2018年12月14日に2019年度税制改正大綱が決定しました。大綱においては、「消費税率10%への引上げを2019年10月に確実に実施する」ことが明記され、改正内容も2019年10月の消費税率引上げに伴う反動減対策を重視したものとなっています。今回は、大綱で明らかにされた改正のポイントをご紹介します。
【個人所得課税】
住宅ローン控除の期間の3年延長
消費税率10%が適用される住宅の取得等をして、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合には、住宅ローン控除の控除期間が3年延長され13年間となります。その際、11年目以降の3年間については、消費税率2%引上げ分の負担に着目した控除額の上限(「住宅借入金等の年末残高×1%」と「建物の取得価額×2%÷3」のいずれか低い方)が設けられます。
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の適用期限の4年延長
老人ホーム等に入所をしたことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等は、一定の要件を満たす場合に限り、本特例の適用を受けることができるようになるとともに、適用期限が4年延長(2023年12月31日まで)されます。
未婚のひとり親に対する住民税の非課税措置
子どもの貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される児童扶養手当の支給を受けており、かつ、前年の所得が135万円以下であるひとり親に対して、住民税が非課税となります。
【資産課税】
教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直しと適用期限の2年延長
祖父母や両親の資産を早期に若年世代に移転させることにより経済活性化に資することを目的に導入された両措置について、適用期限が2年延長(2021年3月31日まで)されるとともに、経済格差の固定化を防ぐため、受贈者の合計所得金額に制限(前年の合計所得金額が1,000万円以下)が設けられます。また、教育資金の一括贈与については、非課税の対象となる教育資金について対象が絞られます。
個人版事業承継税制の創設
個人事業者の事業承継を促進するために、相続税・贈与税の新たな納税猶予制度が創設されます。この制度では、現行措置(特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例)でも対象となっている事業用(不動産貸付事業等を除く)の宅地(面積400㎡までの部分)に加え、事業用の建物(床面積800㎡までの部分)および一定の減価償却資産を対象とし、税額の猶予割合も100%とするほか、相続のみならず生前贈与にも適用可能とするなど、思い切った措置となっています。なお、この制度は10年間(2019年1月1日から2028年12月31日まで)の特例措置であり、現行措置との選択適用とされます。
特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例の見直し
節税を目的とした駆け込み的な適用など、本来の趣旨を逸脱した適用を防止するため、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された一定の宅地等が除外されます。なお、この改正は2019年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用され、同日前から事業の用に供されている宅地等については適用されません。
【法人課税】
研究開発税制の見直し
研究開発投資の多様化を図り、質の高い研究を後押しするとともに、研究開発投資の増加インセンティブを強化する観点から、研究開発税制の見直しが行われます。
(1)総額型
研究開発を行う一定のベンチャー企業について、利益に比べ試験研究費が多額であっても控除メリットを受けられるよう、控除税額の上限が当期の法人税額の40%(現行25%)に引き上げられます。また、高水準の研究開発投資を行っている企業(試験研究費が平均売上金額の10%超)について、税額控除率が割増されます。
(2)オープンイノベーション型
対象範囲が拡充され、大企業や研究開発型ベンチャーに対する一定の委託研究等が追加されるとともに、控除税額の上限が当期の法人税額の10%(現行5%)に引き上げられます。
中小企業の支援
深刻な人手不足に直面している中小企業の設備投資を促進し、経営を支援する観点から、以下の措置がとられます。
(1)中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限の2年延長(2021年3月31日まで)
(2)中小企業投資促進税制の適用期限の2年延長(2021年3月31日まで)
(3)中小企業経営強化税制について、特定経営力向上設備等の範囲の明確化および適正化を行い、その適用期限を2年延長(2021年3月31日まで)
(4)特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却または税額控除制度について、経営改善により売上高または営業利益が1年間で2%以上向上するという要件を追加し、その適用期限を2年延長(2021年3月31日まで)
※2019年4月1日以後取得の設備が対象(一定の経過措置あり)
(5)事業継続力強化計画(仮称)に基づいて行った中小企業が行った防災・減災設備への投資に係る特別償却制度の創設
都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
地方法人課税における税源の偏在を是正するために、2019年10月1日以後開始事業年度より、法人事業税の一部を分離して特別法人事業税(仮称)および特別法人事業譲与税(仮称)が創設されます。
【消費課税】
車体課税
消費税率10%への引上げにあわせ、自動車の保有に係る税負担を恒久的に引き下げることにより、自動車ユーザーの負担を軽減し、需要を平準化するとともに、燃費性能の優れた自動車や先進安全技術搭載車の普及が図られます。
(1)保有に係る自動車税の税率引き下げ(恒久減税)
2019年10月1日以後に新車新規登録を受けた自家用乗用車を対象に、自動車税の税率が年1,000円~4,500円引き下げられます。
(2)取得に係る自動車税環境性能割の税率1%軽減
2019年10月1日より自家用乗用車の取得時にかかる税金として、現在の自動車取得税の代わりに「環境性能割」(燃費性能に応じて価格の0~3%)が導入されます。この「環境性能割」について、2019年10月1日から2020年9月30日までの間に取得した自家用乗用車については、税率が1%軽減されます。
(3)エコカー減税・グリーン化特例の対象車種の絞り込み(電気自動車や燃費水準が高いハイブリッド車等に限定)
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改正内容については、今後の国会における法案審議の過程において、修正等が行われる可能性があることにご留意ください。具体的な内容については、法令の公布後、改めてご説明します。