当社は、飲食店を経営していますが、新型コロナウイルス感染症の影響による休業要請や営業時間短縮により、売上が50%以上減少し、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況となってしまいました。そのため、当社では、役員給与の減額を行うこととしました。
法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもあると聞いています。
そこで、当社のような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与として認められるでしょうか。
経営状況の著しい悪化による減額改定として、定期同額給与に該当します。
解説
役員に対して支給する定期同額給与について事業年度の中途での減額改定が行われた場合において、事業年度開始の日から3ヶ月経過後であっても、その改定が次に掲げるものについては、定期同額給与に該当し、原則として損金の額に算入できます。
ただし、その改定前の各支給時期(その事業年度に属するものに限ります。)における支給金額が同額である定期給与であり、かつ、その改定以後の各支給時期(その事業年度に属するものに限ります。)における支給額が同額である定期給与であることが必要です。
イ. 当該事業年度において当該法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(「臨時改定事由」)によりされたこれらの役員にかかる定期給与の額の改定
ロ. 当該事業年度において当該法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(「業績悪化改定事由」)によりされた定期給与の額の改定
例えば、次のような場合の減額改定は、通常、ロの「業績悪化改定事由」による改定に該当することとなると考えられます。
① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
したがって、今回のケースが、上記「ロ」の「業績悪化改定事由」に該当すれば、減額前の各支給時期が定期同額、減額後の各支給時期も定期同額ですから全部が定期同額給与として認められることになります。
今回のケースのように、業績が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この「業績悪化改定事由」に該当するものと考えられます。
なお、経営の状況は悪化したものの「著しい悪化」までには該当しない場合に、事業年度中途において減額改定を行うと、通常その事業年度における定期給与の支給額の全額が定期同額給与に該当しないこととなります。
ただし、当初定期同額給与として支給していた給与について減額改定を行い、減額後もその支給時期における支給額が同額である定期給与として給与の支給を行っている場合は、減額改定前は、減額後の定期同額給与の額に上乗せ支給を行っていたものであるともみられることから、減額改定前の定期給与額のうち減額改定後の定期給与の額を超える部分の金額のみが損金不算入として取り扱われます。