変形労働時間制とは、労働時間を月、年単位で計算することで業務の繁閑を調整し、年間の総労働時間の短縮を目的とする制度です。
年間を通じて、業務量に繁閑のある業種は、1年単位の変形労働時間制を導入することで長時間労働を抑制し、残業代を抑える効果があります。導入するには、労使協定を結び就業規則に明記するなど、1年単位の変形労働時間制には様々なルールがあるので確認していきます。
1年単位の変形労働時間制について
1年単位の変形労働時間制とは、業務に繁閑のある会社において、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定することにより効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的とした制度です。
1ヶ月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、業務の繁閑に応じ労働時間を配分することができます。
労使協定の締結
以下の事項を、労使協定において定める必要があります。
対象労働者の範囲
法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。
対象期間及び起算日
対象期間は、1ヶ月を超え1年以内の期間に限ります。
特定期間
対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができます。特定期間では連続して労働させる日数の限度が緩和されます(最大12日間)
労働日及び労働日ごとの労働時間
労働日及び労働日ごとの労働時間は、対象期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないように設定しなければなりません。
労使協定の有効期間
1年単位の変形労働時間制を適切に運用するためには対象期間と同じ1年程度とすることが望ましいです。
労働日数及び労働時間の限度
対象期間における労働日数の限度(対象期間が3か月を超える場合に限る)
対象期間における労働日数の限度は、1年当たり280日です(対象期間が3か月を超え1年未満である場合は、次の式により計算した日数(端数切り捨て)です)。
対象期間における1日及び1週間の労働時間の限度
1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間です。ただし、対象期間が3か月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
①労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3週以下。
②対象期間をその初日から3か月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下。
対象期間における連続して労働させる日数の限度
対象期間における連続して労働させる日数の限度は6日です。
特定期間における連続して労働させる日数の限度は、「1週間に1日の休日が確保できる日数」です。つまり、最も長い連続労働日数は12日ということになります。
対象期間における総所定労働時間の限度及び必要休日日数
対象期間を平均して1週間当たりの労働時間を超えないためには、対象期間中の総所定労働時間を次の計算式による時間内に収める必要があります。
割増賃金の支払い
次の時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。
1.労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
2.労使協定で1週間40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間
3.対象期間の法定労働時間総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間(1.2で時間外労働となる時間を除く)
まとめ
上述のほか、1年単位の変形労働時間制を導入する場合においても、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練を受ける者その他特別の配慮を要する者については、必要な時間を確保できるよう配慮しなければならないこととされています。また、対象期間中の始業・終業時刻等を就業規則に定め、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
細かくルールが定められていて複雑な制度ではありますが、ルールを守り適切に運用すれば、年間の労働時間の削減、残業代の抑制が期待できます。働き方改革の流れもあり導入する企業が今後増えていくことでしょう。多様な働き方を選べる取り組みとして変形労働時間制の導入を検討してみてはいかがでしょうか。