商標権とは?企業経営に商標権を活用するための基礎知識

経営お役立ち情報

商標権とは

商標権とは、商標法に規定される、いわゆるトレードマーク、商品やサービスなどに使用するマークやネーミングなどの識別標識を保護する権利です。商標権は、特許庁に商標出願を行い、審査を経て、商標権として登録されることで権利が発生します。

商標法では、商標を「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音、その他政令で定めるもの」と定義しており、この定義に当てはまらないものは商標権として登録することができません。ロゴやマーク、ブランド名などが商標権になり得ることはわかりやすいですが、2015年の商標法改正により、色彩のみからなる商標や音商標、ホログラム商標なども保護対象に加わりました。

商標権は、登録する商標をどういった製品やサービスで使うのかを出願の際に指定しなければなりません。この商標を使う製品やサービスの範囲のことを「指定商品・指定役務」といいます。商標法では指定商品・指定役務をさらに「区分」として分類分けしており、商品で34類、役務で11類の区分があります。

商標権が登録されると、出願時に指定した区分の中の指定商品・指定役務内で商標の使用を独占することができます。それならできるだけたくさん指定した方が良いと思われるかもしれません。ですが、商標権の手数料は区分の数で変動します。また、あまりにも関連のない区分や商品・役務が指定されている場合、特許庁から本当に使用するのか確認が入る場合があります。そのため無用な範囲は指定せず、自社の経営戦略上必要な範囲に限定する方が良いでしょう。

商標権は登録から原則10年が権利の有効な期間です。しかし10年が経過しても権利の更新が可能です。更新手続きを行っている限り、ずっと商標権を維持することができます。

商標権を取得するメリット

商標権を設定することで、特許権や意匠権同様、権利の侵害者を排除することが可能です。同一または類似の商標を他者が同じような商品やサービスで使用した場合、差止請求による使用中止や損害賠償を求めることができます。また近年問題になっている海外からの模倣品についても商標権に基づき輸入差止が可能です。

さらに商標は使い続けることで価値が上がるというメリットがあります。
商品を購入するときに、このブランドなら安心だと考えることはないでしょうか。著名なブランドであれば、購入者はブランド名を見ただけで商品やサービスに対するイメージを想起します。これは良い商品とともにブランド名という商標を表示することで、市場にその商標が浸透しているから起こることです。商標権は、権利者だけがその商標を半永久的に使えることから、製品やサービスなど企業のブランド戦略と組み合わせることで大きな効果を発揮するということでもあります。

また商標権は権利者が自由に譲渡したり、ライセンス契約を行い他者に使用権を与えたりすることができる権利です。商標権ビジネスとして、商標の譲渡による収益やライセンスフィーを得ることも可能です。

商標権と企業経営

企業経営と商標は切っても切れないものです。会社名(商号)や店舗名、会社のロゴマークも商標権の対象になります。起業のときに商標権を取得していなかったために、事業が安定してきた頃に同名の別の企業と商標権のトラブルが起こる可能性もあります。

商標とは初めは他の製品やサービスと区別するための名前やマークにすぎませんが、事業が継続するうちに、その名前やマークが広く知られるようになり、それらの表示がある製品やサービスへの信頼が積み重なるものです。結果としてその商標は、ただの識別標識からブランドへと成長していきます。企業のブランディング戦略の重要性はよく聞くところですが、ブランドとは信頼の積み重ねであり、その信頼の受け皿を果たすのが商標なのです。

折角信頼が積み重なったブランドを商標権として登録していなかったとしたら、別の誰かに同じ名前を商標登録されてしまうかもしれません。そして自社のブランド名と同じ名前を持つ製品を販売されても防ぐことはできず、逆に自社が商標権侵害で訴えられる可能性すらあります。これは消費者にとっても、信頼しているブランドの製品と区別ができなくなるため、とても不利益なことです。場合によっては、自社への風評や信用の低下、顧客離れを招くでしょう。

商標権取得の流れ

先行技術調査

先行商標調査とは、類似商標が既に登録されていないか調査することです。

登録されている商標権の情報は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)というWebサイトで確認できます。J-PlatPatは無料で利用可能です。そのほか民間企業が運営する商標データベースなども利用可能です。

商標登録願の作成と特許庁への提出

先行商標調査で問題ないことが確認できたら、次は出願書類の準備です。

商標出願には、商標登録願を出願書類として提出することになります。商標登録願には、登録したい商標名やロゴなどを記載します。

書類の提出には、特許庁へ郵送又は受付窓口に持参、インターネットを利用する方法があります。インターネットを利用する場合、電子証明書と無料の専用ソフトウェア(インターネット出願ソフト)が必要です。

出願書類の様式や記入の仕方、注意点などは、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する「知的財産相談・支援ポータル」というウェブサイトに公開されているので、参考にしてください。同様にインターネット出願の手順や必要なものは、特許庁が運営する「電子出願サポートサイト」で確認できます。

審査・登録

商標出願後、特許庁で順番に審査が行われ、問題なければ商標権として登録できる旨の査定(登録査定)が発行されます。登録査定を受領したら、登録に必要な手続きを行い、商標登録料を支払うことで、晴れて商標権として登録、商標登録証が発行されます。

審査段階で、出願内容に不備があったり、類似商標があったりすると、拒絶理由通知書が送付されます。その場合、手続補正書で不備を修正したり、意見書で類似商標との違いを説明したりすることで拒絶理由が解消する可能性があります。

費用

商標出願には特許庁へ手数料の納付が必要です。

自身で出願書類を作成し、書面で特許庁へ提出する場合、次のような費用がかかります。2022年1月1日時点の料金です。法改正により、手数料が変わっている場合があるので、注意してください。

1. 出願手数料:3,400円+区分数1つにつき8,600円
2. 電子化手数料:1,200円+書面1枚につき700円
3. 商標登録料:区分数1つにつき28,200円
*商標登録料は、商標権を10年維持する手数料です。5年分ずつ分割して支払うこともできます。

自分で手続きできないときは…

自身での手続きに不安があれば、手続きを弁理士という知的財産権に関する国家資格の有資格者に依頼することもできます。弁理士は技術系が専門と思われるかもしれませんが、商標権を専門とする弁理士も多数存在しています。特許権や意匠権と商標権では専門性が異なるため、商標登録に慣れた弁理士に依頼することをお勧めします。弁理士に依頼する場合は特許庁への手数料のほかに、手続きごとに弁理士費用が必要ですので、その点は注意してください。

商標権取得の注意点

商標権の取得は先願主義、つまり最初に出願したものだけが権利を取得することができます。

過去に、全く関係のない第三者がさまざまな名前の商標を商標権として大量に取得しようとし、本来その商標を考えた事業者や既に使用している人が商標権を取得できなくなっているとニュースになったことがあります。自分がずっと使用していた名前やマークを他者が先に商標出願した場合、以前から自分がその商標を使っていたと主張しても意味がないのです。

会社名や重要な商品の名前など、事業経営上大切な商標を横取りされないためにも、できるだけ早く、できればその名前が知られる前に出願するようにしましょう。

また日本で取得した商標権は日本国内でのみ有効なものです。海外でも商標を使用する場合は、使用する国ごとに商標権を取得する必要があります。

まとめ

いかがでしたか。商標権の概要や商標の企業経営での重要性、取得の手順などを解説しました。

中小企業にとって、会社名や自社のブランド名、製品やサービスの名前は市場で生き残っていくためにとても大切なものです。名前やロゴは自社と他社を区別するもので、消費者や取引先はあなたの会社を名前やロゴで記憶します。商標権がないということは、悪意ある第三者に自社の名前や商品名を使われても何もできないということです。

自社のブランドを守り、さらに企業価値を高めていくためにも、経営戦略・事業戦略の中に商標権の活用を取り入れてみてください。

【参考サイト】
初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~(特許庁)

商標権と商標出願(日本弁理士会)

中小企業経営者のための商標マニュアル(東京都知的財産総合センター)

商標権とは?具体例を使ってわかりやすく解説(Toreru)

展示会に出展します!

10月2日〜4日に幕張メッセで開催される「総務・人事・経理Week」に出展します。

経営お役立ち情報
この記事が気に入ったら
いいねをして、cashmoをチェックしよう!
FOLIO

タイトルとURLをコピーしました