オフィス移転は原状回復工事や内装工事、物件探しなど費用や手間がかかる作業です。移転費用やリソースに余裕のない場合は、居抜きオフィスがおすすめです。
居抜きオフィスはオフィス移転にかかるコストを抑えられ、入居だけでなく退去時にもメリットがあります。本記事では、居抜きオフィスのメリット・デメリットに加え、探す際の注意点などについて解説します。
居抜きオフィスのメリット・デメリット
居抜きオフィスのメリット・デメリットについてご紹介します。
「居抜きオフィス」とは?
「居抜きオフィス」とは、前の借り主(テナント)が原状回復工事をせず、内装からオフィス家具・什器といった設備もそのまま残して退去したオフィスのことです。
一般的なオフィスは、原状回復工事をした状態で引き渡されるため、入居時に内装工事を実施してレイアウトなどを整える必要があります。一方で、「居抜きオフィス」は全てが揃った状態なので、そのまますぐに入居できるのです。
居抜きオフィスのメリット
居抜きオフィスのメリットについて見ていきましょう。
オフィス移転費用の削減効果
居抜きオフィスの最も大きなメリットのひとつに、オフィス移転費用の削減効果が挙げられます。オフィス移転では、新オフィス入居時に内装工事を実施するのが一般的ですが、居抜きオフィスには不要なため内装工事費用を削減できます。
そして、居抜きオフィスにはオフィス家具や什器なども揃っている状態のため、新しく購入する必要がなくコストを大幅に節約できるのです。
オフィス移転にかかる期間を短縮できる
オフィス移転にかかる期間は、一般的に約6カ月です。大規模なものでは、1年程度の長期になる場合もあります。この期間には新オフィスの内装工事にかかるスケジュールも含まれており、レイアウトや内装工事業者の選定などに時間が費やされます。
しかし、居抜きオフィスなら内装工事の手間がなくなるため、レイアウトや内装工事業者の選定も不要となり、オフィス移転にかかる期間の大幅な短縮が可能です。
入居・退去の両方にコスト削減効果がある
居抜きオフィスは、入居時だけでなく、退去時にもコスト削減効果があります。一般的にオフィスの退去時には、原状回復工事が必要です。居抜きオフィスなら原状回復工事をせずそのまま退去できるため、工事費用を節約でき、業者選定に必要なリソースも割かずに済みます。
退去と入居の両方で居抜きオフィスを利用すれば、引っ越すだけのシンプルなものとなり、オフィス移転にかかるコストを最大限に削減できるのです。
居抜きオフィスのデメリット
居抜きオフィスのデメリットについても見ていきましょう。
後から内装工事が必要になるとむしろコスト増に
居抜きオフィスはその特性上、前の借り主が利用していたレイアウトを引き継ぐため、必ずしも自社のニーズにフィットしない可能性があります。
居抜きオフィスではない新オフィスへの入居時に行う内装工事には、レイアウトのミスマッチを避け、自社のニーズに合う形にカスタマイズできるメリットがあります。一方で居抜きオフィスの場合は、すでに出来上がっているレイアウトから自社にフィットしそうなものを選ぶため、細かい部分で利用しにくい箇所が出てくることもあります。
レイアウトのミスマッチは業務効率の向上を妨げ、追加で内装工事を行うとむしろコスト増になる点がデメリットです。
オフィス家具や什器の買い替え費用が発生する場合もある
居抜きオフィスに残された、前の借り主のオフィス家具や什器などの設備は中古になります。自社のニーズに合っていないオフィス家具や什器などの設備だった場合は、買い替えが必要になるケースもあり、発生する購入費用はデメリットとなるでしょう。
原状回復工事義務を引き継ぐことになる
一般的なオフィスは、前の借り主が原状回復工事を果たした状態で新しいテナント募集を行います。しかし、居抜きオフィスは、前の借り主が原状回復工事をしないまま退去したオフィスです。
そのため、居抜きオフィスの場合は、レイアウトや設備と共に新しいテナントが原状回復工事義務も引き継ぐことになります。入居時の原状回復工事は不要ですが、退去時には前の借り主が行うはずだった原状回復工事を行わなければならなくなる場合もあります。
自社で実施した内装工事の原状回復工事費用よりも、居抜きオフィス(前の借り主が実施した内装工事)から退去する際の原状回復工事費用の方が高くなると、オフィス移転にかかるコストが増えるデメリットがあります。
居抜きオフィスを選ぶ際の注意点
続いて、居抜きオフィスを選ぶ際の注意点についてご紹介します。
自社が求めるレイアウトにフィットしているか
居抜きオフィスを選ぶ際にまず注目したいのは、自社が求めるニーズに居抜きオフィスのレイアウトがフィットしているかという点です。居抜きオフィスは内装工事でレイアウトがカスタマイズできず、すでに完成されたレイアウトからしか選択できません。
ミスマッチを避けるには、居抜きオフィス選定の際に、事前に求めるレイアウトをゾーン分け(ゾーニング)しておくのがおすすめです。デスクの位置や距離間は入居後に微調整できますが、レイアウトそのものは内装工事なしには変更できないからです。ゾーン間の関係性や機能が自社のニーズに合わなければ、ミスマッチな居抜きオフィスとなってしまいます。
オフィス家具・什器など設備の状態を確認する
居抜きオフィスに残された前の借り主のオフィス家具・什器などの設備は中古なので、場合によっては使用感が激しく状態の悪いケースも出てきます。そのため、居抜きオフィスを選ぶ際は、買い替えの必要がないように、オフィス家具・什器など設備の状態を入念にチェックしてください。
また、デザインとコスト削減を両立させるならオフィス家具・什器のサブスクリプションサービスがおすすめです。定額制のレンタルサービスのため、少ない費用でデザイン性や機能性に溢れたオフィス家具・什器を居抜きオフィスに加えられます。レイアウトはいいものの、オフィス家具・什器の状態が悪い居抜きオフィスの解決策になるでしょう。
居抜きオフィスは物件数が少ないため選択肢が限られる
居抜きオフィスは、テレワークや在宅勤務の増加によるオフィス環境の変化にともない、近年需要が増してきています。
しかし、一般的には内装工事や原状回復工事を行うオフィス移転が主流なため、まだまだ居抜きオフィスは物件数が少ない状態です、そのため、居抜きオフィスは選択肢が限られ、必ずしも都合の良いタイミングで自社のニーズにフィットした物件を見つけられない可能性があります。
居抜きオフィスに向いている企業や探し方は?
最後は、居抜きオフィスに向いている企業や探し方についてご紹介します。
居抜きオフィスに向いている企業
現状では、居抜きオフィスには100坪以下の物件が多い傾向です。そのため、居抜きオフィスは、従業員数が10~20名以下の小規模な企業に向いています。居抜きオフィスは入居や移転にかかる初期費用を節約できることから、特にスタートアップ企業に最適です。
事業拡大にともない、短期間でのオフィス移転が多い場合にも、居抜きオフィスの方がコストや手間が少なく、オフィス移転にかかる期間も短縮できます。
一方で、50~100名以上の企業には居抜きオフィスはあまり向いていません。多人数の企業はより合理的な管理が必要となるため、レイアウトのフィットする物件が見つけにくいからです。
居抜きオフィスの探し方
居抜きオフィスを探す場合は、不動産全般を扱う仲介業者ではなく、居抜きオフィスを専門に扱っている業者がおすすめです。
居抜きオフィス需要の増加にともない、居抜きオフィスを専門にする不動産会社も増えています。取り扱う物件数が多いだけでなく、オフィス移転の費用を抑えたいなどの顧客の要望にも柔軟に対応してくれることでしょう。
「セットアップオフィス」と居抜きオフィスの違い
なかなか自社に合うレイアウトの居抜きオフィスが見つからない場合に備え、「セットアップオフィス」も検討されるのがおすすめです。
「セットアップオフィス」とは、居抜きオフィスと同様に内装工事がされた状態で、オフィス家具や什器などの設備も整ったオフィスです。居抜きオフィスと異なり、セットアップオフィスはビル管理会社やオーナーが内装工事を実施し、設備も整えて貸し出しています。
内装工事やオフィス家具・什器の購入にかかる費用を削減できる点は共通しているため、居抜きオフィスに加えてセットアップオフィスも検討されると物件の選択肢を増やせます。
まとめ
居抜きオフィスのメリット・デメリットから、選ぶ際の注意点などについて解説しました。居抜きオフィスはオフィス移転にかかるコストを大幅に削減でき、期間も短縮できますが、慎重な判断が不可欠です。
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