イノベーションのジレンマ 中小企業が大企業に勝つには?

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イノベーションのジレンマとは

イノベーションのジレンマは、ハーバード・ビジネススクール教授のクリステンセン教授が1997年に著書『イノベーションのジレンマ』で提唱した考え方です。提唱されてから20年以上が経過した現在においても、多くのビジネスマンに学ばれる経営理論の1つとなっています。

「イノベーションのジレンマ」とは、特定の業界でシェアを握る企業が、技術や時代の変化についていけず、新興企業が起こす異質のイノベーションにより、市場で敗北する状態を意味します。このイノベーションのジレンマは、大企業・優良企業ほど陥りやすいと言われています。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

イノベーションのジレンマは、持続的イノベーションと破壊的イノベーションの2つのイノベーションによって、引き起こされます。

まずはこの2つのイノベーションについて、詳しく解説します。

持続的イノベーション

持続的イノベーションとは、既存顧客のニーズを踏まえ、製品やサービスの付加価値を向上させるために継続して創出されるイノベーションのことを指します。既存顧客のニーズをサービス改善や商品改良に反映し、より機能的なものや効率的なものを生み出していく状態を指しており、一般的な市場競争で行われるものと言えます。

例えば、家電製品の省電力化やスマートフォンの高性能化などがこれに当たるでしょう。顧客から求められている価値を高め、他社との差別化を実現していくものであり、優良企業や大企業であればあるほど、得意な領域と言えるでしょう。

破壊的イノベーション

破壊的イノベーションとは、既存の市場で求められている価値を低下させて、新しい価値基準を市場にもたらすイノベーションのことを指します。

持続的イノベーションが、既存顧客の満足度を向上させるものであることに対し、破壊的イノベーションは既存顧客とは別の層に向けて、市場価値を変えるようなものを提供するのが特徴です。

破壊的イノベーションでは、圧倒的な技術革新による新市場の創出や、低価格・利便性を追求し、既存の市場とは別の市場創出を実現します。

イノベーションのジレンマが起こる原因

イノベーションのジレンマは、既に市場で地位を確立した優良企業で引き起こされやすいと言われています。

ここでは、イノベーションのジレンマが引き起こされる原因を3つご紹介します。

既存技術・既存製品への依存

市場シェアを獲得した企業は、既存顧客・市場の動向に敏感になり、顧客ニーズを満たすため既存製品・サービスの改善を継続して行います。これは既に製品・サービスを利用している顧客や、利益の恩恵を受ける株主の多くが望むことであり、自然な流れと言えます。

しかし、顧客のニーズは常に変化します。既存技術の改善にばかり注力し、新たな技術への対応をおろそかにすることで、市場に新たな変化が起こったときについていけず、市場を奪われるという現象が起こります。

技術の進歩が市場のニーズを追い越す

持続的イノベーションによる顧客満足度の向上は、ある一定水準まで向上すると、それ以上は改良を重ねても上がらなくなります。

具体的な事例として、ハードディスク容量について考えてみましょう。ハードディスク容量の拡大は数TBまでは顧客の満足度を向上させますが、それ以降いくら大きくしても必要とする顧客層は限定され、市場の満足度は上がらなくなります。

しかし、既存市場で成功体験を得た企業は、顧客満足度がすでに限界にあるにもかかわらず、持続的イノベーションに注力し続けることが、往々にしてあります。

結果として、新たな製品の開発や技術革新にリソースを割けず、市場の変化に追随できなくなってしまいます。

新たな市場への参入をためらってしまう

前述した通り、市場シェアを獲得した企業は、一定レベル以上の利益を生む仕組みを持っています。

一方で、破壊的イノベーションによって創出される市場は、多くの場合、小さな市場規模であったり、得られる利益が小さかったりします。既存市場で利益を得られている企業は、こういった場合、いくら革新的な技術であったとしても、参入すべきでないという判断をする可能性もあります。

結果として、新たな市場へ参入するタイミングを逃し、後から参入しても市場シェアを得ることが難しくなってしまいます。

中小企業が破壊的イノベーションを起こすための戦略

これまでご説明した通り、イノベーションのジレンマは大企業・優良企業こそ陥りやすいものです。

裏をかえせば、中小企業であっても破壊的イノベーションの創出によって、大企業・優良企業に勝つことができるということでもあります。

ここでは、中小企業が破壊的イノベーションを起こし、大企業に勝つためにどのような戦略を取るべきかについて詳しく解説します。

製品サービスの無消費を探す

無消費とは、製品やサービスが以下の制約によって使われづらい状態にあることを指します。

・スキル
・資本
・アクセス
・時間

顧客は、自分の目的を満たす解決策を利用するのに何らかの制約があった場合、利用しないという選択肢を取るものです。

例えばスマホゲームが1つの例です。

かつてテレビゲームはクリアするために膨大な時間をつぎ込む必要があり、大人になり忙しくなるとともに離れてしまう人も少なくありません。しかし最近のスマホゲームは、通勤時などのちょっとしたスキマ時間でもでき、「時間」という制約を取り除いたことで、広く普及しています。

このように、かつての消費者が不便さから消費を諦めた「無消費」を見つけ出すことが、破壊的イノベーションのチャンスです。

満足度の向上余地のある顧客を探す

顧客満足度の向上余地のある顧客を探すことも重要です。

先程も述べたように継続的な持続的イノベーションにより、ある切り口では顧客満足度は限界を迎えます。顧客満足度が限界にきている過剰満足な市場では、低価格や低機能のローエンド商品の投入により、新たな顧客層を掘り起こせる可能性が生まれます。

小規模でのトライアンドエラー

革新的なイノベーションを成功させるには、小規模な範囲内で常にトライアンドエラーを繰り返すことが重要です。

イノベーションのジレンマに陥る要因の1つは、リスクが犯せなくなり、市場の変化に追随できなくなることです。破壊的イノベーションを起こすためには、既存の事業の枠組みから外れ新たな枠組みを作るチャレンジが必要です。

小規模なトライアンドエラーでリスクを抑えつつも、常に新たなイノベーションを起こす意思を持ち続けることが、破壊的イノベーションを起こすために必要なことと言えるでしょう。

顧客ニーズの変化を予測する

最後は、顧客ニーズの変化を予測することです。

新たなビジネスを創出する際に重要なのは、技術や顧客ニーズの変化と時代の変化をフラットな目線で観察することです。破壊的イノベーションの源泉となる顧客ニーズは、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズの中にあります。

顧客の潜在的なニーズは、技術革新やサービスの提供により顕在化されイノベーションへと導かれるため、その変化を見逃さず見つけ出すことが重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回はイノベーションのジレンマについて、概要や発生の原因、対策について詳しく解説しました。

規模の大小を問わず、企業の本質はイノベーションのジレンマを起こしやすい構造にあります。しかし、顧客ニーズを満たすことだけに注力した結果、破壊的イノベーションにより、ある日突然市場を失うことにもなりかねません。

一方で、破壊的イノベーションは中小企業が大企業に打ち勝つ有効な方法の1つだとも言えます。今ある価値だけにとらわれず、イノベーションのジレンマを視野に入れたチャレンジが今後必要になってくるでしょう。

まずは顧客ニーズの変化を先読みし、小規模なチャレンジに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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