健康保険の被扶養者認定基準について

労務お役立ち情報

令和5年9月に厚生労働省から発表された「年収の壁・支援強化パッケージ」の中で、一時的に収入が増加した場合の被扶養者認定の例外についての取扱いが盛り込まれています。今回は、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の内容を交えて、健康保険の被扶養者の認定基準について解説していきます。

被扶養者の認定基準

健康保険では、被保険者(本人)に扶養されている家族にも保険給付を行います。
扶養されている家族のことを「被扶養者」といい、被扶養者になるためには、下記の要件を満たす必要があります。

1. 主として被保険者(本人)の収入によって生活していること
2. 被扶養者となる人の年間収入が130万円(60歳以上または障害年金受給者は180万円)未満で、被保険者の収入の2分の1未満であること
3. 3親等以内の親族であること
4. 日本国内に住所を有すること(日本に住民票があること)

被扶養者の範囲

1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。

2. 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

収入の基準

被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。認定については、以下の基準により判断します。

【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。

【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。

事業主の証明による被扶養者認定

年収130万円以上になると、扶養から外れ、国民年金、国民健康保険の保険料支払いにより、手取り収入が減少してしまいます。これを回避する目的で就業調整が行われており、いわゆる130万の壁への対応策として打ち出されたのが、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」です。
「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」では、パート、アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一方的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みです。
保険者である協会けんぽや、健保組合では定期的に被扶養者の方が現在も要件を満たしているか被扶養者資格の再確認を行っています。この確認の際、一時的な収入変動であることを事業主が証明することで、扶養の認定や資格確認を迅速に行うというものです。

まとめ

人手不足への対応が急務となる中で、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」によりパート、アルバイトで働く短時間労働者が年収の壁を意識せず働ける環境になることで収入の増加も期待できます。年収の壁が原因で就業調整が発生する際の対応について、社会保険労務士にご相談されてみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定Q&A
   協会けんぽ「健康保険制度について

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