということはまずありません。給与計算は、毎月必ず1回は実施する必要がある重要な業務です。給与計算は労働者を雇用する時点で発生する業務ですが、退職後であっても(翌月支給などの場合には)計算が必要となる場合もあります。言うまでもなく給与計算は労働者の生活に影響を及ぼすものなので、遅延することが許されない業務でもあります。

自社で行う際に注意すべき点

自社で給与計算を行う際に注意すべき点は、給与計算は多くの個人情報を扱うものなので、担当者を頻繁に変えるべきではないということです。しかし、特定の担当者を決めることが必要ですが、中小企業においては専任者を置くことは現実的ではなく、他の業務と兼務しているケースがほとんどではないでしょうか。とはいえ、あまりにもかけ離れた業務との兼務は適切ではないので、労務部門や人事部門が担当するのが一般的です。一方で、従業員数が増えるにつれて給与計算のボリュームは増加するので、担当者が一人だけだと給与計算を行う時期には業務量がオーバーフローしてしまうことも考えられます。このような点を十分に考慮して、自社で給与計算を行う体制を検討する必要があります。

次に年間のスケジュールを俯瞰しておくことです。業種的に特定の時期に繁忙期を迎える場合、その時期と給与計算の繁忙期(例えば年末調整が行われる12月)が重複する場合、ミスに繋がる恐れがあることから担当者の増員が可能か否かを精査しておくことが重要です。給与計算は複雑であることは間違いありませんが、繁忙期は予め予測ができることから、その時期が到来する前に検討しておく必要があります。

上記を勘案して、一部の期間であれば自社での対応が可能であっても年間を通して社内で行うにはハードルが高いとなった場合には外注するという選択肢が有用です。

外注した場合のメリットデメリット

外注した場合には当然メリットとデメリットが存在しますので、それぞれを確認しましょう。

メリット1.時間が創出される

給与計算のプロであっても給与計算は多くの時間を要します。これは必要なデータを収集し、内容を確認した上で給与計算を行います。その後計算結果を確認し、給与計算を確定することとなりますが、複数の工程があり、多くの時間を要します。外注することで通常発生するこれらの時間がなくなり、その分社内の他の重要な業務に時間を投入できるということです。

メリット2.法律改正が自動でアップデートされる

給与計算業務に必要な基礎情報は社内の就業規則だけでは不十分です。給与に関連する法律の改正があった場合にはその内容も加味して業務を行わなければなりません。一般的に法律の改正は待っているだけでは気付くことは難しく、情報を取りにいかなければなりません。また、改正内容を読み込み、自社に該当する部分に限って落とし込まなければなりません。当然、適用対象とならない部分まで落とし込むことは誤りであり、改正内容を画一的に当てはめるという発想は危険です。外注する場合、これらの法律改正も踏まえて給与計算を行うことから、給与計算の正確性や妥当性が担保されますし、法律改正情報を取得する時間の節約にもなり、その後のアップデートも任せられることからメリットと言えます。

メリット3.信用度が高い

給与計算を生業としている外注業者は社内で育成した給与計算担当者よりも様々な事例を扱っており、経験が豊富です。よって、イレギュラー対応なども法律的な見解を踏まえて対応をすることができ、労働者の納得感も得られやすい点が挙げられます。このような専門家を社内で育成することも不可能ではありませんが、育成する時間やその後の担当者変更等を考慮すると、早い段階から経験豊富な専門家に外注するというのは効率的にも信用度の観点からもメリットがあると言えます。

デメリット1.費用が発生する

給与計算に限ったことではありませんが、当然、外注に出すと費用が発生します。また、外注先との契約形態にもよりますが、一般的に外注する際の給与計算対象労働者数が増えるにつれ費用も上昇します。よって、労働生産性が高まり、社内の労働者数が増えていく際には外注費用も上昇すると言えます。

デメリット2.社内の機密情報が漏洩するリスクがある

外注する際には双方で個人情報に関する取り扱いを締結し、現実的に外注先が故意に情報を漏洩するとは考え難いでしょう。また、情報漏洩は外注先の過失により発生するだけでなく、社内から外注先に給与計算に必要な情報を送付する際に誤って誤送信することによる情報漏洩のリスクもあります。個人情報を送付する際にはパスワードをかけるなど慎重を期すのが社会常識ですが、漏洩リスクを将来にわたってゼロにすることはもはや不可能です。これは社内のみで行っていれば漏洩リスクはよりゼロに近づくのでしょうが、外注するとなると何も情報を送らないということではそもそも外注先が業務に着手できません。

最後に

給与計算は社内の中で重要な業務であり、かつ、比較的ミスが目立つ業務です。よって、これらの業務を担う担当者の育成が難しいという問題があります。特に中小企業であれば、労働者同士が顔を合わせる機会も多く、その中で、センシティブな情報(例えば離婚)も業務上、知らなければならず、双方の気が重くなるような話もしなければなりません。そのような点を考慮し、給与計算を外注するという会社も多くありますが、費用の問題も検討すべきであり、一朝一夕に解決できる問題ではありません。しかし、給与計算は止めることが許されない業務であることから、当初から、一定期間のみ外注に出すことを明言し、その間に社内の育成を進めて、将来的には内製化を目指すなどの選択肢もあります。結論としては必ずメリットとデメリットが存在することから、会社として何を重要とするのかを明確化しておくことが肝要です。

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