平成29年度税制改正大綱の概要

税務お役立ち情報

昨年末に、平成29年度の税制改正大綱が決定しました。今回は、この大綱で明らかにされた改正項目のうち、中小企業に直接影響を与える可能性が高いものを取り上げて、概要をご説明します。

個人所得課税

配偶者控除・配偶者特別控除の見直し(平成30年分以後の所得について適用)

●配偶者控除の適用となる配偶者の年収上限が、103万円から150万円(所得金額38万円から85万円)に引き上げられます。また、配偶者特別控除の対象となる配偶者の年収上限も、201.6万円(所得金額123万円)まで引き上げられます。

●配偶者控除・配偶者特別控除ともに、納税者本人(世帯主)の所得金額に所得制限が設けられ、納税者本人の年収が1,120万円(所得金額900万円)を超えると控除額が減少し、年収1,220万円(所得金額1,000万円)を超える場合には、一切控除を受けることができなくなります。
※年収は、給与収入のみの場合の収入金額

積立型NISAの創設

少額からの積立・分散投資を促進するために、年間投資上限40万円、非課税期間を20年とする積立型NISAが創設されます(現行NISAとの選択適用)。非課税口座内の公募等株式投資信託に係る配当所得や譲渡所得については、非課税となります。

資産課税

相続税・贈与税の納税義務の見直し(平成29年4月1日以後の相続・贈与等について適用)

●日本で就労する外国人が増加していることへの対応として、一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等については、相続税等の課税対象は国内財産のみとされ、国外財産は課税対象外となります。

●租税回避を抑制するため、相続税等の居住要件と課税対象が見直されます。
・相続人と被相続人のいずれかが、相続開始前10年以内に日本に住所を有したことがある場合…国内財産・国外財産ともに課税対象(現行5年以内)
・日本の国籍・住所を有しない者が、相続開始前10年以内に日本に住所を有していた者から相続等により財産を取得した場合…国内財産・国外財産ともに課税対象(現行5年以内・国内財産のみ課税)。
※贈与税についても同様

居住用超高層建築物(タワーマンション)に係る課税の見直し(平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約締結を除く)について適用)

●高さ60mを超える居住用超高層建築物に係る固定資産税・都市計画税が、階層の相違による取引価格の変化の傾向を反映するために補正され、高層階は増税、低層階は減税となります。不動産取得税についても同様となります。

●相続税の財産評価に関する改正については、大綱では示されていません。

取引相場のない株式の評価の見直し(平成29年1月1日以後の相続・贈与等について適用)

中小企業等の実力が株式の評価額に適切に反映されるよう見直しが行われます。
①類似業種批准方式の見直し
②評価会社の規模区分の金額等の基準の見直し…大会社及び中会社の適用範囲の拡大

法人課税

競争力強化のための研究開発税制等の見直し

●あらゆる業種の研究開発投資を後押しするため、試験研究費の範囲について、従来の製品の製造・技術の改良等に加え、ビッグデータ等を活用した第4次産業革命型の「サービス」の開発に係る試験研究費が追加されます。

●税額控除率が見直され、試験研究費の増減率に応じて、6%~14%の範囲でメリハリがつく仕組みが導入されます(現行、投資の増減に関わらず8%~10%の税額控除)。

●中小企業向け支援を強化するため、中小企業については、さらに手厚い減税措置が講じられます。

賃上げ促進のための所得拡大促進税制の拡充

高い賃上げを行う企業には、税額控除額が上乗せされます。特に、中小企業については、現行制度に加え、2%以上の賃上げ要件を満たす場合には、税額控除額が12%上乗せされます。

中小企業経営強化税制の創設(平成29年4月1日から平成31年3月31日取得等対象)

中小企業の稼ぐ力を向上させる取組を支援するため、中小企業等経営強化法の計画認定に基づく設備投資を対象に、即時償却または取得価額の7%(特定中小企業者等は10%)の税額控除ができる制度が創設されます。

従来の制度で対象とされていた機械装置に加え、器具備品や建物付属設備も対象設備に追加されます。

消費課税

酒税の見直し(平成32年10月1日より段階的に実施、平成38年10月1日に一本化)

ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の税率が、段階的に一本化されます。

エコカー減税の見直し

エコカー減税・グリーン化特例については、燃費の向上に応じた対象の重点化を図った上で、2年間延長されます。

仮想通貨の課税関係の見直し(平成29年7月1日以後)

仮想通貨の取引について、消費税が非課税とされます。

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以上、平成29年度税制改正大綱の主要な改正項目についてご説明しました。内容については、今後の国会における法案審議の過程において、修正等が行われる可能性があるため、ご注意ください。なお、具体的な改正内容については、法令等の交付後、改めてご説明します。