中小企業経営者が知っておくべき5Gの基礎知識

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世の中で5Gという言葉が使われるようになってからしばらくたちますが、5Gの恩恵を享受している方は多くはありません。それは対応5Gエリアが狭いことや、対応デバイスを所有していないという根本的な問題があります。そのため、2022年現在は5G過渡期であり、まだまだ4Gを使用している方も多い状況です。

そもそも5Gは第5世代の通信システムであり、1979年に1G、1993年に2G、2001年に3G、2015年に4Gという変遷を辿っており、時代に応じて定着してきました。

今では外で高画質の動画やゲームをすることが一般的になりましたが、3G以前の環境下では考えられないことでした。今回はここまで進化してきた5Gを企業はどのように捉えるべきかを紹介していきます。

5Gとは何か

5Gとは5th Generation Mobile Communication Systemの略称であり、〈第5世代移動通信システム〉とされています。

5Gの技術は2014年ごろから研究が本格化しており、2019年にプレサービスが提供開始ということからも比較的新しいシステムであることが分かります。とはいえ、今までの通信システムの変遷と同様に、即座に通信システムを移行するのは困難とされています。

それでもメディアで大々的に5Gが叫ばれているのは今後の日常生活に大きく関わってくるからに他なりません。以下では5Gの基本的な特徴を挙げながら、どのような活用方法があるのか解説します。

5G基本的な特徴

高速・大容量

以前に比べてカメラ・テレビ・スマートフォンなどのデバイスの品質が向上したことで記録や配信されるデータも4K・8K動画になり、データ大容量化の傾向にあります。4Gではダウンロードするのに数時間必要なデータも、5Gの通信速度(20Gbps)では数秒で完了します。

現在の光回線の最速値でも1~2Gbpsのため今後wifi以上の速度が出るのは確実といってもいいでしょう。

低遅延

コロナ禍でリモートワークが増えたことで、リモート会議が推進されていますが、エラーやラグが発生したことはないでしょうか。リモート会議でのラグの発生は通信が安定しないためですが、5Gになると安定した通信システムになり、ラグが解消されると言われています。5Gと認められるのは通信が安定しているシステムのみとされているので、将来的にはラグに悩まされることもなくなります。

多数同時接続

スマートフォンを使用している時間帯によって通信が遅くなってしまうのは、駅などの密集地で通信の遅延が発生しやすくなります。これは1つの基地局に接続できるデバイスが限られているため通信障害が発生しているためです。

しかし、5Gの基地局では1平方キロメートルあたり最大100万台接続出来るようになるとされていますので、これだけ同時接続できるようになれば、大量のデバイスの接続による通信障害を心配する必要はなくなります。

これらの特徴を将来的な数値で表すと現在の通信速度の100倍、移動通信量1000倍、遅延する秒数1/10、同時接続可能数100倍になると言われています。現在4G回線自体に不満を持っているという声はほとんど聞きませんが、これだけ速度・通信量・遅延・接続数が改善されれば、通信システムの使われ方が変化していきます。

5Gで出来るようになること

上記の通り3Gから4Gへの切り替えによって、屋外でもスマートフォンで高画質動画視聴やゲームができるようになりました。同様に、5Gへの通信システムの世代交代によって出来ることが増えていきます。

総務省が発表した<5Gの将来の展望>では、自動車の完全自動走行・VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・リアルタイム通訳・無人店舗が記載されています。どれも5Gの特徴である高速・大容量・低遅延・多数同時接続が可能にしている分野になります。では、各業界ではどのような変化があるのでしょうか。

製造業

製造においては、ロボットによる生産が必要になるシーンが多くあります。特に複雑な工程が多くなるほどそれぞれのロボットの監視・管理が必要になりますが、機械同士の通信に使用する局地的な〈ローカル5G〉を導入することが求められます。これにより、精密なエラー特定・エラー発生時の対応などがスムーズ行われます。

医療業

医療業界では高齢化やコロナのような感染対策として遠隔診療が期待されています。5Gの高速かつ低遅延の通信で正確な患者の状態を把握することが可能になるからです。例えば、脈拍なども通信が安定していなければ正確なものがわからず適切な処理はできませんが、5G下では正確な情報を遅延なく受け取り、治療も含めて医師の動きを正確に届けることが可能になります。

小売業

小売業ではインターネット通販と実店舗での買い物両方が発展していきます。現在でも既にネットの買い物が普及していますが、今後はVRを通して商品をチェックし、VR内で買い物が可能になるとされています。

試験段階ではありますが、IKEAはARをすでに導入しており、スマートフォンを使用して、自宅に実物大のバーチャル家具を表示することが出来ます。

上記の総務省の展望では、スーパーは無人店舗になり、買い物の際、顧客がカートを押さなくても自動追尾するようになります。更に、会計時は購入する商品は自動スキャンされ、予め登録されている顧客の口座から自動的に引き落としがかかる設定も可能になるとされています。

5Gの注意点

このようにこれからの生活様式を変える可能性を秘めている5Gですが、新しい技術には以下のような注意すべき点があります。

①通信技術高速化の弊害→サイバー攻撃の高度化
②IoTデバイスの増加→ウィルス感染リスクの増加
③従来の周波数と異なる→影響がなかった機器に影響する可能性
④5Gの周波数は遮蔽物に弱い→基地局が多く必要になる

この注意点の中でも記憶に新しいのは③です。2022年1月にアメリカの航空会社では一部が欠航になりました。これは航空機の高度を計測する電波高度計に5Gの周波が影響を与える可能性があったためです。5Gは4Gとは異なる周波を扱うことにより、今までになかった機器への影響が考えられるため、今後精密機器などには注意が必要になります。

また④について、5Gの普及が遅れているのは基地局が足りていないからといわれていますが、それは元々5Gの使用周波が遮蔽物に弱いことが原因となっています。そのため、2022年現在では電波塔に依存しない<ローカル5G>の導入企業が増えています。ローカル5Gを導入することで、限られた空間や必要な機器にのみ使用することで5Gの弱点を克服しています。

中小企業は5Gをどのように考えるか

5Gは通信システムのひとつになりますので、システム環境だけが揃っても現状では100%使いこなすのは難しいでしょう。しかし、5Gを駆使するIoTの配備や、第三者から受け取る大容量データを元にビジネスを発展させることは可能です。

特に、現在では5Gは発展途上のため先行者優位を取れる分野です。数年単位での話にはなりますが、徐々に変化していく社会に先んじてクライアントに新商品やソリューションの提案をすることで、差別化を図り、今とは異なるリレーションが組めるかもしれません。

また、それだけではなく消費者の生活は5Gにより大きく変わります。消費者の生活が変わることでニューノーマルが形成されていくため、それを見越したアイディアが必要になってきます。最先端の技術を作り出すことは難しいですが、特徴を知ることで見えるものや思いつくアイディアがあるかもしれません。