創業して一番心配になるのは軌道に乗るまでの資金繰りではないでしょうか。もし売上が上がってきても資金が底をつくようなことがあれば事業計画の修正または事業から撤退せざるを得なくなる可能性さえあります。
資金調達にはさまざまな方法があります。ここでは、新規事業に際しての資金の調達方法について解説いたします。この調達手段を知っていれば軌道に乗った事業運営をさらに加速することができます。
出資
事業を起こすためには言うまでもなく資金が必要です。自己資金のみで運営できれば問題ないのですが、規模が大きくなるとそういうわけにはいかない場合があります。事業を始めるために必要な出資の種類について説明します。
自己資金
創業前に事業主が出資する資金です。
返済の必要がない資金であり、貸借対照表の自己資本に当たる部分ですので自己資本が多ければ多いほど一般的に信用度は高いと判断されます。
とはいえ、創業し軌道に乗るまで一定期間かかるため、自己資金以外にも調達方法を考えておく必要があります。
銀行の個人ローン
自己資金が手薄である場合、個人としてローンを組むことが考えられます。
【メリット】
・創業者個人が直接銀行でローンを申し込むことなので他人に迷惑をかけない
・審査が早い
【デメリット】
・金利負担がある
・審査が通るとは限らないケースがあり、あるいは保証人を徴求される場合がある
・個人信用情報に借入した記録が残り、延滞等があれば事業が順調に推移し、借入を検討した際の足かせになる可能性がある
万一延滞や債務不履行といったことが起きれば、事業資金の借入ができなくなるといったことが発生します。
親族・知人からの借入
自己資金が少ない場合、または新規事業において不足する場合、考えられるのは親族・知人からの借入です。
【メリット】
・借入の記録が個人情報機関に残らない
・比較的借りやすい
【デメリット】
・何度も頼むことができない。
・返せなかった場合(出資でなく借入として調達した場合)人間関係にヒビが入る、など
また、貸借対照表上、「借入」なのか「自己資本」なのかを明確にしておく必要があります。
他企業からの出資受入
他の企業に出資を依頼することにより資金調達を可能にします。
【メリット】
・多額の出資が期待できる
・資金面のみならず、技術や営業などの協力が期待できる
【デメリット】
・自社株式の出資比率の50%超を保有されると、保有された会社の実質子会社となり、経営権を失うことになる。
・配当政策にも考慮して経営しなければならない。
ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルとは、複数の投資家からの資金を、ベンチャー会社に投資するビジネスを行う投資会社のことです。
【メリット】
・実績不足であっても大量の資金調達が可能
・出資であるので返済の必要がない
【デメリット】
・株主となるので経営に干渉することが考えられ、経営者の思い通りの経営ができなくなる可能性がある
・出資を受ける場合、VCが財務内容等調査(デューディリジェンス)をおこなうので3〜6ヶ月ほど時間がかかる
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、創業間もない企業に投資をし、投資以上のリターンを求める個人投資家のことです。
【メリット】
・VCほどではないが資金を集めやすい
・今まで築いたコネクションによりエンジェル投資家が事業をサポートしてくれる
【デメリット】
・VC同様経営に関与するエンジェル投資家もいる
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数から少額の資金を募り、企業が考えているプロジェクトを実行する資金の調達方法で、
・貸付型
・ファンド型
・寄付型
・購入型
・株式型
があります。
【メリット】
・マーケティングにも活用が可能
・経歴や実績を問わず少額から資金調達ができる
【デメリット】
・資金調達できるとは限らず、時間もかかる
・企業のプロジェクトに出資者が賛同してもらえるかが未知数
・支援してくれた人へのリターンなどの対応
・調達方法により会計処理が異なる
融資
一般的に資金の調達として考えられるのは金融機関からの融資ではないでしょうか。ここでは次の3つの方法について説明します。
制度融資
地方自治体と金融機関、そして信用保証協会とが連携して開業資金など、創業に際しての手助けを行なっています。
【メリット】
・低金利で設定されている
・開業資金など取り扱っており、審査のハードルが低い
【デメリット】
・審査に1ヶ月近くかかる
・審査に通っても、融資をうける金融機関との間で書類(金銭消費貸借契約、取引約定書など)のやりとりをする必要があり時間がかかる
・金利以外に信用保証協会に対し保証料を支払う必要がある
銀行からの融資
銀行からの融資を受けることについてのメリット、及びデメリットについて説明します。
【メリット】
・銀行から融資を受けることは対外的に信用力があるとみなされる
・取引の拡大が見込まれる
【デメリット】
・融資を受ける以前より取引がないと審査に通りにくい
・審査に時間がかかる可能性がある
・創業直後の場合、事業実績が皆無であるため信用リスク面を勘案し金利が高くなる可能性がある
公庫融資
信用保証協会、銀行以外に日本政策金融公庫から開業における新創業融資などを受けることができます。日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨とする政府系金融機関です。また、新創業融資は、事業を開始し税務申告を2期終えていない創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方が対象となります。
【メリット】
・通常、設備資金の借入期間は10年であるが、公庫融資においては20年と長期で融資を受けることが可能である。
・銀行より審査が早い
【デメリット】
・創業計画書、月別収支計画書など、作成及び提出しないといけない書類がある
補助金・助成金
決算書に表示されている「負債」「自己資本」以外に補助金、助成金という資金調達方法があります。主な助成金には次の2つがあります。
創業補助金
創業助成金とは、国や地方公共団体が、創業時に必要な経費の一部を補助してくれる制度です。
【メリット】
・返済する必要がない
【デメリット】
・一定期間内に利益が計上できると返還義務が生じる
・補助金が受給できるまで半年以上かかる
また、申請時期が毎年春ごろに1ヶ月程度しかないので、中小企業庁及び各自治体の該当する窓口でチェックする必要がある。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が行う販路開拓及び生産性の向上に取組む際、日本商工会議所や商工会のサポートを受けながら経営計画書、補助事業計画書を作成し、審査を経て採択が決定されれば、所定の補助を受け取ることのできる制度です。事業にかかった費用の3分の2(最大50万円)まで補助してもらえます。
【メリット】
・経営アドバイスを受けることができる
・将来にわたっての事業方針などを練ることができる
・販路拡大に役立つ
【デメリット】
・サポートを受けた後に交付されるまで時間がかかる
まとめ
創業前後においての資金調達方法、それぞれの方法についてメリット・デメリットを説明しました。
資金調達の方法は多岐にわたるので、企業の業況や特性に応じた方法を選択するのが重要です。
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