中小企業に連結決算は必要か?連結決算のメリット・デメリットをわかりやすく解説!

経理お役立ち情報

子会社や関連会社をもつ大企業は連結決算を行っていますが、複数の子会社をもつ中小企業の場合は連結決算を行う必要があるのでしょうか。子会社の設立等により会社の規模が拡大してくると、連結決算を行うべきか悩むこともあるでしょう。この記事では、連結決算の必要性や、中小企業において連結決算を行う場合のメリット・デメリットについて解説しています。中小企業の連結決算について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

連結決算とは

そもそも連結決算とはどのようなものなのでしょうか。連結決算の概要と、連結決算が必要な理由について説明します。

そもそも連結決算とは?

連結決算とは、子会社や関連会社をもつ企業が行う決算方法のことです。親会社と、連結決算の対象となる子会社や関連会社すべての状況をまとめて、ひとつのグループ企業として連結財務諸表を作成します。

1社しかない場合には連結決算は発生せず、M&Aや子会社の新規設立によって関連会社が発生してはじめて、グループ全体の財務状況を把握するために連結決算を行うこととなります。連結決算の対象となる子会社や関連会社は支配力基準や影響力基準等に基づき、グループ全体に与える影響の大きさにより決定されます。すべての子会社や関連会社の決算を含める必要はなく、影響力の少ない子会社や関連会社は連結決算の対象外となります。

なぜ連結決算が必要なのか?

連結決算を行う目的は、企業グループ全体としての財務数値を把握することです。連結決算を行うことで、企業グループ全体の経営状況が明確になり、投資家の意思決定に役立つ情報を提供することができます。

連結決算は、2000年3月期決算から金融商品取引法の改正等により導入されました。それ以前は、親会社単体での決算が一般的で、投資家は親会社だけの決算情報をもとに意思決定をしていました。しかし、単体決算のみでは、親会社が経営成績を良く見せるために、子会社を使って恣意的に利益を計上したり、土地や有価証券等を意図的に子会社へ譲渡したりといった不正に利益を操作するケースが散見されたのです。

このような不正をなくすために、現在は上場企業など、有価証券報告書を提出する会社には連結決算の開示が求められています。グループ会社同士の取引では、お互いに利益を上乗せして売上を計上しても、実態としてはグループ内で循環させているだけなので、本来は利益など発生していないことになります。連結決算を行うことにより、こうした見せかけの利益を含めずにグループ全体の経営状態を明確に把握できるのです。

中小企業に連結決算を行う義務はあるのか?

連結決算は中小企業であっても行う必要があるのでしょうか。会社法444条第3項の規定によると、連結決算を義務付けられているのは以下の場合です。
・有価証券報告書を提出している企業
・大会社
有価証券報告書の提出が義務付けられているのは、上場企業や公募増資1億円以上の会社等と金融商品取引法に定められています。また、大会社とは資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社のことを指します。したがって、中小企業には連結決算を行う義務はありません。

中小企業には連結決算を行う義務はないものの、任意で連結決算をすることは可能です。経営が多角化している最近では、中小企業であっても、子会社や関連会社が本業とは別の事業を行う企業も増えてきています。そうした企業は、全体の経営を管理するために、独自の判断で連結決算を行う場合もあります。では、中小企業が任意で連結決算を行う場合にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下に解説していきます。

中小企業において連結決算を行うメリット

中小企業において任意で連結決算を行う場合、次のようなメリットがあります。

グループ全体の経営状況が明確になる

連結決算を行うことで、企業グループ全体の経営状況を把握できるということは大きなメリットと言えます。経営状況が明確になることで、投資家の意思決定に役立つだけでなく、企業にとってもグループ全体の経営方針を決定するうえでプラスに働くことは間違いないでしょう。また、グループ企業間での不正を防止するという効果も期待できます。

銀行からの融資を受けやすくなる

中小企業における資金の借入先は銀行からの融資が中心ですが、連結決算を行うと銀行からの融資が受けやすくなるというメリットもあります。銀行での融資審査の際には、子会社やグループ会社間の取引の実態を調査しますが、連結決算を行っているとグループ全体の実態がスムーズに把握でき、銀行がその企業の動向を判断
しやすくなるため、融資審査で有利に働く可能性があります。

中小企業において連結決算を行うデメリット

中小企業においても、任意で行うことでメリットがある連結決算ですが、次のようなデメリットも懸念されます。

連結財務諸表の作成に手間がかかる

連結決算を行うための連結財務諸表の作成に手間と時間がかかることがデメリットとして挙げられます。連結財務諸表の作成には、連結作業を行う親会社が子会社や関連会社の単体決算書類を回収し、合算と内部取引の相殺をするという手続きが必要です。単純な作業のように感じるかもしれませんが、連結の範囲設定、子会社や関連会社の経理担当者との連携など、実務レベルではかなり煩雑で手間のかかる作業となります。

例えば、子会社や関連会社の数が多くなるほど、グループ間での取引も増えます。その分グループ内に関わる担当者も増えることになり、一つひとつの取引内容の確認にも時間がかかります。また、親会社と子会社で使用している勘定科目が異なる場合には、それらを統一する作業も発生し、さらに時間と手間がかかってきます。

任意で行う連結決算でも監査を受ける必要がある

中小企業においては、企業の判断で自由に連結決算を行うことができます。しかし任意で行う連結決算であっても、連結決算書類は会計監査役及び会計監査人の監査を受けることが会社法444条4項により義務付けられています。つまり、やるからには絶対に間違いがあってはならないのです。

連結決算書類を簡単に作成できるシステムも開発されてはいますが、中小企業ではこうした管理部門にまで投資できる余裕がない場合がほとんどです。専門的な知識と経験が求められる連結決算業務は属人化しやすく、特定の社員が退職してしまうと連結決算業務をできる社員がいないといった問題も散見されます。中小企業では、総務や経理といった管理部門を一人の社員が兼務している場合も多く、人手不足も連結決算導入の妨げとなっているのでしょう。

まとめ

中小企業における連結決算の必要性とそのメリット・デメリットについて解説しました。

中小企業においては、連結決算を行う義務はありません。しかし連結決算を行うことによって、企業グループ全体の財務状況が明確になり、経営判断や銀行等外部からの信頼獲得に役立つというメリットがあります。ところが、連結決算の煩雑さや人手不足の問題から、連結決算を行いたくてもなかなか導入できないといった中小企業も多いのが現状です。

自社で連結決算を行うのが難しい場合は、プロに依頼するという方法もあります。キャシュモでは、中小企業向けに経理のアウトソーシングを提供しています。プロである私たちに煩雑なバックオフィス業務を任せていただければ、限られた人材と時間を事業の成長のためだけに使うことができます。連結決算の実施や、その他経理に関するお悩みがありましたら、ぜひ弊社にご相談ください。

経理お役立ち情報
この記事が気に入ったら
いいねをして、cashmoをチェックしよう!
FOLIO

タイトルとURLをコピーしました