法人税を計算する際の課税標準となる所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とされています。この益金とは収益のことですが、「当該事業年度の益金」とはどのように計上するのでしょうか。今回は、いわゆる「収益の認識基準」についてお話します。
売上の計上を請求書の発行日と考えている方も多いですが、これはよくある勘違いです。
法人税法では、売上などの営業収益の計上は、収益が実現したときに計上することを原則としています。商品の売上のように物の引渡しを要するものは「引渡しのあった日」、設計や技術提供のように役務の提供を要するものは「役務提供の完了した日」となります。
では、なにを以て「引渡しのあった日」や「役務提供の完了した日」と認識するのでしょうか。次のように、認識基準にはさまざまな種類があります。
取引の形態 | 引渡しまたは役務提供完了の日 |
商品等の販売の場合 |
①商品等を出荷したとき(出荷基準) ②相手方が検収したとき(検収基準) ③取引対象物を相手方が使用収益できることとなった時 (使用収益開始基準) ④検針等により販売数量を確認したとき(検針基準) |
請負の場合 |
①物の引渡しを要する場合 →目的物全部を引渡したとき(完成引渡基準) →完成部分を引渡したとき(部分完成基準) ②物の引渡しを要しない場合 →役務の全部を完了したとき(役務完了基準) →部分的に収益金額が確定した日(部分完了基準) |
建設工事等の場合 |
①作業を終了したとき ②相手方の受入場所に搬入した時 ③相手方が検収を完了したとき ④相手方において使用収益ができることとなった日 |
商品、製品等の種類及び性質、契約の内容、取引の形態などに応じ、最も合理的と認められる基準を選びます。選んだ基準は、取引事情や販売方法、契約条件の変更など、正当な理由がない限り、毎期継続して適用します。「普段は検収基準を適用しているが、今月は決算月で売上目標を達成したいので、今月だけ出荷基準を適用する」ことはできません。
また、例えば、請求書の発行が20日締めの会社では、決算月の21日から末日までの売上も漏れなく計上する必要があります。この21日から末日までの売上のことを、「期ズレ」と呼んでいますが、期ズレの計上も、収益の認識基準に基づいています。
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税務調査でもよく争点になる収益の認識基準。正しく認識基準を適用していなければ、利益操作と指摘される可能性もあります。基準に基づき売上を計上し、健全な経営を目指しましょう。