会社を始めるにあたり、法人としてどのような税金を納める必要があるのか、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。法人に関する税金の種類や、支払い時期、計算方法などを把握しておくと安心です。また、税金は所得にかかるものが多いため「赤字の場合、税金は全てゼロになるのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、税金の種類によっては、赤字でも支払う必要があるため注意が必要です。
本記事では会社にとって主な税金である次の5つについて、わかりやすく解説します。
・法人税
・地方法人税
・法人住民税
・法人事業税
・消費税
法人税とは
法人税とは、会社をはじめとした法人が得る所得(利益)にかかる税金です。国に対して納税する「国税」の一つです。
個人や個人事業主が得た利益に対してかかるのが、所得税です。法人の場合、これにあたるのが法人税です。
所得税は「累進課税」という、所得額が増えると段階的に税率が上がる仕組みとなっています。
一方、法人税は所得が増えても税率は変わりません。
個人事業主としての所得がある程度増えた場合に、法人化した方が良いといわれる理由の一つです。
法人税の計算方法はこちらになります。
課税所得金額 × 法人税率
普通法人の場合、法人税率は一律23.2%です。ただし、資本金額が1億円以下の法人は、年間所得800万円以下の部分については15%となります。
また、所得に対して課せられるため事業が赤字の場合、税金は発生しません。
地方法人税とは
地方法人税とは、法人税と同様、会社の所得にかかる税金です。「地方」と名前がついていますが、国に対して納めます。
法人税と異なる点は、集めた税金の使われ方です。法人税が、国債費や社会保障関係など国の一般的な財政支出を賄うのに対し、地方法人税は各地方自治体に分配される交付金として使用されます。これは、地方都市の過疎化が進みつつあり、地方の財源不足の深刻化が進んできたことが原因です。この不均衡を是正するため、従来の法人住民税を見直し、一部を国で一括徴収し各地方に再配分することとなりました。
地方法人税の計算方法は次のとおりです。
法人税額×地方法人税率(10.3%)
法人住民税とは
法人住民税は、法人の事業所が所在する都道府県および市町村それぞれに納める税金です。「地方税」に当たります。個人が支払う「住民税」に該当すると考えて構いません。税率は地方自治体により異なります。
そのため、複数の地域に事業所を持つ会社の場合、支店や工場の所在地により納税額も変更します。
法人住民税は均等割と法人税割の二つからなります。
<均等割>資本金等の額や従業員数に応じて一定の金額が課せられるもので、所得の金額に関係なく発生します。
<法人税割>法人税額を元に計算するもので、計算方法は次のとおりです。
法人税額×住民税率
住民税率は自治体の公式サイトなどで確認できます。「都道府県民税率」と「市町村民税率」のそれぞれを確認しましょう。
均等割の金額も自治体により異なります。該当自治体の公式サイトなどで「都道府県住民税」と「市町村住民税」のそれぞれを確認しましょう。
なお、先述したように法人住民税の中の均等割額は、所得とは無関係に課せられます。そのため、例えその年赤字になった場合でも法人住民税の均等割については支払わなければいけません。
法人事業税とは
法人事業税は、法人の所得に対して課せられる税金です。法人税は国に納付しますが、法人事業税は都道府県が課す「地方税」となり、各都道府県に納付します。
法人事業税の使用目的は、法人が事業を行うにあたり利用する道路や消防、警察などさまざまな公共施設および公共サービスなどの、経費の一部負担です。
なお、法人事業税は、翌年の費用として算入できるという特徴を持ちます。これは、今まで解説した法人税や法人住民税とは異なる点です。
また、法人住民税と異なり、赤字であれば納付する必要はありません。さらに、法人住民税と異なり、納付先は都道府県のみとなります。市町村への納付は不要です。
資本金が1億円未満の法人事業税の計算方法は次のとおりです。
法人の所得の金額×法人事業税率
税率は所得の金額に応じて以下の通りとなります。
年400万円以下の部分:3.5%
年400万円超800万円以下の部分:5.3%
年800万円超の部分:7.0%
また、資本金が1億円以上の法人事業税は上記に外形標準課税が加算されます。
消費税とは
これまで解説した税金は全て直接税となります。
それに対し、これから解説する消費税は、間接税に該当します。間接税とは納税義務者と税金を負担する担税者とが異なる仕組みです。
消費税の納税義務者は企業、担税者が消費者となります。
普段の買い物時に消費者が支払う消費税はいったん事業者が預かり、まとめて国に納付しなければいけません。なお、事業者も他の事業者等から物やサービスを購入する際には、消費税を支払っています。そのため、消費者などから預かっている消費税から、既に他の事業者へ支払った消費税を差し引いたものを納税する形となります。
消費税の納税義務が発生するのは、前々事業年度の課税売上が1,000万円を超える場合です。つまり、一般的には事業開始から2年目までは、基準期間がないため免税対象です。ただし、次の条件に合致した場合、2年目から課税対象となります。
1.資本金1,000万円を超える
2.特定期間の課税売上が1,000万円を超える
3.特定期間の給料支払い額が1,000万円を超える
法人の場合、特定期間とは前事業年度前半の半年間のことです。
なお、1に関しては絶対条件ですが、2と3のどちらで判断するのかについては、納税者の選択に委ねられています。
消費税の計算方法は二種類。「原則課税」と「簡易課税」です。
「原則課税」の計算方法はこのようになります。
売上高×消費税率 ー 仕入高×消費税率
原則課税の場合、売上高と仕入れ高、それぞれの消費税額を計算しなければいけません。これは、かなり手間のかかる作業で、細々とした取引中心の中小企業などに対しては相当な負担となります。
そのため、前々年度の売上が5,000万円以下の場合に限り、計算方法が楽になる「簡易課税」の選択が可能です。ただし、期日までに必要書類を提出することが必須条件となる点は押さえておきましょう。
「簡易課税」の計算方法は次のとおりです。
売上高×消費税率 ー 売上高×消費税率×みなし仕入率
みなし仕入れ率は事業区分により異なります。
事業区分 | みなし仕入率 | 該当事業 |
第一種事業 | 90% | 卸売業 |
第二種事業 | 80% | 小売業など |
第三種事業 | 70% | 農業、林業、漁業、建設業、製造業など |
第四種事業 | 60% | 飲食店業など |
第五種事業 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業 |
第六種事業 | 40% | 不動産業 |
消費税は消費者から預かっている税金です。そのため、企業が赤字でも納税しなければなりません。
支払い時期
本記事で紹介した、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の納税時期は、全て事業年度終了後2か月以内と定められています。
例えば、事業年度の終了日が3月31日の場合、4月1日〜6月30日の間の納税が必要です。
また、法人税については20万円、消費税については48万円を超えると、翌事業年度に中間申告を行う義務が発生します。
まとめ
本記事では、会社にかかる税金の中から主要なもの5つについて解説しました。
それぞれの税金は、納税目的や計算方法などが異なります。一方で、納税時期は全て同じなので、資金繰りなどの準備が必要です。なかでも法人税や消費税に関しては事業が赤字でも納税しなければなりません。税金は支払いが遅れると延滞税などがかるため、気をつけましょう。必要に応じて専門家に相談するなどの対策を取ると安心です。