iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2016年の法改正により加入者の範囲が拡大され、「誰でも利用できる老後資産形成制度」として広く知られるようになりました。税制上のメリットも大きいため、約238万人の加入者が利用しています(2022年3月時点)。
そして、2022年からは、iDeCoを利用できる人や加入期間がさらに拡充されました。
今回は、この2022年の制度改正についてご説明します。
iDeCoとは
iDeCo(イデコ)は、自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する私的年金制度です。掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
iDeCoのメリット
iDeCoの最大の特徴は、以下の3つの税制優遇メリットがあることです。
① 掛金が全額所得控除されます
確定拠出年金の掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得額から差し引かれることで所得税・住民税が軽減されます。
② 確定拠出年金制度内での運用益が非課税で再投資されます
金融商品の運用益は課税(源泉分離課税20.315%)対象となりますが、確定拠出年金内の運用商品の運用益については、非課税で再投資されます。
③ 受給時に所得控除を受けられます
受給年齢に到達して確定拠出年金を一時金で受給する場合は「退職所得控除」、年金で受給する場合は「公的年金等控除」の対象となります。
2022年改正の概要
<2022年4月1日から>
iDeCoの老齢給付金の受給開始時期の選択肢が拡がりました
公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、iDeCoの老齢給付金の受給開始時期の上限も70歳から75歳に引き上げられました。
これによって、iDeCoの老齢給付金は、60歳(加入者資格喪失後)から75歳に達するまでの間で、自分で受給開始時期を選択することができるようになりました。
<2022年5月1日から>
iDeCoの加入可能年齢が拡大されました
これまでiDeCoでは、60歳未満の国民年金被保険者が加入可能でしたが、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、国民年金被保険者であれば60歳以上でも加入可能となりました。
60歳以上の方は、国民年金の第2号被保険者または国民年金の任意加入被保険者であれば、iDeCoに加入可能となりました。
また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになりました。
脱退一時金の受給要件が緩和されました
これまで、iDeCoの中途引き出し(=脱退一時金の受給)が例外的に認められていたのは、国民年金の保険料免除者である方に限られていました。
また、iDeCo加入者が海外に居住して国民年金被保険者(第1・2・3号)に該当しなくなった場合、iDeCoに加入することもできず、保険料免除者に該当することはなく中途引き出しもできませんでした。
2022年5月からは、国民年金被保険者となることができない方で、通算の掛金拠出期間が短いことや、資産額が少額であることなどの一定の要件を満たす場合には、iDeCoの脱退一時金を受給できるようになりました。
次の①~⑦のすべての要件に該当する必要があります。
① 60歳未満であること
② 企業型DCの加入者でないこと
③ iDeCoに加入できない者でないこと
④ 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
⑤ 障害給付金の受給権者でないこと
⑥ 企業型DCの加入者およびiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること または 個人別管理資産の額が25万円以下であること
⑦ 最後に企業型DCまたはiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること
制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)の改善
終了した確定給付企業年金(DB)からiDeCoへの年金資産への移換が可能となりました。
<2022年10月1日から>
企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和
企業型年金規約の定めによりiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者の方もiDeCoに加入できるようになります。
ただし、各月の企業型DCの事業主掛金額と合算して月額5.5万円を超えることはできません。また、掛金(企業型の事業主掛金・iDeCo)が各月拠出であること、企業型DCのマッチング拠出を利用していないこと、が必要となります。
以上のとおり、iDeCoは2022年の改正により拡充されましたが、政府は加入対象年齢のさらなる引き上げも検討しています。加入期間が延びることにより、税制上のメリットもさらに大きくなります。
税制上のメリットを受けながら、より豊かな老後生活を送るための資産形成方法として、もうひとつの年金「iDeCo」への加入を検討してみてはいかがでしょうか。