国税を滞納したらどうなる? 滞納処分の基礎知識

税務お役立ち情報

税金の種類は、国税、地方税合わせると数十種類と多岐にわたります。

納税は言わずと知れた国民の三大義務のひとつです。

しかし、税金のその種類の多さから、本来の納付しなければいけない税金の支払い義務を知らず、気が付いたら滞納していた、ということもありえます。

今回は国税と地方税の滞納についての基礎知識と国税を滞納した場合に、どんなことがおこるのかをご紹介させていただきます。

これから会社を興す方で税金に不安を抱えている方、すでに滞納して焦っている方はぜひご覧ください。

国税とは?地方税と何が違う?

では、まず国税と地方税の違いについてみていきましょう。

税金には国に納める国税と地方公共団体に納める地方税があります。

国税の種類は20種類ほどあります。

国税で一般的なのは、個人が支払う所得税、法人が支払う法人税、そして消費税、相続税、贈与税です。

ほかにも酒税、自動車重量税、たばこ税など、業種によって支払うべき税金が多数あります。

同じく、地方税も20種類ほどあります。

地方税で一般的なのは、その地域に住んでいる人や企業にかかる住民税、その地域で事業を行っている企業にかかる事業税です。

ほかにも事業所税、不動産取得税、固定資産税などは、事業を行っていたり、不動産や固定資産を購入したりする方に身近な税金ですが、これらも地方税に含まれます。

特別なことをしているわけではなくても、普段意識していないところで、さまざまな税金を私たちは支払っています。

国税、地方税の違いは、税金の種類と、その種類に応じて支払う先が異なるというだけの違いです。

国税、地方税いずれも税金を納期限から過ぎて納付した場合、延滞税(地方税は延滞金と呼びます)がかかることには変わりはありません。

例えば、国税である法人税の納付を忘れている場合、決算で同じく申告書を作成しているはずの地方税である事業税や住民税の納付も忘れている可能性が高いです。

頭の片隅に、地方税についても国税同様の納税の義務があることは覚えておきましょう。

国税を延滞すると延滞税がかかる

国税は、主に以下の4つの場合に延滞税がかかります。

ひとつめは、提出期限内に確定申告書は提出したけれど、納期限まで納付しなかった場合です。

また、提出期限を過ぎて確定申告書を提出する場合は、期限後申告と呼ばれる確定申告書を提出することになります。この場合も納付が遅れた部分について延滞税がかかる可能性があります。

次に、提出した申告書に誤りがあったことに気が付いて、企業や個人事業者が修正申告を提出した場合に、追加で税を納付しなければいけないときです。

本来の納税額より少なかったわけですから、追加で納付する部分については延滞税が生じる可能性があります。

最後に、国が提出した申告書に誤りがあることがわかった場合に、更生(または決定)の処分をした場合に、追加で税を納付しなければいけないときです。

意図的に間違えたわけでなくとも、その誤りにより生じる納税の遅れについては延滞税を生じる可能性があります。

いずれの場合も、納期限を過ぎての納付となることを根拠に、延滞税を支払う可能性があります。

国税の納期限

国税の納期限は、税金の種類によって異なります。

法人税と消費税の納期限は、その事業年度終了の日の翌日から2か月以内。つまり3月決算の会社であれば、5月31日が納期限になります。

所得税は、計算期間である1月1日から12月31日の翌年3月15日が納期限となります。

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に納付をしなければいけません。

地方税の納期限

地方税の代表的な税金と言えば、住民税と固定資産税です。これらの税金の納期限をまずは押さえていきましょう。

住民税の納期限は、普通徴収の場合は通常
・第1期6月末
・第2期8月末
・第3期10月末
・第4期1月末です。

※特別徴収の場合は、支払った月の翌月10日

固定資産税の納期限は、特別徴収の場合は通常
・第1期6月末
・第2期9月末
・第3期12月末
・第4期2月末です。

法人事業税は、事業年度が終了した日から2か月以内、個人事業税は8月末と11月末に納付を行います。

このように同じ地方税とはいえ、必ず同じ月に納付するわけではありません。

国税、地方税いずれについても税金の種類によって支払う日は別々です。経理を行う人間は大体のスケジュールを頭にいれておく必要があります。

国税の延滞税の税率は高い

国税の納期限を過ぎた場合、高額な延滞税を支払う可能性があります。

国税の延滞税の税率は、納期限の翌日から2月を経過する日までは原則として年7.3%、納期限の翌日から2月を経過した日以後は原則として年14.6%です。

地方税の税率についても同様の税率が適用されます。

令和3年現在、措置法の適用により2か月以内であれば年7.3%、年14.6%より低い税率となっています。

具体的には

納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」の いずれか低い割合。

納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合。

(引用:国税庁HP)

と定められています。

この延滞税特例基準割合は毎年度僅かに異なるため、詳しくは国税庁HPや地方自治体のHPで数値を毎年度確認しましょう。

このように、現在延滞税の割合は低い傾向にありますが、そうはいっても消費者金融の金利相場が3%から18%です。

延滞税を支払うということは、消費者金融でお金を借りるくらいの高利率となることを覚悟しましょう。

国税を延滞しても延滞税がかからなかった?

「納期限を過ぎたけど延滞税を支払っていない」そんな話を聞いたことがありませんか?

この人たちは、延滞税の支払いを忘れてしまったわけではありません。

延滞税の計算の結果、延滞税の金額が1,000円未満の場合は納付する必要がないのです。

そのため、納付する金額によっては、数日~1月程度であれば延滞税の納付をしないですむケースがあります。

国税を滞納した場合の流れ

税金を滞納してしまった際の流れについてご紹介します。

税金が納期限までに納付されなかった場合、納期限から1月前後で「督促状」が国税や地方自治体から送られてきます。

電話がかかってくるケースもあるため、督促状が先に届いてすぐに納付を行っている場合はその旨を伝えましょう。未納の場合はすぐに支払うようにしましょう。

この段階で支払いが行われなかった場合、「滞納処分」が行われます。

「滞納処分」では、まず身辺調査が行われます。

国税庁の「徴収職員」は(地方税の場合は「徴税吏員」)滞納者の勤め先、住民票、戸籍の調査、家族構成を調べることが法律により認められています。

そして、身辺調査とは別に財産調査も行われます。

こちらは銀行口座、生命保険、不動産の有無など、換金性のある財産を調査されます。

差し押さえできる財産がある場合は、そのまま押収されます。

しかし、事業の継続が危ぶまれるような器具備品、生活に必要な3か月分の食料など、すべてが差し押さえられるわけではありません。

これは、国税徴収法第75条により、生活や営業に欠くことができない財産は差し押さえが禁止されているためです。

差し押さえられた不動産(土地、建物)、動産(宝石、車、絵)は公売により売却され、銀行預金や給与、生命保険などの債券は、「取立て」により換金されます。

支払えないやむを得ない事情があったとしても、放置しているとこういった事態が想定されます。

税金の滞納は放置せず、必ず税務署や地方自治体に相談に行きましょう。

国税を延滞してしまった際に行うべきこと

では、納期限をすぎてしまった際、まず何をすべきでしょうか?

まずは、所轄の税務署や市区町村に電話しましょう。

申告書の整理番号を伝えれば、税務署や市区町村の職員が会社や屋号を調べて、あなたの税金の情報について教えてくれます。

延滞税が発生していない場合は、提出した確定申告書に記載された税額をなるべく早く納付することになります。

延滞税が発生している場合は、その延滞税額を含めて、本税と納付することになります。

もし支払う金額に都合がつかない場合、自然災害などでやむを得ない事情がある場合は減免の対象になる可能性があります。

また、延納ができるかどうか、など可能な限り財産の差し押さえが行われないように相談してみましょう。

まとめ

国民の義務である納税ですが、税金の種類も、税金の納期限も画一的ではないため滞納のリスクは常にあります。

うっかり忘れてしまって、とんでもない金額の延滞税を支払うことになってしまったら困りますよね。

もちろん自分で把握して、きっちり払えればいいですが、税金の支払いを気にして本業を疎かにしてはなんの意味もありません。

延滞税の計算についても、現在措置法の適用を受けているため、毎年計算に使う税額が異なります。

税金の相談は、プロに任せるのが安全です。

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