中小企業が抱える新卒採用の課題と成功のポイントとは?

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昨今、少子化や売り手市場、さらにはコロナ禍など、中小企業の新卒採用を取り巻く現状は厳しいものがあります。中小企業の経営者様の中には、新卒採用が上手くいかずに苦戦している方も多いのではないでしょうか?

本記事では、中小企業が新卒採用に関して抱えている課題を明確化し、改善に向けてのポイントや施策について紹介します。

中小企業を取り巻く採用市場

冒頭で中小企業を取り巻く現状は厳しいものがある、とお伝えしました。肌感覚で感じている方も多いかと思いますが、そもそも現在の新卒採用市場はどのような状況なのでしょうか?学生へのアンケート結果を元に紐解いていきます。

企業選びのポイントに「安定している」が急浮上

株式会社マイナビが行った「マイナビ 2022年卒大学生就職意識調査」では、学生の企業選びのポイントに変化が現れています。

前年と比べて、TOP3の項目は変わっていません。しかし「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」「給料のよい会社」が共に減少した一方、「安定している会社」が42.8%(前年比+4.5pt)と大きく上昇しています。

これは2001年卒調査以降で最も高い割合になりました。長引くコロナ禍の中で安定を求める学生が増えてきていることが伺えます。

「大手志望」への揺り戻しが起きている

学生が安定を求める傾向は、求人倍率により顕著に現れています。

中小企業から大手企業志望への揺り戻しが起きており、従業員規模300人未満の企業を希望する学生は、前年比35.7%減少しました。その結果、従業員規模300人未満の企業の求人倍率は5.28倍(前年比+1.88pt) にまで上昇し、従業員規模5000人以上の求人倍率の差は4.87ptに広がっています。

コロナ禍が長引く限り、学生が安定を求めて大手企業を志望する流れは止まらず、中小企業にとってはより苦しい状況だと言わざるを得ません。

出典:「第 38 回 ワークス大卒求人倍率調査(2022 年卒)」(リクルートワークス研究所)

なぜ苦戦するのか?中小企業が抱える課題

この厳しい市場感の中で、中小企業が採用成功を目指すにはどうすれば良いのでしょうか?まずは抱える課題を明確にしていく必要があります。

エントリーが集まらない(母集団形成)

まず一つは、そもそもエントリーが集まらないというケースです。

大手企業に比べると知名度の差で負けてしまい、母集団形成がままならないこともあるでしょう。また求人サイトに募集を掲載したとしても、数万とある企業の中で埋れてしまうことも多いのではないでしょうか?

中小企業が多くの母集団を集めようとすると、コストも莫大となり、効率的とは言えません。自社に合った人材像を明確化し、ターゲットにピンポイントで訴求していく「量から質」の母集団形成を図る必要があります。

選考中や内定後の辞退(歩留まり)

エントリーが来た後も油断できません。選考中や内定後の辞退も大きな課題の一つです。

そもそも、学生の多くは複数社の選考を受けていることが当たり前であり、エントリー後はいかに自社への志望度を高めていくかが大切になってきます。

どのステップで離脱する割合が高いのかを把握し、必要に応じた施策を講じる必要があります。

また内定を出した後は、内定者の不安を解消するフォローも大切です。初めて社会に出る学生は不安に感じていることも多いので、一つ一つ不安を解消していく事が、内定辞退の防止に繋がります。

採用コストがかけられない(予算・マンパワー不足)

大手志望の学生が増えてきているということをお伝えしましたが、大手企業との差はそれだけではありません。どうしても中小企業がかけられる予算には限界があり、大手企業と比べると大きな差があります。

また採用コストは経費だけでなく、採用に関する人件費も含まれます。中小企業では採用活動に動員できる人数も限られ、その中でも採用活動以外の業務を担っているなど、厳しいものがあるのではないでしょうか?。

ここでも大手企業と同じように戦うのではなく、いかに効率的にピンポイントの採用を行っていくかが採用成功の重要なポイントです。

採用成功のために中小企業が意識するべきポイント

自社が抱える課題を明確にしたところで、ここから採用成功に向けて意識するべきポイントや施策について紹介していきます。

採用ペルソナの明確化

まず、最も重要だと言えるのが「採用ペルソナ」を設定することです。

採用ペルソナとは、元々マーケティング用語であり、自社が求める学生像のことを指します。採用ペルソナを設定する理由は、多くの母集団を集めるのではなく、絞ったターゲットから確実にエントリーを獲得する事です。居住地、学校、経験や生活スタイルまで、本当に実在する1人の学生像を作り上げ、その人物に向けた訴求を打ち出しましょう。

その結果、ターゲットを絞った母集団形成が可能なだけでなく、採用コストを抑えた効率の良い採用が可能になります。

自社のペルソナに適したアプローチ

採用ペルソナを設定した後は、そのペルソナに向けたアプローチを考えます。

その人物が使いそうな求人媒体はどれでしょうか?居住地や学校層によっても使う求人媒体は変わってきます。媒体に求人を掲載する際にも、「設定したペルソナに刺さるような内容はどういったものか」という視点で考えるようにしてください。例えば、ペルソナの要素に「体育会系」があるなら、実際に体育会系出身で現在活躍している社員の声やエピソードを記載して、入社後の活躍イメージを抱かせるのも良いでしょう。

またダイレクトリクルーティングのような、求める人物像を検索した上で直接スカウトを送る手法は、ピンポイントに訴求する採用を行っていく上で適していると言えます。

志望度が上がる選考フローの構築

採用ペルソナに適した学生のエントリーを集める事が出来ても、辞退が多くては採用成功とは言えません。

多くの企業は内定を出した後に志望度を高めようと考えますが、選考中にいかに学生を惹きつけるかということも重要になってきます。面接時に冷たい印象を感じさせる、対応が遅い、などは大幅に志望度を下げる要因となるので注意してください。

またその学生に適した選考を行うのも一手です。例えば、自社に入社した後にどのように活躍できるのか、というイメージが湧いていないのなら、志望している職種や学生と似た経歴を持つ社員との座談会を設けるのも良いかもしれません。

母集団を大量に形成しない代わりに、エントリーしてくれた学生一人ひとりに合った選考フローを構築するのが有効的です。

学生の不安を解消する内定者フォロー

半分以上の学生が複数社から内定を貰うことを考えても、内定を出して終わりではありません。

学生は初めて社会に出ることから、不安を抱えている事が多いです。この不安を解消していく事が、内定者フォローの一番重要なポイントになります。内定者が抱える不安として多いのは、「入社後に活躍できるのか」「ついていけるのか」という能力的なものと、「職場の人間や同期と上手くやっていけるのか」という人間関係的なものが挙げられます。

自身の能力に対する不安については、希望者に対して内定者インターンを開催する、実際に入社後はどのような業務を行うのか具体的に提示してイメージを持たせる、などが有効です。特に内定者インターンや研修会は、同期を知り合う機会にもなるので、人間関係に対する不安を払拭させる事にも繋がります。ただし、強制参加や拘束期間が長いものは学生の負担にもなりかねないので注意してください。

また他にも先輩社員を交えた懇親会を開催するなどは、事前に社内の雰囲気や人間を知ってもらういい機会になります。

まとめ

今回は中小企業を取り巻く現状や課題、採用成功に向けて意識するべきポイントについて解説しました。

確かに新卒採用市場は中小企業にとっては向かい風と言えます。しかし考え方や採用手法を見直す事で改善されることもあるはずです。「量から質の母集団形成」「学生の個に沿った採用」を意識することで、採用成功に繋がれば幸いです。

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