最近良く聞く言葉になった「DX」。Digital Transformationの略で、簡単に言えば「デジタル技術をフル活用して、製品やサービスを変革すること。」です。
中小企業の経営者の方におかれても、その必要性を感じつつも、「大企業でもDXの対応はできていないのだから、自社はまだまだ時期尚早」と思われてる方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際にはDXの必要性は企業の大小は関係なく、むしろ中小企業のほうが相性が良い面もあります。ですので、中小企業にこそDXに取り組んでいただきたいのです。
ただし、典型的な日本の中小企業がいきなりDXに取り組むのは得策ではありません。その前の段階で必要な「デジタル化=デジタイゼーション」にまず取り組む必要があります。
今回は中小企業にもDXは求められていること、その前段でデジタル化が必要であること、そして実際にデジタル化を進めるメリットと取り組み方をご紹介します。
DXを実現するためには避けて通れないステップになっておりますので、是非最後までご覧ください。
DXは中小企業にこそ求められている
製品やサービスのユーザーからすれば、それを作っている会社の大小はあまり関係がありません。特にこのインターネット時代では画面の中で会社のサイズは表現されにくいのでなおさらです。
そんな環境下で、DXは当然に中小企業にも求められています。
むしろ大手企業に比べて体力が少ない中小企業にとっては、生き残っていくためにより必要性の高い取り組みであると言えるでしょう。
中小企業の生き残りのカギになりえるのがDX
世界ではDXが急速に進んでいます。
IMD(国際経営開発研究所)という機関が発表した「デジタル競争力ランキング」では日本は28位。大きく遅れを取っていると言わざるを得ません。
その日本にもAmazon、Uber Eats、AirbnbのようなDXされたビジネスモデルが押し寄せており、DXに乗り遅れることは大きな経営リスクになる可能性があります。
現代においてはあらゆる製品、サービスのコモディティ化が進み、品質や価格だけで消費者に選ばれるのは難しくなってきています。
DXを進め、単純な製品の機能だけでなく、新たな体験や価値を顧客に提供していくことが生き残りのカギです。
中小企業におけるDXは前段のデジタル化から
となれば、すぐにDXに着手したいのが人情ですが、いきなりDXに取り組むのは得策ではありません。
DXはあくまで「製品やサービスを変革し、新しい体験や価値を顧客に提供すること。」ですが、そういったビジネスを生み出す土壌として「デジタルを前提としたマインド」が必要不可欠です。
Uber Eatsで食事の配達を頼む時、紙の書類は一切でてきませんし、パソコンを使う必要もありません。すべてスマホで完結します。
こういったビジネスが、紙の書類に判子を押して、FAXを送り、その紙にパンチで穴を空けてファイリングしているような土壌から生まれないのは明らかです。
日本の企業では大小問わずこういった「デジタル化」の時点で出遅れていることが多いのが実情です。
まずは足元の業務フローをデジタル化していくことが必要になります。
中小企業がデジタル化を行うメリット
デジタル化をすることにどういったメリットが有るのでしょうか。
「デジタル化」という言葉から抱くイメージは、
・お金がかかりそう
・めんどくさそう
・難しそう
だという方も少なくないでしょう。しかし、まずは事前にメリットをしっかり理解しておくことが重要になります。
大きなメリットとしては、
・業務効率化によって生まれたリソースを新規事業に振り向けられる
・無駄な費用を圧縮できる
・業務全体での「見える化」が実現され、仕事の属人化を防ぐことができる
の3点が挙げられます。順に見ていきましょう。
業務効率化によって生まれたリソースを新規事業に振り向けられる
現時点での業務フローのアナログ度にもよりますが、適切にデジタル化を行うとほぼ確実に業務の効率化が実現されます。
社員が行っていた生産性や付加価値の低い仕事をデジタルに置き換えることで、その社員の工数が浮きます。
こういった社員を新しい事業やそのための調査にアサインすることにより、今までは出来なかった事業へ着手できます。
企業の最大の財産は人材です。余剰人材を抱えられない中小企業にとって非常に重要なポイントです。
従来かかっていた無駄なコストを圧縮できる
伝統的な日本の企業には、省ける無駄なコストが多数存在しています。
その最も象徴的なものが「紙」です。コクヨ株式会社によると社員が紙の書類を探している時間は年間に換算すると実に80時間にもなるそうです。
上手にデジタル化すればこの時間はなくなりますので、この分の残業代などの人件費がまず圧縮できます。
その他にも、そもそもの紙、印刷するためのプリンター、保管するためのファイリング関係、保管場所の家賃、書類を送るための通信費(郵送やFAX)など紙関係だけでもこれだけ圧縮できるコストがあります。
もちろんどうしても紙である必要がある仕事もあるでしょう。適切にデジタル化を進めることが重要です。
業務全体での「見える化」が実現され、仕事の属人化を防ぐことができるようになる
こちらは特に中小企業で起こりがちな問題です。
長年特定の社員のみが管理している仕事が属人化され、他の人が手を出せないという状況がデジタル化によって解消されます。
デジタルデータのメリットの一つに「閲覧性の高さ」が挙げられます。
いつでもどこでも必要な社員が書類にアクセスできますし、作成やチェックという段階も複数人で共同で行うことが可能です。
属人化された仕事は組織の硬直化を生みますし、不正の温床にもなります。
働きやすい環境づくりにも一役買ってくれることでしょう。
中小企業のデジタル化への取り組み方
では実際にどのように進めていくのかをご紹介します。
本来のDXという目標からすると前段にあたるこのデジタル化ですが、この段階だけでもその実行は容易ではありません。
その大きな理由は、
・経営者のITへの理解の低さ
・社内からの反発
です。この点を踏まえて、取り組み方を見ていきましょう。
経営者がトップダウンで取り組む
業務フローをデジタル化する際には、様々な問題が生まれます。
社内外との調整も多く、担当者に任せっきりでは適切な形での実現は期待できないでしょう。
体格が小さく社長の目が届きやすい中小企業の特性を活用し、トップが自らDX、デジタル化の重要性を理解していくことが必要です。
トップ・IT担当部門・実務部門が一体となって初めて目標達成されるのがデジタル化であり、DXです。
人間は変化を恐れる生き物です。今までの仕事の仕やり方を変えようとすると社内からの反発が必ず生まれます。
そんなときにトップ自らが矢面に立ち、DXやデジタル化の必要性やメリットを説明し、反発している社員の協力を取り付けることがとても重要です。
DXという目標を明確にして取り組む
デジタル化を行う際のリスクとして、「小手先の改善で終わってしまう」ということがあります。
本来デジタル化はDXという目的のために行う手段の一つですが、ついついデジタル化が目的になってしまいがちです。
何のためにデジタル化を進めているのか、最終的にはDXされたビジネスモデルを生み出すことが目的であることを、明確に共有しておくことが重要になります。
低予算で行う
こちらも今までアナログ的だった企業がデジタル化する際にありがちですが、「いきなり大きなお金をかけてしまう」こと。
一昔前は業務システムも会社に合わせてオーダーメイドで開発する必要があり、たしかに大規模な予算が必要な場合もありました。
最近の業務システムやツールはとても安価で優秀です。パソコンやスマホなどの端末も適切なモデルを選べばかなり安価に揃えることが出来ます。
いきなり大きなお金をかけてしまうと、その後身動きが取りづらくなってしまいます。まずは無料のツールなどを上手に活用して、低予算で進めていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
中小企業こそDXが必要である理由、その前段に必要であるデジタル化のメリットと取り組み方についてお伝えしました。
インターネットの登場と普及が世の中の変化のスピードを急激に速めましたが、もはやDXされたサービスがスタンダードになっていく時代です。
「選択と集中」という観点で考えれば、社内の雑務など価値を産まない部分はどんどんITに任せてしまうことで、顧客満足度向上に集中することが出来ます。
これはデジタル技術に限ったことではなく、コア業務以外の総務や経理やアウトソーシングするというのも非常に有効です。
アウトソーシング先となる企業は必ず高度にデジタル化されています。そういった企業と仕事をすることで、社内の改善にもつながるでしょう。
デジタル化、アウトソーシングによって生まれたリソースをDXされた製品やサービスに投入し、自社のさらなる飛躍につなげましょう。