「教育訓練休暇給付金」が創設されました

労務お役立ち情報

「スキルアップのために休みを取りたいけれど、休んでいる間は給料が出ないと生活が大変で難しい…」と思っている労働者や、「スキルアップを目指す労働者を応援したい」と考えている事業主の方はいらっしゃいませんか?そのような方々のために、教育訓練期間中の生活費を保障する制度が令和7年10月1日から施行されました。
今回は、この制度についてご紹介いたします。

「教育訓練休暇給付金」とは

労働者が離職することなく、教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する制度です。

一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者(※)が、就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合、教育訓練休暇給付金の支給が受けられます。
※高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外です。

「教育訓練休暇給付金」の概要

教育訓練休暇給付金の受給要件

以下のⅠ、Ⅱの両方の要件を満たすことが必要です。

Ⅰ)休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
(原則、11日以上の賃金支払いの基礎となった日数がある月が算定の対象になります。 )
Ⅱ)休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
(過去、基本手当(失業給付)や教育訓練休暇給付金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金を受けたことがある場合、通算できない期間が生じる場合があります。 )
※ 離職期間があったとしても、12か月以内であれば離職前後の期間を通算できます。 (離職期間が12か月以内であっても失業給付等を受給していた場合には通算できませんのでご注意ください。 )

参考:教育訓練休暇給付金のご案内

受給期間・給付日数・給付日額

受給期間

給付を受けることのできる期間(受給期間)は、休暇開始日から起算して1年間であり、受給期間内の教育訓練休暇を取得した日について給付を受けられます。
(受給期間と所定給付日数の範囲内であれば、教育訓練休暇を複数回に分割して取得した場合であっても、教育訓練休暇給付金の支給を受けられます)

給付日数

給付日数は、雇用保険に加入していた期間(「教育訓練休暇給付金」の概要のⅡを参照)に応じて異なります。

給付日額

給付日額は、原則休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます。 (失業給付の算定方法と同じであり、休暇開始日の前日を離職日とみなして算定します)
※賃金日額のほか、年齢と雇用保険に加入していた期間によっても変動します。

参考:教育訓練休暇給付金のご案内

「教育訓練休暇給付金」の支給対象となる休暇

Ⅰ)就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇。

Ⅱ)労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇。
教育訓練以外の目的を含む休暇制度に基づく休暇であっても、教育訓練を受講するための休暇であれば該当します。また、事業主や上司からの案内がきっかけであっても、本人の意思で取得を希望する休暇であれば該当します。

Ⅲ)次に定める教育訓練等を受けるための休暇。
・ 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等
・ 教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
・ 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留 学、海外大学院での修士号の取得等)

「教育訓練休暇給付金」に関する注意事項

注意1 教育訓練休暇給付金を受給した場合、被保険者期間はリセットされます。
休暇開始日より前の被保険者期間や雇用保険に加入していた期間はリセットされ、通算できなくなるため、一定期間は失業保険などの雇用保険制度に基づく給付金を原則受給できません。(ただし、育児休業給付金及び介護給付金には影響なし)

注意2 受給期間を過ぎた場合、教育訓練休暇給付金の支給は受けられません。
教育訓練休暇給付金の受給期間は、休暇開始日から起算して1年間です。1年以上の教育訓練休暇を取得し、教育訓練を受講する者について、所定給付日数が残っていたとしても、受給期間が過ぎた場合は給付金の支給は受けられません。

まとめ

今回は「教育訓練休暇給付金」についてご紹介しました。
社員のスキルアップを支援することにより、社員のモチベーション向上・定着率アップ、さら企業の競争力強化にも繋がります。
ただ、この制度は少々ハードルが高く、従業員から取得の申し出があった場合でも、制度を利用するには就業規則への記載が必要となりますので、ご留意ください。
ぜひこの機会に、教育訓練休暇給付金制度を活用して、社員のスキルアップを支援しましょう。