2023年度税制改正により、NISA制度が抜本的に見直され、2024年1月以降は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」からなる新NISA制度が始まります。
今回は、現行のNISA制度と新NISA制度の違いを押さえながら、新NISA制度の概要についてご説明します。
NISAとは?
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。
NISAとは、Nippon Individual Savings Accountの略称で、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。
現行のNISA制度
現行のNISA制度は、成年者が利用できる「一般NISA」・「つみたてNISA」と、未成年者が利用できる「ジュニアNISA」の3種類があります。
・一般NISA・・・・株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能
・つみたてNISA・・一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有可能
・ジュニアNISA・・株式・投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能
新NISA制度のポイント
現行のNISA制度への投資は2023年12月末で終了し、2024年1月以降は新NISA制度が始まります。
①つみたて投資枠と成長投資枠の併用可
現行のNISA制度には3種類の制度があり、つみたてNISAと一般NISAは年ごとの選択制となっていましたが、新NISA制度では制度を一本化し、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能となりました。
「つみたて投資枠」は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(現行のつみたてNISA対象商品と同様)を投資対象としており、「成長投資枠」は、投資信託に加えて上場企業への投資も可能とされています。
②年間投資枠の拡大
現行のNISA制度の年間投資枠は、つみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円であったのに対し、新NISA制度では、年間投資枠が大幅に拡大され、「つみたて投資枠」は120万円、「成長投資枠」は240万円となります。
さらに、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は併用可能となるため、年間で最大360万円まで投資できることとなります。
③非課税保有期間の無期限化
現行のつみたてNISAは非課税保有期間が20年間、一般NISAは非課税保有期間が5年とされていましたが、新NISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の非課税保有期間はいずれも無期限とされ、長期間の投資を行うことが可能になります。
④口座開設期間の恒久化
現行のNISA制度は、時限措置であり、口座開設期間に制限がありましたが、新NISA制度では、口座開設期間の制限がなくなり、NISA制度が恒久化されました。
⑤非課税保有限度額の引上げ
現行のNISA制度での非課税保有限度額は、つみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円とされていましたが、新NISA制度では、簿価残高方式で1,800万円まで(うち「成長投資枠」は1,200万円まで)の非課税保有が可能となりました。
また、簿価残高方式とすることにより、取り崩した分の非課税保有限度額の枠をまた利用できるという、枠の再利用が可能な仕組みとなっています。
⑥対象年齢の変更
未成年者(口座を開設する年の1月1日時点で17歳以下)を対象とする現行のジュニアNISAは2023年末で終了し、新NISAでは、成年者のみが制度の対象となります。
(出典:金融庁HP「新しいNISA」)
新NISA制度移行後の現行NISA制度との関係
現行NISA制度の新規口座開設・投資は、2023年12月末で終了となります。
2023年12月末時点で現行のNISA口座を持っている場合には、その口座を開設している金融機関等に新NISA口座が自動的に開設されるため、原則として、口座開設手続きは不要となります。
また、現行のNISA制度で保有している金融商品については、つみたてNISAは購入時から20年間、一般NISAは購入時から5年間、新NISA制度とは別枠でそのまま非課税で保有することができるため、新NISA制度への移行に伴い売却する必要はありません。
ただし、非課税期間終了後に新NISA制度に移管(ロールオーバー)することができないため、現行のNISA口座で運用している資産を新NISAに移したい場合は、一度売却して現金化してから新NISAの口座に再度投資を行う必要があります。
おわりに
以上のとおり、2024年から始まる新NISA制度は、投資枠も拡大し、より使いやすい制度になることが見込まれます。
iDeCoや企業型DCなどの私的年金制度と同様、非課税という税制上のメリットを享受しつつ、今後の自身の資産形成の一助となる制度の一つとして、新NISA制度の活用を検討するとよいでしょう。