最低限知っておくべき働き方改革関連法に関する法律知識

労務お役立ち情報

2019年4月に働き方改革関連法が施行され(中小企業は一部猶予)、中小企業にとって、より厳しい労務管理が求められるようになりました。今月号では、中でも早急に対応が必要なケースとして、【全ての労働者の時間把握義務】について解説します。

働き方改革の本質 <昭和的な働き方からの脱却>

社会状況や価値観の変化に伴い、長時間労働をはじめ、従業員が全人格をかけ企業に奉仕するような働き方はもはやスタンダードではなくなりました。同時に少子高齢化による労働者不足、働き方ニーズの多様化、人件費の高止まり等、様々な課題を克服するために、多様な人材の価値を最大化する働き方と、それを可能にする企業の意識変革が求められています。様々な「制約」を抱える人材(育児従事者・介護従事者・高年齢者・障害者等)の「働く環境」を整え、持続可能な社会を目指すことが、「働き方改革」の本質と言えます。

最低限知っておくべき法律知識

【年次有給休暇 5日付与】→年休は取るものから取らせるものへ、その趣旨が変化
(青山通信2・3月号参照)
【全ての労働者の時間把握義務】→管理職の時間把握が肝
【労働時間の上限規制】→中小企業は2020年4月1日施行

※今月号では、②について解説します。

全ての労働者の時間把握義務 <2019年4月1日施行(改正安衛法66条の8)>

労働時間の把握は、単に残業代の計算に必要だからというだけでなく、現在は、労働者の健康管理という側面がより重要であると考えられています。この流れを受け、使用者は労働時間を客観的に把握し、①週40時間を超える労働時間が月に80時間以上、②疲労の蓄積、③労働者本人からの申出があった場合には、医師による面談指導を行わせなければならなくなりました。

この制度は、高度プロフェッショナル制度適用対象者※を除くすべての労働者が対象となります。特に管理監督者については、時間外・休日残業の割増賃金の支払い対象ではなかったため、これまで労働時間の把握が実質行われていなかったケースも多いのではないかと思われます。しかし、深夜残業は支払い対象であったため、労働時間の把握は当然なされているはずであるという前提であり、未対応の事業所については、管理監督者を含め、すべての労働者の時間把握義務への対応が急務となっています。
(※高度プロフェッショナル制度適用対象者は100時間超)

客観的方法による労働時間把握の義務化

これまで、労働時間の把握については法的根拠があいまいで、自己申告制などによってが不適切に運用されていることが問題視されていました。こうした現状を踏まえ、改正労働安全衛生法では、客観的方法による労働時間把握の義務化が盛り込まれました。具体的には、「全ての労働者」(管理監督者を含む)の労働時間の状況把握は「客観的なもの」による必要がある、とされています。

<客観的な方法>
・タイムカード、ICカード、パソコンのログオン・ログオフ
・自己申告による場合は、直行直帰などやむを得ず客観的な方法により把握しがたい場合
に限り以下の留意点を遵守すること
① 労働者に対する十分な説明
② 管理監督者による十分な説明
③ 実態調査、特に在館時間との乖離に注意

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これからの時代、従業員の健康管理は経営者の義務であり、それは労働訴訟等のリスク回避として経営者や会社を守ることにも繋がります。紙の出勤簿やエクセルシートなどで、労働者の自己申告に任せている場合は、どのように客観的な労働時間の把握を実現していくかを考えなければなりません。安価で使いやすい勤怠管理システムも多くありますので、今回の法改正をどのように現場に落とし込むか、システムの導入も含めて検討しましょう。

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