社会保険制度は、「労働保険」としての労災保険と雇用保険、「社会保険」としての健康保険と厚生年金保険に大きく分類することができます。そして、これら保険給付は、労災または失業時の所得補償、病気や怪我になった際の医療給付、定年後の所得補償のイメージが強いのですが、雇用保険、健康保険の中には出産・育児に関する保険給付も手厚くあります。今回から3回に分けて、産前・産後休業/育児休業中の社会保障についてご紹介していきます。第1回目はその概要です。
1.産前産後休業~出産~育児休業~職場復帰
「平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要(平成28年7月26日厚生労働省)によりますと育児休業制度の規定がある事業所の割合は、事業所規模5人以上では 73.1%、事業所規模 30 人以上では 91.9%で年々増加傾向でありますが、育児休業取得率は6年間85%前後で横ばい傾向となっています。
また、平成23年度厚生労働省委託調査を見てみますと、育児休業を取得しない理由として、職場が制度を取得しにくい雰囲気であったことと、収入が減り経済的に苦しくなると思ったことが上位にありますがが、そもそも制度自体が十分に理解されていないこともその要因として考えられます。
2.保険給付、保険料免除の仕組み
産前・産後休業/育児休業中の保険給付と保険料の仕組みを分かりやすく図示してみました。
ポイントは、8つあります。
●Point① 事業主は、産前6週間以内で本人が希望する日から産休を取らせなければいけません(本人が、就業を希望した場合は就業「可」)。
産後6週間は、本人の希望有無にかかわらず強制休業となります。しかし、産後7~8週間に関しては、本人が就業を請求した場合において、医師が「支障はない」と認めた業務であれば就業「可」。・・・母体保護の観点
●Point② 事業主は、本人が希望する場合、子が1歳に達する日まで育児休業を取らせなければなりません。
●Point③ 育児休業は保育園入所ができない等、特別の事情がある場合、子の1歳6か月まで延長可能です。
●Point④ 休業期間中は、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から無給「可」です。・・・無給であっても就業規則には、その記載が必要です。
●Point⑤ 出産に際しては、出産一時金が子1人*につき42万円支給されます(*出産された胎児数分)。また、産前産後期間中は、出産手当金が1日につき「標準報酬月額÷30日×2/3」に相当する額支給されます。
●Point⑥ 育児休業期間中は、育児休業給付金が休業開始から6か月間は、給与の約67%支給されます (以降、50%支給)。
●Point⑦ 休業期間中は、本人負担分と事業主負担分の社会保険料が全額免除になります。
●Point⑧ 職場復帰後、短時間勤務等で報酬が低下した場合、1等級下がっただけでも標準報酬月額が改定でき保険料が下がります。標準報酬月額が下がっても、厚生年金計算の際には従前の標準報酬月額が適用されます。
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健康保険料と雇用保険料は、事業主と被保険者が毎月折半で負担していますので、ワークバランスに配慮した職場環境維持のために有効に活用してみてはいかがでしょうか。
第2回目は受給要件と申請手続き方法等具体的な内容について、第3回目はワークライフバランス支援するための取組を実施した事業主等に対して支給する助成金について、ご説明いたします。