2021年3月より、「事業再構築補助金」の公募が開始される予定です。「事業再構築補助金」とは、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応し、事業再構築を行う中小企業等を支援するために、令和2年度第3次補正予算で、予算額1兆1485億円が計上されている大規模な事業(中小企業等事業再構築促進事業)です。
今回は、この「事業再構築補助金」の概要についてご紹介します。なお、この記事に記載の情報は、2021年3月1日時点の情報であり、今後事業内容が変更される可能性があることをご了承ください。
事業の目的
新分野展開や業態転換、事業・業種転換等、事業再編またはこれらの取組を通じた規模の拡大等の事業再構築に意欲のある中小企業等を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
申請要件
以下の要件をすべて満たす中小企業・中堅企業・個人事業主・企業組合等が対象となります。
① 売上が減少している
・申請前の直近6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
② 事業再構築に取り組む
・事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
③ 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
・事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する。補助金額が3,000万円を超える案件は、金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する。
・補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または、従業員一人当たり付加価値額(※1)の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。
※1 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
事業再構築のイメージ
新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の内容については、経済産業省の事業再構築補助金のリーフレットで、以下のイメージが掲載されています。事業再構築の定義等については、今後公表される「事業再構築指針」に記載される予定です。
出典:経済産業省「事業再構築補助金のリーフレット」
補助額・補助率
補助金の補助額・補助率は、以下のとおりとなります。
枠 | 補助額 | 補助率 | |
中小企業 | 通常枠 | 100万円~6,000万円 | 2/3 |
卒業枠(※2) | 6,000万円超~1億円 | 2/3 | |
中堅企業 | 通常枠 | 100万円~8,000万円 | 1/2(4,000万円超は1/3) |
グローバルV字回復枠(※3) | 8,000万円超~1億円 | 1/2 |
※2卒業枠
400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金または従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
※3グローバルV字快復枠
100社限定。以下の要件をすべて満たす中堅企業向けの特別枠。
①直前6ヶ月間のうち任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
②補助事業終了後3~5年で付加価値額または従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。
また、申請要件に記載の要件に加え、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、2021年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者(地域・業種不問)については、通常枠の審査で一定の加点措置が行われるとともに、「緊急事態宣言特別枠」が設けられます。
緊急事態宣言特別枠 | ||
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
5人以下 | 100万円~500万円 | 中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,500万円 |
中小企業・中堅企業の範囲
本補助金における中小企業および中堅企業の範囲は、以下のとおりです。
・中小企業の範囲(中小企業基本法と同様)
業 種 | 範 囲 |
製造業その他 | 資本金3億円以下の会社 または 従業員数300人以下の会社および個人 |
卸売業 | 資本金1億円以下の会社 または 従業員数100人以下の会社および個人 |
小売業 | 資本金5千万円以下の会社 または 従業員数50人以下の会社および個人 |
サービス業 | 資本金5千万円以下の会社 または 従業員数100人以下の会社および個人 |
【注1】 大企業の子会社等の、いわゆる「みなし大企業」は支援の対象外です。
【注2】 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、中小企業ではなく、中堅企業として支援の対象となります。
【注3】 企業組合、協業組合、事業協同組合を含む「中小企業等経営強化法」第2条第1項が規定する「中小企業者」や収益事業を行う等の要件を満たすNPO法人も支援の対象です。
・中堅企業の範囲
中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社(予定)
補助対象経費
本補助金は、基本的に設備投資を支援するもので、設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費も補助対象となります。また、新しい事業の開始に必要となる研修費、広告宣伝費・販売促進費も補助対象となります。
<補助対象経費の例>
【主要経費】
・建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費、設備費、システム購入費
【関連経費】
・外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
・研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
・リース費、クラウドサービス費、専門家経費
【注】「関連経費」には上限が設けられる予定です。
<補助対象外の経費の例>
・補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
・不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
・販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
事業計画の策定
補助金の審査は、事業計画を基に行われます。採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要となります。また、事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定しなければなりません。具体的な審査項目は、公募要領に掲載される予定ですが、事業化に向けた計画の妥当性、再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進などが審査項目となる可能性があります。
補助金支払までのプロセス、フォローアップ
補助金は、原則、補助事業実施期間終了後(採択決定から1年程度経過後)に、事業者による支出経費の証憑を確認した後に支払いが行われます。なお、一定の条件のもとで概算払制度が設けられる予定です。
事業計画は、補助事業期間終了後もフォローアップされ、補助事業終了後5年間は、経営状況等について年次報告が必要となります。補助金で購入した設備等は、補助金交付要綱等に沿って、厳格に管理することとなります。
出典:経済産業省「事業再構築補助金の概要」
事前着手承認制度
補助事業の着手(購入契約の締結等)は、原則として交付決定後となります。
例外として、公募開始後に事前着手申請を提出し、事務局に承認された場合に限り、2月15日以降の設備の購入契約等も補助対象となります。ただし、設備の購入等では入札・合見積りが必要となり、補助金申請後に不採択となるリスクもあるため、注意が必要です。
出典:経済産業省「事業再構築補助金の概要」
公募開始・公募要領公表予定
公募開始は2021年3月で、公募期間は1ヶ月程度と予定されています。詳細な日程については、今後経済産業省のHP等を通じて公表される予定です(2021年3月1日現在)。公募要領は公募開始と同時に公表される予定ですが、事業再構築指針は事前に応募申請の準備ができるよう公募開始前の公表が予定されています。
なお、公募は1回ではなく、2021年度に複数回実施される予定です。
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「事業再構築補助金」は、新型コロナウイルスの感染拡大によりダメージを受けた中小企業等が業績アップを目指すための攻めの補助金です。審査があるため申請をすれば必ず採択されるわけではありませんが、新分野展開等の事業再構築を計画している事業者の方はチャレンジする価値があると思います。なお、新規事業の事業計画の策定には時間がかかりますので、お早めに認定経営革新等支援機関に相談し、計画の検討を始めることをお勧めします。