著作権とは?企業経営で著作権を侵害しないために知っておくべき基本の知識

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著作権とは

著作権とは、著作権法に規定される権利で、人が思想や感情を創作的に表現したもの(著作物)を保護し、無断利用などから守るための権利です。

特許権や意匠権などの産業財産権は産業の発展を目的としていますが、著作権の目的は文化の発展にあります。

著作物を生み出した作者(著作者)の権利を守りつつ、著作物の公正な利用を図ることで文化を発展させようというものなのです。

著作権の対象である著作物とは

それでは著作権の対象である著作物とはどのようなものなのでしょうか。

著作権法では、著作物を「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」としています。

具体的には小説や論文などの言語的表現物、曲や歌詞などの音楽的表現物、絵画やイラスト、写真、映像など美術的表現物です。

元となる著作物があり、それを翻訳したり映像化したりしたものは二次的著作物として、百科事典や辞書、新聞などのような個々の著作物を独自にまとめたものは編集著作物として保護されています。

そして実はコンピュータプログラムやデータベースも著作物に該当する場合があり、その場合、著作権法の保護対象です。

著作者の権利と著作隣接権

著作権は、「どこかに登録して発生する権利」ではありません。

特別な手続きは必要なく、著作物の創作と同時に自動的に発生するものです。

そして著作物をめぐる権利には「著作者の権利」と「著作隣接権」があります。

著作者の権利

著作者の権利には、著作物から生まれる財産的な利益を守る「著作権」と、著作物に表れる著作者の人格や名誉を守る「著作者人格権」があります。

著作権は著作物を創作した時から著作者の死後70年権利が継続します。著作者人格権はその権利の性質上、著作者が死亡すると消滅します。

著作権

著作権は、著作物を利用する方法ごとにより細かい権利が定められています。

例えば、上映権及び演奏権、複製権、公衆送信権、展示権というような形です。

著作者は、上述 したような自身の著作物を利用する権利を独占しており、著作物が生み出す財産的な利益を守ることができます。

著作物を著作者以外が利用する場合は、基本的にそれぞれの権利ごとに著作者の許可を得ることが必要です。

著作者人格権

著作者人格権とは、著作者の人格的な利益を保護するものです。

人格的な利益とは、自身の思想や感情を表現している著作物の無断利用や、内容の改変を防ぎ、著作者の精神的な被害を生じさせないことをいいます。

そのために著作者には著作者人格権として、公表権、氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権が認められているのです。

公表権

自分の著作物を無断で公表させない権利です。

つまり著作者には自身の作品を公表するか否か、公表する場合、いつどうやって公表するのかなどを決める権利があります。

氏名表示権

公表する著作物に著作者の名前を表示するか、表示する場合、実名を表示するかを決める権利です。

他人が著作者の許可を取り著作物を公表する場合でも、著作者は自分の名前を表示するよう求めることができます。

同一性保持権

著作物の内容や題名など、中身を無断で変更したり修正したりさせない権利です。

場面の一部を省略して出版する場合や、映像化する場合、楽曲を無断でアレンジすることなども同一性保持権の侵害にあたります。

名誉声望保持権

著作物を利用して著作者の名誉や声望、つまり社会的評価を貶めるような行為をさせない権利です。

判例では、著作物(小説)の映像化に際して、著作者の主義や主張に大きく反する内容に改変が行われたことを名誉声望保持権の侵害と認定しています。

法人著作権

著作物を生み出す行為は個人が行うものですが、一定の要件を満たすことで企業などの法人が著作権者となる場合があります。

法人著作の代表的なものは雑誌や新聞に掲載される一般記事です。

法人が著作権を有するための要件は次の4つになります。

(1)法人など使用者の考えで創作が行われること
(2)その法人などの従業員が職務として創作するものであること
(3)その創作物を法人など使用者の名前で公表すること
(4)就業規則や雇用契約などの規則に、著作権に関する特別な取り決めがないこと

著作隣接権

著作権法は、著作物を広める役割を果たす人々や事業者にも一定の権利を認めています。それが著作隣接権です。

著作隣接権は、著作物を実演する演奏家や放送事業者などが、実演や放送などを行った時点で自動的に発生します。

実演家であれば、その演奏を録画したり放送したりする権利、放送事業者であれば放送内容の複製や再放送する権利など、自身が行った著作物を広める行為に係る権利が保護されています。

著作権と企業経営

著作権が企業経営で問題になるのは、自社の制作物で収益を上げる、いわゆる著作権ビジネスを行う場合や、広告などに他人の著作物を利用する場合、また外部委託で何かを制作する場合などが考えられます。

ビジネスとして自社のコンテンツやソフトウェアを販売していく場合、著作権を侵害される側に立つ可能性があります。

逆に他者の著作物を利用する場合や外部委託で何かを創作するなど、創作者が別にいる場合は他社の著作権を侵害する可能性もあります。

著作権を侵害するとどうなる?

それでは著作権を侵害するとどうなるのでしょうか。

著作権の侵害に対して、著作権者は著作権法や民法に基づいて対抗措置を取ることができます。

著作権法では、侵害行為をやめさせる差止請求、著作者人格権の侵害があった場合は名誉回復などの措置を求めることが認められています。

民法では、侵害行為に対する損害賠償請求や、侵害行為によって不当な利益の返還請求が可能です。

加えて著作権侵害は法律に定められた犯罪行為です。

著作権を侵害された者からの告訴が必要ではありますが、侵害を行なった者には刑事罰が与えられる可能性があります。その場合10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という罰則規定が設けられています。

また、もし法人などの組織が著作権を侵害した場合、侵害行為を直接的に行なった者が罰せられるだけでなく、その組織に対しても3億円以下の罰金が科されます。

著作権を侵害しない・侵害されないための注意点

企業経営において、何かを作成したり、作成を依頼したりする場面は少なくないでしょう。

著作権の侵害をしない、されないためには、著作権に対する正しい理解と社内のチェック体制が必要です。

著作物に対する正しい取り扱いができるよう社内全体で著作権に対する理解を深め、著作物を利用する場合は原則として著作権者から許諾を得ることを徹底しましょう。

私的利用や教育関連の利用、非営利目的など、一定の要件下であれば著作権者の許可がなくても著作物を使用することは認められますが、
あくまで例外としての措置です。

また、外部委託などを利用して自社で使用するものを制作する場合、事前の契約に成果物の著作権に関する取り決めを盛り込むことを忘れてはいけません。

プログラム開発を委託し成果物の納品を受けたのち、著作権を主張されたという例もあります。契約には、成果物の著作権と所有権の譲渡、場合によっては著作者人格権の不行使を明記することが重要です。

まとめ

いかがでしたか。著作権について概要や侵害、罰則について解説しました。

著作権は権利の範囲が広く、全体を把握することは大変ですが、企業経営上、無視することはできない権利です。

SNSが普及した結果、誰かの作品を模倣する行為は簡単に発見され、あっという間に拡散されるようになりました。

中小企業経営ではそこまで気にしていられないと思われるかもしれませんが、著作権の侵害行為は自社の社会的信用を失うだけでなく、場合によっては罰金刑を科される可能性すらある犯罪です。

一度自社内の著作権に対する理解を確認し、必要に応じて社内教育など検討されてはいかがでしょうか。