「プロパー融資とか保証付の融資とか聞いたことあるけど、どれも同じじゃないの」とお思いの経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、資金調達できればどれも同じとお考えになるのも理解できます。
ここでは、プロパー融資について理解していただくべく、プロパー融資とは何か、保証付融資との違いについて、そしてプロパー融資のメリット、デメリットについて解説いたします。
プロパー融資とは?
プロパー融資とは、銀行など市中金融機関が独自で審査し融資する形態であり、保証をつけずに融資をするため、債務者が債務不履行に陥った場合は損失が発生することになります。
それゆえに厳格な審査が行われます。また、次の2点について銀行など市中金融機関は念頭に入れて審査します。
融資の5原則
銀行など市中金融機関は、融資を実行できるのかどうかを
・公共性の原則
・成長性の原則
・安全性の原則
・収益性の原則
・流動性の原則
に照らし合わせて判断します。これらを融資の5原則といいます。
公共性の原則
銀行など市中金融機関は資金の円滑な供給を行う重要な役割を担っており、利益ばかり追求するのでなく、公共的役割を果たすべく融資に取り組む必要があります。また、反社会勢力に資金が流れていないか注意する必要があります。
成長性の原則
融資により企業が成長・発展し、同時に銀行など市中金融機関も成長・発展しなければなりません。
安全性の原則
融資原資は預金であるため、預金者保護の観点から融資資金は確実に回収される必要があります。そのためにも、資金使途や返済原資、企業の返済能力や安全性に問題がないかについて十分に確認しなければなりません。
収益性の原則
銀行など市中金融機関は、公共性が強いとはいえ営利企業であるので、収益をあげる必要があります。そのためには融資残高の増加や貸出金利を高くするなどしなければなりません。金利においては、企業の信用力や担保、保証などに応じて金利に反映させて収益の確保に努めます。
流動性の原則
産業界からは、融資の門戸を常に広く開き、多くの企業の資金需要に応えることが望まれているため、融資の調達原資である預金量に見合った貸出資産の流動性を維持できるのかをチェックします。
自己査定
自己査定とは、銀行など市中金融機関が信用リスクを管理するための手段であり、また適正な償却・引当を行う準備作業で年に2度(12月末、3月末)行います。金融機関の貸出先を返済状況、決算状況を踏まえて5つのカテゴリー(正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先)に区分し、区分に応じて債務者の貸出金をⅠ(非)分類~Ⅳ分類に分類してそれぞれの金融機関は分類金額を算定して監督官庁である金融庁に報告します。
中でも、「赤字」「債務超過」においてはシビアに査定されるしくみになっており、例えば、毎月滞りなく返済履行されている企業であっても、決算状況が芳しくなければ正常先と区分されない場合もあり、貸出先の区分について銀行など市中金融機関は、増額融資を行わない場合があります。
プロパー融資と保証付融資の違い
銀行など市中金融機関が取り扱っている事業融資には、プロパー融資と保証付融資とがあります。
資金調達する企業側にとっては同じように思われますがいくつかの違いがあります。その違いについて説明します。
借りやすさ
プロパー融資は、通常3期分の決算書を徴求して売上や利益、その他勘定科目の動きを審査して融資が可能であるかを判断します。ですので、創業して間もない企業にとっては審査の対象とならない場合があります。
一方、信用保証協会保証融資は、信用保証協会ごとで名称は異なりますが、開業資金融資など、創業して日の浅い企業であっても審査対象となり、資金調達が可能となります。
金利
プロパー融資では、市場情勢を勘案して金利設定がなされている金融機関が大半であるため、信用保証協会付融資(一般融資)に比べて金利が低くなっています。
ただしプロパー融資以外でも、各地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して資金目的・用途を決める「制度融資」は固定金利で低金利であるため事業内容に応じて利用することが可能です。
借入限度額
信用保証協会保証融資では、1企業あたり上限が先述の「制度融資」を含め2億8千万円と定められています。また、信用保証協会保証を利用できる企業の規模(資本金、従業員数)においても上限があります。一方、プロパー融資においては、制度融資や信用保証協会融資とは違い、限度額が無いため、金融機関の裁量によって融資金額をきめることができます。
プロパー融資のメリット
プロパー融資と保証付融資の違いについて説明しました。では、プロパー融資におけるメリットとはどういったものでしょうか。
融資額の上限がない
企業の決算実績、及び成長性など銀行など市中金融機関が独自に審査し融資するので、信用保証協会保証融資とは異なり金融機関の裁量で融資金額に制限がなく融資することが可能です。
保証料がいらない
信用保証協会保証の融資では保証料(0.35%~2.2%)が必要となりますが、プロパー融資においては保証料は必要でなく、金利のみの支払いとなるため、コストを抑えて資金調達することができます。
信用力が上がる
企業がプロパー融資を受けているということは、企業が銀行など市中金融機関に収益性や成長性などを見込まれた結果であることを意味しています。企業は融資による資金調達により、事業の発展においてプラスに働くものと考えられます。
プロパー融資のデメリット
では、銀行など市中金融機関が行うプロパー融資についてのデメリットとはどのような点があるのでしょうか。
主に3点あります。
審査が厳しい
市中金融機関は先に述べた融資5原則(公共性の原則、成長性の原則、安全性の原則、収益性の原則、流動性の原則)やそれぞれの金融機関の自己査定基準に即する融資判断をするので保証付融資に比べて審査は厳しくなります。
保証人や担保を求められる(場合がある)
銀行など市中金融機関は融資した資金が回収できるかどうかを審査するので、万一回収不能となれば金融機関は損失を計上しなければならないので、回収できない場合を想定して企業に対し保証人、あるいは担保を求めることがあります。
保証人
金融機関は企業の経営者を連帯保証人として徴求することがほとんどですが、一定の経営状況であれば「経営者保証に関するガイドライン」に基づいて、経営者の保証がなくても融資を受けることは可能です。
また、保証人保護の観点から、事業に関わっていない第三者を保証人とする場合、「保証意思宣明公正証書」を公証役場にて作成する必要があります。
担保
主に不動産や自行預金を担保として求める場合があります。不動産、特に土地については相続税算出に使われる国税庁が発表している路線価表を元に計算されるので、時価の半分くらいの評価であることがほとんどです。
返済期間が短い傾向
融資5原則の「流動性の原則」により、銀行など市中金融機関は多くの企業に資金供給することにより事業の発展に応えることを考えている観点から特定の企業に対してのみ長期に融資することを望んでいません。ですので、企業が考えている期間の融資を受けることができない場合も発生します。
まとめ
プロパー融資について銀行など市中金融機関がどのような考えで審査をしているのか、保証付融資との違いについて、そしてプロパー融資のメリット、デメリットについて説明してきました。
審査など厳しい面もありますが、企業が真摯に向きあって事業活動を行えばプロパー融資を受けて事業の拡大を図ることは難しいことではありません。
とはいえ、経営者ひとりですべてを把握、認識することは容易いことではないかもしれません。
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