消滅時効期間延長による影響

労務お役立ち情報

2020年4月1日、民法の改正に合わせ労働基準法が改正され、賃金請求権の消滅時効期間が従来の2年から5年(当分の間は3年)に延長されました。対象となる賃金は、2020年4月1日以降の支払い賃金であるため、例えば、2023年1月末時点では、過去2年10か月分の賃金の請求権になり、2023年4月以降は、過去3年分の賃金請求権が発生することになります。

今回は、消滅時効が延長されたことによるリスクや注意点などを解説していきます。

賃金請求権の消滅時効期間が延長されたことによるリスク

賃金請求権の消滅時効期間が延長されたことで、従来の2年分から3年分(1.5倍)になり、加えて付加金(裁判所がその金額と同一額の支払を命ずることができる制度)についても3年分の請求ができるため、会社にとってはリスクが拡大します。この影響で、今まで未払い残業代の請求をしていなかった労働者が新たに未払い残業代の請求に動き出すことも予想されます。

例えば、本来は割増賃金の算定基礎に入れるべき手当を含めずに残業代を算出していた事での未払い残業代や、会社から管理監督者として位置づけられていたことで残業代が支払われていなかった労働者が退職後に管理監督者として該当していたか否かの訴えを起こし、未払い残業代として過去3年分を請求するといった事も考えられます。

 参照:厚生労働省リーフレット

その他、消滅時効期間が延長された主な事項

他に消滅時効期間延長の対象となるものは、以下のとおりです。

・金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)
・賃金の支払(労基法24条)
・非常時払(労基法25条)
・休業手当(労基法26条)
・出来高払制の保障給(労基法27条)
・時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)
・年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)
・未成年者の賃金(労基法59条)、
・賃金台帳などの記録の保存期間(労基法109条)

なお、年次有給休暇の消滅時効については、5年とすると年次有給休暇の取得率を下げてしまうなどの懸念から、従来の2年のままとなっています。また、退職金の請求権も従来の5年のままとなります。

まとめ

会社はこれらの請求リスクを軽減するために、改めて労働時間の管理方法について点検する必要があります。特に定額残業代を導入している会社では、労働時間や賃金に関しての問題点を見落としがちになります。

現在の経過措置の3年から原則どおり5年の消滅時効期間に移行されると会社にとって更なるリスクになります。今のうちに、お近くの専門家に依頼し見直してみるのも良いかもしれません。