みなし残業とは?違法にならないための正しい基礎知識と導入手順

労務お役立ち情報

みなし残業という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのような制度なのか、あまりよく分からない人も多いのではないでしょうか。

そこで、みなし残業の概要とメリットやデメリット、また実際にみなし残業を導入する際の手順についてご紹介します。

みなし残業とは

まずみなし残業とは具体的にどのような制度なのか、詳しく解説します。

みなし残業の概要

みなし残業とは、分かりやすい言葉で言うと固定残業代制のことで、基本給の中に一定程度の残業代が含まれている給与形態のことです。

これは、一定程度の残業をした場合にも追加の残業代を支払う必要がないということですが、逆に残業がまったくなかった場合にも同じ額の基本給を支払う必要があります。

また、この基本給に含まれる残業代には次の3つの割増賃金を含むことができます。

【みなし残業代として基本給に含むことができる割増賃金】
(1)1日8時間、週40時間を超える時間外労働に対する割増賃金
(2)深夜22時~早朝5時の間の労働に対する割増賃金
(3)休日出勤の労働に対する割増賃金

みなし残業が適法とされるための条件

みなし残業は違法だと勘違いされることもしばしばありますが、一定の条件を満たしていれば適法な制度として導入することができます。

このみなし残業が適法とされるための条件は次の3つです。

【みなし残業が適法とされるための条件】
(1)みなし残業について会社の就業規則に定め、労働条件通知書にも明記し、従業員へも周知している
(2)みなし残業代を含んだ基本給について、基本給部分と残業代部分がはっきりと分けられている
(3)基本給に含まれる残業時間数を超えた労働時間については、追加で残業代を支払う

みなし残業に含まれる残業代と含まれない残業代

みなし残業として基本給に含まれる残業代について、追加で残業代の支払いが必要になることもあると説明しましたが、どこまでの残業が基本給に含まれるのでしょうか。

これについては、一定の要件の中で会社が個々に決定することができ、例えば月40時間までの残業代については基本給に含むという会社もあれば、月10時間までという会社もあります。

このみなし残業を決定する際には、次の4点に注意しておきましょう。

【みなし残業の決定について注意すべきこと】
(1)みなし残業代に含まれる残業時間数を決定する
(2)みなし残業代に含まれる残業時間数は、月45時間以内とする(法律上の残業の上限)
(3)みなし残業代に深夜労働や休日労働の割増賃金も含むのかを決定する
(4)みなし残業代を含めた月給が、労働基準法に定められた最低賃金を下回らないようにする

みなし残業導入時の正しい残業代の計算方法

先で説明したように、みなし残業を導入しているからといって、残業代の計算をまったくしなくていいというわけではありません。

みなし残業代を含む残業時間数は会社ごとに自由に決定できるので、その時間数を超えた残業については別途残業代の支払いが必要です。

また、みなし残業として設定できる残業時間数は最大月45時間ですが、36協定に特別条項を設けることで、それ以上の残業が可能となる場合もあります。

さらに、みなし残業に深夜労働や休日労働の割増賃金を含まない場合には、こちらも別途支給が必要です。

みなし残業を導入するメリット

みなし残業を導入することで得られるメリットについて紹介します。

無駄な残業がなくなり生産性が上がる

みなし残業の場合、残業をしてもしなくても基本給が変わらないため、従業員からするともちろん残業をしたくないという気持ちが大きくなるでしょう。

そのため、従業員自身が自然と残業をしなくて済むような働き方へと改善していきます。

これにより無駄な残業がなくなり、生産性の向上へと繋がります。

残業を承認したり残業代を計算したりする手間がなくなる

残業申請の承認や残業代の計算には意外と手間や時間がかるので、これらの手間がなくなることは大きなメリットだと言えます。さらに「残業をする=急ぎの業務がある」ということなので、そのようなときには残業申請をしたり承認したりする時間さえも惜しいものです。

そもそも残業申請は、無駄な残業を削減し生産性を向上させるためなどに行う、会社独自のルールです。そこで、みなし残業を導入することにより、先で説明したように従業員自身が自ら無駄な残業の削減を図り、自然と生産性が上がります。また、みなし残業の範囲内の残業に限ってこれらのルールをなくすことで、従業員自身や承認者の負担も減らすことができます。

人件費の変動がなくなり正確な資金繰りができる

会社にとって資金繰りは、先の見通しを立てるための大切なものですが、残業の増加によって人件費が増加するとその予測に狂いが出てしまいます。この場合にみなし残業を導入することで、一定の残業までは毎月定額の支払いとなり、人件費の変動をなくすことができます。

みなし残業を導入するデメリット

みなし残業を導入することで発生するデメリットについて紹介します。

もともと残業の少ない企業は人件費が上がる

もともと残業が少ない会社がみなし残業を導入すると、これまでと同じ労働時間に対してこれまでより多い賃金の支払いが必要となります。

ですので、自社の現在の残業実態やメリット、デメリットをふまえた上で、みなし残業を導入するかの検討が必要です。

残業必須のイメージによって求人時に敬遠されがちになる

みなし残業についてあまりよく知らない人も多いため、みなし残業というと残業必須のイメージをもたれてしまい、求人時には敬遠されることもあります。

また残業代が基本給に含まれていると、なんとなく損だと感じてしまう人もいるので、自社の残業実績を公表したり、残業がない場合にも基本給は変わらない旨の記載をしたりするといいでしょう。

また深夜労働や休日労働について割増賃金が別途支給される場合には、その点も記載しておくようにしましょう。

従業員の誤った理解で意欲低下やサービス残業をまねく

先の求人時と同様に、自社の従業員についてもみなし残業について、正しい理解を求める必要があります。

残業をしても残業代がつかないというマイナス部分だけの理解をしていた場合、意欲の低下や業務の質の低下を招きかねません。また、みなし残業に含まれる残業時間数の上限を知らなかった場合、どれだけ働いても残業代は付かないからと残業の申告をせず、サービス残業を招く可能性もあります。

みなし残業を導入する手順

実際にみなし残業を導入するにあたっての手順について紹介します。

みなし残業の範囲を細かく決める

みなし残業は法律で定められた制度ではないため、後々のトラブルを回避するためにも、就業規則で細かく範囲を決めておくことが大切です。例えば、みなし残業に含まれる残業時間数を定めるだけでなく、みなし残業代に深夜労働や休日労働の割増賃金も含むのかなど、様々なケースを想定して細かく決めておくようにしましょう。

就業規則や労働条件通知書へ記載する

みなし残業を導入する場合には、次の4つの内容を就業規則へ記載する必要があります。

【就業規則への記載事項】
(1)割増賃金の支払いとして、みなし残業代が支給されること
(2)みなし残業時間数を超えた労働に対しては、超過分を別途支給すること
(3)時間外労働、深夜労働、休日労働のうち、みなし残業代に含まれる割増賃金のそれぞれの内訳
(4)毎月の給与明細へ、みなし残業代の金額を記載する旨

また個々の従業員に通知する労働条件通知書へも、みなし残業の時間数や金額、含まれる割増賃金の種類などについての記載が必要です。

求人を出す場合には法律で定められた事項を明記する

みなし残業を導入している場合、求人時には職業安定法によって定められた、次の事項を記載する必要があります。

【求人時に記載すべき事項】
(1)みなし残業代を含まない基本給の額
(2)みなし残業代の金額とそれに含まれる残業時間数
(3)残業の有無にかかわらず、みなし残業代を支給する旨
(4)みなし残業時間数を超えて残業した場合には、超過分の残業代を別途支給する旨

給与明細にはみなし残業代と残業時間数を記載する

みなし残業を導入している場合には、みなし残業代を含まない基本給とみなし残業代を給与明細へ分けて記載する必要があります。

また、実際に残業をした時間数についても記載しておくようにしましょう。

みなし残業を導入した後に注意しておくこと

みなし残業を導入した後は、みなし残業の範囲を超えたサービス残業が行われていないかに注意し、正しい残業時間を把握するようにしましょう。またサービス残業を防ぐためにも、みなし残業について社内での定期的な周知と、サービス残業をさせない社風づくりも大切です。

まとめ

みなし残業を導入することによって、残業代の予測が明確にできて資金繰りの予測がしやすくなったり、従業員自ら残業を減らすために行動し生産性が上がったりするなどのメリットがあります。

しかし、従業員が誤った理解をしているとサービス残業を招いたり、意識の低下にも繋がったりします。

また、みなし残業は法律で定められた制度ではないため、後々のトラブルを回避するためにも、みなし残業に含まれる範囲などについて、就業規則で細かく定めておくようにしましょう。

キャシュモでは、みなし残業の運用を含め、就業規則の作成や各種の労務に関する制度の導入や運用のお手伝いをさせていただきます。ぜひ一度ご相談ください。

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