IPOとは?上場のメリット・デメリット

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IPOとは?

IPOは「Initial Public Offering」の略で、日本語では「新規株式公開」や「新規公開株」と訳され、株式会社が証券取引所に上場することを指します。

証券取引所に株式を上場するということは、これまで非公開だった株式を証券取引所で自由に売買できるように公開することです。

IPOの条件

IPOはどんな企業でもできるわけではなく、上場審査基準という条件が定められています。

上場審査基準は「形式基準」と「実質基準」に分類されます。

形式基準は、上場するために最低限満たすべき定量的な条件のことで、株式数や流通株式比率、時価総額、事業継続年数、純資産や利益の額などが定められています。この形式基準は上場する証券取引所によって異なります。

実質基準は、形式基準を満たしている前提で、上場を認めるかを判断するための具体的な項目を指します。形式基準と同様に、証券取引所によって微妙に異なりますが、以下の5つが共通する基本的な原則となります。
● 企業の継続性及び収益性
● 企業経営の健全性
● 企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性
● 企業内容等の開示の適正性
● その他公益および投資者保護の観点

これらを主幹事証券会社及び証券取引所が審査します。

IPOのメリット

IPOのメリットには、以下のようなものが考えられます。
● 知名度・社会的信用力の向上
● 多額の資金調達
● 優秀な人材の確保
● 内部管理体制の強化
● 株主利益の確保

知名度・社会的信用力の向上

知名度・社会的信用力の向上は、IPOの大きなメリットの1つです。

IPOを行うと、証券会社から投資家に対してIPO株の通知が行われます。場合によっては、新聞などのメディアで取り扱われることもあります。また、上場後はもちろん上場株として公開されるため、多くの投資家から企業を認知してもらえます。

証券取引所に上場するには厳しい審査をパスする必要があることから、上場した企業は財務状況や内部管理体制が一定水準以上にあるということになります。上場後も企業の財務状況を規定にしたがって開示する必要もあることから、顧客や取引先などからの社会的信用度も向上するでしょう。

多額の資金調達

IPOによって、資金調達の選択肢が増え、多額の資金調達が可能となる点もメリットです。

株式を公開し、一般投資家などから広く投資金を集めることでスムーズな資金調達が可能となります。もちろん、以後必要な時期に増資などによる資金調達も可能になります。

株式での資金調達は、返済の必要もなく利息も発生しないため、事業投資時の資金調達方法として、有効な手法です。

優秀な人材の確保

IPOは資金面だけでなく、人材確保の面でも大きなメリットがあります。

上場している企業は、それだけでブランド力があり、社会的信用も高い状態です。非上場企業と比べると優秀な人材も集まりやすく、他社との競合となった場合でも自社を選んで貰える可能性が高まります。

内部管理体制の強化

内部管理体制が強化されることもメリットの1つです。

上場審査では、コンプライアンスの遵守や適正な財務報告を作成できる体制が求められます。これらの整備により、管理体制の充実や内部不正の防止などが強化されます。

また、上場後は継続的に自社の財務状況や経営情報を公開していくことになるため、これらを通じて経営が健全に行われていることを示し、社会的信用の向上に繋げられます。

株主利益の確保

株主やストック・オプション保有者の利益確保という側面でもメリットのあるものです。

IPOの実施により、多くの場合、株価は上昇します。IPOによって、既存の株主は株価上昇の恩恵を受けることができ、利益確保が可能です。

IPOのデメリット

IPOのデメリットには、以下のようなものが考えられます。
● 株価向上へのプレッシャー
● 会社情報の開示義務
● 株主からの経営関与
● 上場に関わる多額のコスト
● 買収リスク

株価向上へのプレッシャー

IPOを行うと、株主や市場から常に業績を向上させ、株価を向上させることを求められます。

市場環境が激しく変化していく中でも毎年、業績・企業価値を求められ、短期的な利益を重視した企業経営になってしまうことも少なくありません。

会社情報の開示義務

上場会社は、会社情報を適宜適切に開示する義務があります。

例え自社にとって都合の悪い情報であっても、開示すべきと規定されている情報は開示する必要があります。

株主からの経営関与

株主からの経営関与もデメリットとなる場合があります。

株式を公開するということは、一般投資家から資金提供を受けるということであり、投資家は投資した会社には、利益を着実に還元してもらえるような経営を期待しています。自分たちの利益にならない経営をしていると判断されれば、株主総会などで経営手法について批判されたり、経営陣の交代を迫られる可能性があります。

上場に係る多額のコスト

上場を維持するには、様々なコストが必要です。

上場準備段階でも、さまざまな上場審査基準をクリアするために、内部体制を整え、場合によってはシステムの導入や人員確保が必要になります。これらの上場準備段階でかかるコストは、少なく見積もっても数千万円にも及びます。また、上場を維持するために証券取引所や監査法人、主幹事証券会社などに費用を支払う必要もあり、年間で三千万円ほどが必要となります。

上場する際にはこれらの費用を賄うだけの売上・利益が必要になるため、収益面で余裕がある状態である必要があります。

買収リスク

上場するということは、自社の株式を誰もが売買できるようにするということです。

自社にとって都合の悪い株主によって、株式が買い占められ会社を買収される恐れがあります。

IPO成功のポイント

では次に、IPOを成功に導くポイントについて、解説します。

IPO後のビジョンを明確にする

IPOは創業者や経営者、株主に大きな利益をもたらすものであり、経営者にとって1つの目標です。

しかし、IPOの成功は上場審査を通過し株式公開することではありません。IPO後も、創業者や経営者、投資家、従業員などすべての人が継続的に利益を享受できるようにすることが重要です。

そのためには、中長期的に企業が成長していくためのビジョンを持つことが大切です。IPOに取り組む段階でこのビジョンがなければ、デメリットでも挙げたように市場からの要望に振り回され、短期的な利益を追い求めてしまうことにもなりかねません。

中長期の売上高・利益や社員数、市場シェアなどできるだけ具体的な目標数値を定め、着実に戦略を実行していくようにしましょう。

IPO実現の課題を着実に解決する

IPOを実行するためには、以下のようなさまざまなプロセスを経ていく必要があります。
● 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
● 株式公開時期の決定
● 証券取引所・主幹事証券会社の選定
● コーポレート・ガバナンス、内部監査制度の確立
● 申請書類・審査資料の準備・作成

それぞれのプロセスにおける課題をひとつひとつ解決していくことが重要です。証券会社や監査法人といった専門家にアドバイスや指導を仰ぎながら、着実にクリアしていきましょう。

また、これらのプロセスは非常に煩雑で膨大な作業を要します。通常の業務に加えて、これらの業務を効率的に進めるために、IPOに関わる知識や経験を持つ人材やコンサルタントなどのサポートを受けるのも有効です。

まとめ

IPOは、証券取引所に自社の株式を公開し、一般投資家などが広く売買できるようにすることです。IPOの実現は、企業、従業員、株主、創業者などさまざまな関係者にメリットをもたらすものです。

その一方で、IPO実現には厳しい審査に合格するため、さまざまな準備が必要で、手間やコストが膨大にかかります。

また、IPO後も常に社会的・経営的責任を背負っていかなければなりません。株主の経営への介入やさまざまな規則により、経営の自由が制限される側面もあります。

重要なのは、これらのメリット・デメリットを把握した上で、自社の経営ビジョンを踏まえて最適な手段を検討することです。この記事を参考に、自社のIPOについて今一度検討してみてはいかがでしょうか。

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