経理担当者には、一体どのようなスキルが求められるのでしょうか。
すぐに思い浮かぶのが簿記の知識かもしれませんが、実際にはそれだけではありません。
経営者は経理担当者に対して、具体的にどういったスキルを求めるとよいでしょうか。
ここでは、経営者の視点で、経理担当者に必要なスキルをまとめてみました。
簿記の最低限の知識
経理担当者に求められるスキルとして、必ず必要になってくるのが簿記の知識です。
毎月発生するような定型の仕訳であれば、簿記の知識がなくても処理することは可能です。しかし、常に同じ仕訳だけを行うというケースはむしろ稀なのではないでしょうか。会社が発展する以上、その取引内容は常に変化するので、会社のあらゆる取引を仕訳にイメージするスキルが求められます。そのためにはある程度の簿記の知識が必要です。
とはいえ、必ずしも簿記の資格が必要というわけではありません。
税理士の仕事は資格がないと行うことができませんが、経理の仕事は資格がなくとも行うことができます。たとえ資格を持っていなくとも、簿記の最低限の知識を持ってさえいれば、十分に経理業務を行うことができるでしょう。
ただ、経理の最低限の知識を得るために、簿記の資格の勉強が役に立つことは確かです。
情報処理スキル
経理業務を進めていくにあたって必要になってくるのは、様々な資料を正確かつ迅速に作成する情報処理スキルです。
請求書発行や支払予定表、月次決算書や資金繰表など、経理が作成する資料は数多く存在します。しかも、それらの資料は同じ数字をもとに作成されている場合が多いので、もし数字を一つ間違えた場合、その数字に関係している資料はすべて修正して資料どうしの整合性を保たなければなりません。この時に、「どの資料を修正する必要があるのか」という判断ができる必要があります。
また、月次決算の業務は、スピードが求められます。月次決算は、前月の会社の業績を示すものであるため、経営者は早く数字を見たいのです。そのため、経理担当者は月次決算を早く仕上げる必要があるのです。
そうした時に役立つ代表的なスキルは、エクセルにおける数式やピボットテーブルの使用、マクロの運用です。エクセルの実務能力は、すばやく正確に資料を作成する上で、経理業務を支える情報処理スキルとなります。
社内外に対する情報収集スキル
社内外に対する情報収集スキルもまた、経理担当者に求められる能力の一つです。
ここでは、社内と社外のケースに分けて解説します。
社内に対する情報収集スキル
社内に対する情報収集スキルとは、他部署で起きている情報を収集する能力のことを指します。
たとえば、新規取引先の情報や新たらしい取引の内容は、最初は営業に関わる部署が把握します。経理担当者は、そうした情報を事前に入手しておくことで、あらかじめ会計処理の準備をしておくことができます。また、新規取引の詳細を早めに把握することで、事前に入金と支払の資金のバランスへの影響を把握することができ、資金繰り保全のための対策を早めに取ることができるのです。
このように、社内に対する情報収集スキルは、経理業務をスムーズにこなすことに役立つだけでなく、企業の経営保全にも貢献します。
社外に対する情報収集スキル
経理業務をこなしていく中で、つい後回しにしてしまいがちなのが、社外に対する情報収集スキルです。ここでいう社外とは、顧客、つまり売上先のことを指します。
売上先に対しては、売掛金の回収状況が普段よりも悪化した時に注意を払わなくてはいけません。入金が期日よりも遅れている場合は、営業担当者にその旨を伝え、状況確認を依頼する必要があります。経理担当者は、このように普段の業務の中で接する数字の違和感を感じとることが必要です。
常日頃から売掛帳の数字の動きを把握しておくことが、社外に関する情報収集スキルを磨くことにつながります。
情報分析スキル
ここまで、情報処理スキル、情報収集スキルについて述べてきましたが、情報分析スキルも重要です。完成した資料を検証する際に必要となるスキルです。情報分析スキルは、経理業務の中でも特に、月次決算や経営資料を作成する担当者に必要なスキルとなります。
たとえば月次決算の業務をするにあたって、単に数字を集計すればよいというものではありません。いったん出来上がった財務諸表について、なぜその結果が導き出されたのかを分析できるスキルが必要です。情報分析スキルは、常に数字の意味を考えながら業務を進めて行くことで身につきます。
分析の方法は、基本的には前月や前年との比較です。売上高や仕入高、その結果である売上総利益、あるいは販売費及び一般管理費について、前月よりも大幅に増減していれば、その勘定科目を重点的に掘り下げていき、なぜその結果になったのか原因を突き止めていきます。最初のうちは分析に時間がかかってしまうかもしれませんが、経験を積み重ねていくことで、分析スピードは向上することでしょう。
情報のアウトプットスキル
経理担当者には情報アウトプットスキル、すなわち専門的な情報をわかりやすく伝える能力も求められます。
経理担当者になりたての頃であれば、仕訳処理や請求書作成など、情報を処理する業務だけを任されるかもしれません。しかし、ある程度経理の経験を経てくると、経理で作成した決算書や経営資料について、他部署の人から説明を求められるようになります。そうした時、情報を正確に、わかりやすく伝えることが必要になってきます。
経理担当者は日々経理業務に触れていますが、他部署の人はそうではありません。たとえ他部署の人が簿記の知識を持っていたとしても、経理の資料ができるまでの資料作成のプロセスは、経理担当者でしか分からないのです。それは、相手が社長であっても同じことが言えます。
逆の言い方をすれば、経理担当者が情報をわかりやすく伝えるためには、資料の数字ができるまでのプロセスについて順を追って伝えることが必要です。このような情報のアウトプットスキルもまた、経理業務の経験を積み重ねることで向上していくスキルです。
税務知識
ここまでは、情報処理、情報収集、情報分析、そして情報のアウトプットについて解説してきました。
経理担当者として更なる飛躍を目指すのであれば、税務の知識が必要です。
会社によっては、顧問契約している税理士に税務関係全般をお願いしているところもあるかと思います。しかし、経理業務をこなしていく中で、直近の税法に関する知識があれば仕訳処理をより適切なものにすることができます。会社の新たな取引に関する会計処理を検討するうえでも、税務知識があれば税金を安くする方法を立案できます。また、税率などが変われば、仕訳処理のみならず、請求書の作成方法の見直しを図る必要も出てきます。このようなことは顧問税理士が指南してくれるかもしれませんが、事前に対応を考えておけば、新たな取引や税制改正に直面したときに慌てずに時間的余裕をもって対応できます。
税務情報は、定期的に刊行されている税務関連の専門誌などで詳しく解説されます。日頃から税務情報にアンテナを張っておくことでタイムリーに税務情報を得ることができます。
まとめ
経理担当者に求められるスキルは、簿記の知識だけではありません。また、情報を正確に早く処理するスキルだけでもありません。会社にある経理に関わる情報を幅広く収集するスキルも必要になってきます。さらに、資料を作成したら数字を分析し、相手に分かりやすく情報を伝えるスキルも必要です。
また、税務の知識も経理担当者としてのスキルアップのために必要不可欠です。
このようなすべてのスキルを一気に身につけるのは大変なことです。
しかし、日頃の経理業務を丁寧にこなしていき、その中で疑問に思ったことについて自分なりに検証していく作業を繰り返していけば、スキルはおのずと身についていくものです。
経理担当者としてどんなスキルが必要なのかをきちんと把握し、経験を積むことで、経理業務を極めていくことが可能となります。
とはいえ、このような人材を確保することはなかなか難しいものです。
そんな経営者の悩みを解決するのが、経理業務のアウトソーシングです。
経理業務を引き受けてくれるアウトソーシングの会社は多数あるので、検討してみてはいかがでしょうか。