【税務Q&A】1年分の前払家賃は、当期の損金として処理することが認められる?

税務Q&A

当社は、年1回3月決算法人ですが、当期末近くになり、A社所有の新築ビルに事務所を移転しました。
ところで、このビルの家賃は1年分前払になっていますので、入居時に3月分の日割家賃のほかに4月から翌年3月までの家賃を支払っていますが、この家賃の全額を当期の費用とすることは認められないでしょうか?

貴社が支払った家賃のうち4月から翌年3月までの前払家賃についても、継続適用を条件に当期の費用として処理することが認められます。

解説

前払費用とは一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その支出した事業年度終了の日においていまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。原則として支出した事業年度の損金の額には算入されず、未経過費用として資産に計上することとされています。

しかし、前払費用として資産に計上すべきものであっても、その支払った日から1年以内分に相当する金額の支払をし、これをその支払った日の属する事業年度の損金とするという経理基準を継続して適用することとしている場合は、その経理が認められることとなっています。

ご質問の場合、その前払家賃は、3月分の日割り家賃が含まれているため1年を超える期間分の支払額となっていますので、この取扱いの適用は認められないとも考えられますが、1年を超える期間分に相当する支払額が1年を数日程度超える期間に係るものであるときは、その支払額は「1年以内に相当する金額」に該当するものとして取り扱って差し支えないと考えられます。したがって、貴社が支払った1年分の前払家賃については、継続適用を条件に当期の損金として処理することが認められます。

なお、前払費用で「通常支払うべき日」前に支払ったものにつき、この取扱いの適用があるか否かについては、原則として、契約または慣習等による支払期日が到来した日以後に支払った前払費用に限り、この取扱いの適用があるものと解されています。
この場合、次に掲げるものは「通常支払うべき日」に該当するものと考えられます。
① 契約または慣習により一定の支払期間がある場合には、その支払期間
② 契約または慣習により一定の履行期の定めのある場合には、その履行期
③ 契約または慣習による履行期の定めがない場合には、履行の請求を受けたとき