令和4年度雇用保険法等の改正による雇用保険料率の引き上げについて

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概要

2022年2月1日、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました。今回の「雇用保険法等の一部を改正する法律案」の改正の概要は以下の4点です。

①失業等給付に係る暫定措置の継続等
②求人メディア等のマッチング機能の質の向上
③地域のニーズに対応した職業訓練の推進等
④雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等

今回は上記4点のうち、会社と従業員に最も影響のある④の中の「雇用保険料率の改定」について触れていきます。

改正の背景

保険料率が引き上げになる背景には、新型コロナウイルス感染拡大による雇用保険財政の悪化にあります。

緊急事態措置など、国の感染症対策として実施された施策が雇用に与える影響は非常に大きく、休業者数が一時的に急増し、2020年9月・10月には完全失業率も3%に達しました。


参照:総務省統計局「労働力調査 過去の結果の概要

これに対する措置として、過去に例のない大幅な雇用調整助成金の拡充や、新型コロナウイルス感染症対策支援金・給付金の創設等により、雇用維持対策を講じました。更に、新型コロナウイルス感染症の影響により離職した方については、基本手当の給付日数の延長に関する特例措置を講じてきました。

上記の措置は、同様に新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けた諸外国に比して、失業率を緩やかなものにとどめるなど、大きな効果を発揮しました。しかしその結果、雇用保険財政は支出が保険料収入を大幅に上回り、雇用保険財政は極めて厳しい状況に至りました。

例を挙げると、雇用調整助成金の主な財源である雇用安定資金(企業が負担する雇用保険の保険料を積み立てた)の残高が、下記グラフのように大幅に減少しています。


参照:厚生労働省「雇用安定資金残高と失業等給付に係る積立金の推移

このような雇用保険の財政難に対し、令和2年度と令和3年度については、以下のような対応をしました。

①雇用保険臨時特例法により失業給付等に対する一般会計からの任意繰入
②雇用調整助成金等に要する費用の一般会計からの繰入
③雇用安定事業に要する経費について、失業等給付の積立金からの借り入れ等を可能にする特例措置
④一般会計から労働保険特別会計雇用勘定に対して2.16兆円の繰り入れを実施(令和3年度)

このような対応により、令和3年度末の積立金残高は1.3兆円となる見込みとなっています。しかし令和4年度においても多額の雇用調整助成金の支出が想定されるなど、雇用保険財政は引き続き厳しい状況にあります。

そこで、「雇用調整助成金等の支給や雇用保険財政の安定のため多額の国庫負担を行っていることも踏まえ、令和4年度以降の雇用保険制度の安定的な財政運営の在り方を検討する」としたのが、今回の改正の背景です。

雇用保険料率の改定点

雇用保険料率の経理区分は、以下の3つに分かれており、それぞれに料率が設定されています。

今回、上記の内「失業給付に充てる費用」と、「雇用保険二事業に充てる費用」の2つの雇用保険料率が、令和4年4月1日と、令和4年10月1日の2段階に分けて改定されます。

令和4年4月1日の改定では、「雇用保険二事業に充てる費用」が0.3%から0.35%に改定され、令和4年10月1日からは「失業等給付に充てる費用」が、0.2%から0.6%に改定されます。

「失業等給付に充てる費用」については、平成28年の雇用保険法改定の際に原則0.80%と設定されました。

その後平成29年から令和3年の間、原則の0.80%から0.20%に引き下げられてきました(雇用保険財政が安定していたため)が、前述の通り新型コロナウイルス感染症の影響で雇用保険財政が厳しい状況にあるため、0.60%まで引き上げられることとなりました。

ただし、労使の負担も踏まえた激変緩和措置として、令和4年4月からではなく令和4年10月からの改定となりました。「失業等給付に充てる費用」については労使折半なので、労働者の給与から天引きされる雇用保険料もその分上昇することとなります。

「雇用保険二事業に充てる費用」については、資金の枯渇により自動的に引き上げとなりました。

まとめ

今回の雇用保険料率改定により、企業・従業員共に負担が増える結果となりました。

ただ、今回の雇用保険法等の改正により変わった点は、雇用保険料率だけではありません。例えば、失業手当の受給資格を取得したのちに、求職活動を行わず起業する場合は、原則1年間である失業保険の受給期間を最大4年まで延長する措置が挙げられます。今回の改正点については、厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要」で確認できますのでぜひご覧ください。

参考文献:厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会「雇用保険部会報告

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