このシリーズでは、「経営とは何か?」「経営者の仕事ってなに?」といった、企業経営に関するコンテンツを経営者向けにお届けしていく予定です。
記念すべき第1回目の今回は、「そもそも経営って何をする仕事なの?」という、経営の基本的な考え方についてお届けしていきます。
1.ある日、あなたがこんな質問をされたら?
まず初めに、自分自身にこの問題を投げかけてみてください。
また、あなたがこんな質問をされることがあれば、あなたは何と言って答えるでしょうか?
「会社をまとめること?」
「会社の責任者として重要な決断をすること?」
「利益を出すこと?」
「従業員の給料を払うこと?」
数学のように正解が決まっている問いではないため、様々な答えが出ることでしょう。決してその答えは間違いではありません。
今回は、その問いに対する皆さんの答えの採点をするわけではなく、それぞれの答えは尊重した上で、経営者として押さえていただきたい経営の本質に関する基本的な3つの考え方をご紹介したいと思います。
なぜ考え方にスポットを当てるのか?
京セラの創設者である稲盛和夫さんは、人生の方程式として「人生・仕事の成果=考え方×能力×熱意」を提唱されています。この方程式の意味としては、「能力と熱意は0から100点までしかないが、考え方はマイナス100点からプラス100点まであり、いくら能力と熱意が100点満点だったとしても、考え方がマイナス(間違っている)であれば、成果はマイナスになってしまう」ということです。
熱意を持つことや能力を磨くといったことは、仕事をする上で非常に重要なことですが、まずは基本的な正しい考え方を身に付けなければ、いくら熱意や能力があったとしても仕事の成果は出ないのです。そういった理由で、今回は考え方について皆さんにご紹介できればと思います。
2.経営とは何か
2-1 企業の方向付け
経営者にとって、企業経営の上で1番大事な仕事は、「会社として何をやるか、やらないか」を考え、責任を持って決断することです。この方向づけを万が一誤ると、その先、その企業は間違った方向に進んで行くことになるでしょう。それほどこの仕事は基本的かつ、1番重要な仕事なのです。
では、「企業の方向づけ」とは具体的に何を指す言葉でしょうか?
企業の方向づけとは、いわば、「企業の戦略、計画を立てること」です。
具体的に言えば、その会社独自のビジョンや理念に基づいた上で、市場動向や競合他社といった「外部環境」の分析と、自社のヒトやカネといった「内部環境」の分析を行い、会社としてどこに狙いを定め、どこに進んでいくのかの方向、道筋を決めることです。
いくら社内に優秀な人材がいたとしてもこの方向が間違っていると上手くいきません。経営者の方たちはそれほどの覚悟と情熱を持って、まず初めにこの仕事を行わなければなりません。
さらにもっと重要なのは、決断力ではなく、経営者自身が「会社として何をやるか、やらないか」を決める上で正しい判断能力を持っているかどうかです。正しい判断を行うためには、その判断を行う経営者自体の考え方自身がきちんと確立されているかが非常に重要です。
それについては今後の記事で詳しく見ていくことにします。
2-2 資源の最適配分
資源の最適配分とは、「ヒト、モノ、カネなどを適切に配分する」ということです。言葉の意味としては簡単ですが、意外にできてない経営者も多く、実現が難しいです。
なぜ最適に配分することが難しいのでしょうか?数学が苦手だから?もちろんそんな事はありません。簡単な理由です。経営者に「私利私欲」が働くからです。
経営者という立場になると、様々な権限が増えます。経営者は知らず識らずのうちに、経営の中で「公私混同」をしてしまうのです。大企業でも中小企業でも、会社がうまくいかなくなる大きな原因の1つがこの「公私混同」です。例えば、プライベートの飲食代を会社の費用で落とすケースが挙げられます。
この話を聞いて、ビクッとしてしまった経営者の方もいらっしゃるのでは?
そこで、皆さんが公私混同をしていないかを見極める簡単な基準をご紹介します。
それは、「同じことを自分の部下がやっても許せるか」です。
例えば自分の部下がプライベートの飲食代を会社の費用にしていたら皆さんは許せますか?もし、それが許せないのであれば、いくら皆さんが権限のある経営者であったとしても、同じことをやってはいけません。「同じことを自分の部下がやっても許せるか」という基準を経営者自身がきちんと持ち、振る舞うことが重要です。
2-3 ヒトを動かす
最後は、「ヒトを動かす」という仕事です。会社にとって従業員の力は欠かせません。同じサービス展開でも会社によって業績に差がある場合は、経営者がヒトをいかに上手く動かして、働く人の意識を生み出しているかが大きな要因となっている場合もあります。
ヒトを動かすためには、社員のモチベーションを上げることが重要ですが、そこで重要な要素となるのは「いかに社員の働きがいを高められるか」です。
そんな時、経営者は「目的」と「目標」の違いをきちんと認識しておく必要があります。この違いについてきちんと認識している人は意外に少ないです。
目的と目標の違いをおさえた上で、企業の目的とは、
1.良い商品やサービスをお客様に提供すること
2.働いてくれる社員、仲間を幸せにすること
3.世の中に貢献すること
などが挙げられるかと思います。
よく「1億円の売上を出そう」と上司が言うケースがありますが、目標は、目的達成のための手段なので、「1億円の売上を出す」という目標を通じて、「お客様に喜んで頂き、世の中に貢献する」「従業員を幸せにする」という目的を果たすことが会社の役目です。ですが、多くの会社では目標が目的化してしまっています。「1億円の売上を出す」事に必死になり、企業の本来の目的である「お客様に喜んでいただく」「従業員を幸せにする」という目的が果たせないのでは経営としては本末転倒です。
経営者はその考え方を常に意識しながら経営を行うことで、働くヒトのモチベーションを上げ、会社が継続的に繁栄させることができるでしょう。
いかがだったでしょうか?
繰り返しになりますが、経営に正解はありません。ただ、経営に置いて基本的な考え方の原則自体は存在します。たまにこの記事をご覧になっていただき、自分の経営の見直しや振り返りに使っていただければと思います。
最後にこの記事内容を自分のものにしていただけたかテストです。
「3つの経営者の仕事とは何ですか?」
次回の記事では、会社の理念やミッションについて詳しく説明していきます。
経営講座第2回はこちらです。