法人と個人事業主、どちらにすべき?

経営お役立ち情報

独立、起業する際に直面する選択の一つに「法人か、個人か」があります。

それぞれにメリット・デメリットがあり、事業内容や規模によって適している形態があるのですが、実際に経験するまで内容がわからないものです。また、会社員の方が独立する場合、法人のイメージはあっても個人事業主については意外と知らなかったりします。

今回は個人事業主についての解説、法人との比較をした上で、独立・起業をする際に個人事業主・法人どちらを選ぶべきかご紹介します。起業するときには勢いがあります。あまり調べずに決めてしまって後から「○○のほうが良かったな・・」というのもよく聞く話です。そういった事態にならないよう、是非最後までご覧ください。

意外と知らない個人事業主とは?

日本では、社会人のほとんどが会社員として働いているためか、個人事業主についての詳しい内容は意外と知られていません。個人事業主という単語自体は、ニュースなどで見聞きするものの、会社員からは少し縁遠い存在であったりします。

まずは個人事業主とはなにか?という点について確認しておきましょう。

個人事業主の定義

実は個人事業主に法的な定義はありません。一般的には「開業届を提出し、個人で事業を営む人」とされますので、ここではこれに倣います。会社員と違い、すべて自分の裁量で事業を進めていきます。

よく勘違いされるのは、個人事業主=フリーランスということ。フリーランスは雇用契約を結ばずに独立して仕事を請け負う「働き方」を指します。それに対して個人事業主は開業届を出すことによって、税務上個人事業主という分類になるということです。フリーランスの人が個人事業主である場合が多いので、誤解が生じやすくなっているのでしょう。

個人事業主の具体例

実際にはどんな職業の人が個人事業主として働いているのでしょうか。

よくメディアで目にする職業では、プロスポーツ選手やタレントです。こういった職業の方が雇用契約を結んでいないのはわかりやすいでしょう。ライターやカメラマン、ミュージシャンなどのクリエイティブ関連の職業も多いですし、町の個人経営の飲食店や商店も個人事業主の方がたくさんいます。

一方で同じ職業でも法人として運営している場合もあり、職業で一括にすることは出来ません。

法人と個人事業主の比較

では法人と個人事業主は実際に何が違うのか見ていきましょう。ここでは法人=株式会社とします。

簡単に言えば、

・個人事業主の方が簡単に始められる
・法人の方が社会的信用が高い
・コストは事業や売上の規模による

といった所です。

代表的なポイントを個別に見ていきましょう。

初期資金面

起業する際の初期資金は気になるもの。こちらは当然個人事業主のほうが少額ですみます。

個人事業主

特に必要なし。開業届を出すのにかかる交通費などのみ。

株式会社

資本金は1円から設立可能だが、定款や設立登記などで25~30万円ほどの初期費用が必要。

登記

独立起業するとなると「社名」をまず考えたりしますが、実は個人事業主には社名がありません。

個人事業主

開業届の提出のみで、登記の必要はなし。社名の代わりに「屋号」を使うことは可能。
銀行口座は「屋号付き口座」の開設が可能になる。

株式会社

定款を作成の上、法務局への登記が必要。資本金の払込も必要。

税金

ここは非常に大きな違いであり、どちらを選ぶかを決める際の大きな要因になります。

個人事業主

・税務申告は毎年3月15日までに確定申告を行う。「青色申告」と「白色申告」から選択可能で、青色申告のほうが節税効果が高い。青色申告を行うためには「青色申告承認申請書」の提出が必要。
・所得税の税率は累進課税。所得が上がれば上がるほど税率が上がる。
・損失の繰越は青色申告に限り、3年まで可能

株式会社

・税務申告は決算月から2ヶ月以内に申告をする必要がある。個人事業主に比べ遥かに難解になり、公認会計士や税理士へ依頼することが一般的。
・所得税は比例税率。基本税率は23.2%で、中小企業の所得800万円以下の部分については15%となる。
・損失の繰越は10年間まで可能
・所得がなかった場合にも最低7万円かかる「法人住民税」がある。

経費

こちらも税金同様大きく異なります。収益にも関わる部分ですのでしっかり確認しておきましょう。

個人事業主

・自分への給与の支払いは発生しない。家族への給与支払いは可能だが、経費化するためには事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要。
・交際費に上限はなく、業務上必要なものについてはすべて計上可能。

株式会社

・社長を含む経営者に報酬を支払い、経費にすることで節税が可能になる。
・交際費は一定のルールで上限が設定され、それ以上は「損金不算入」となり経費計上できない。

法人と個人事業主、どちらにすべきか

両者の違いを見てきましたが、どちらにすべきか。それはケースバイケースとなります。
業界、業種、組織形態によっても変わりますが、一般的なケースを見ていきましょう。

スモールスタートなら個人事業主から

1人、もしくは家族で始めるような小規模な事業である場合は個人事業主が適している場合が多いでしょう。

初期資金、維持費も資本金も不要。設備や原価が必要ないコンサルタントやライターといった職業なら、限りなくゼロに近い費用で独立開業することが可能です。

それでいて会社員に比べると、遥かに大きな税控除が認められており、売上さえ確保できれば会社員より大きな収入を得ることが可能です。

また、個人事業主から法人に切り替えることも可能で、まずは個人事業主から始めるというのも有効な方法です。

ある程度の規模があるなら最初から法人に

一方最初からある程度の規模がある場合は法人の方が適しています。資本金、売上、利益、社員数などが大きい場合は個人事業主では手間も税金も大きくなってしまいます。

また、個人に比べて「株式会社」という形態には一定の信頼があります。個人とは取引しないという企業もありますし、業界的に株式会社でないと信用してもらえないという場合もあるでしょう。

こういった場合も法人からスタートするのが得策です。

消費税という観点なら個人2年からの法人化も

もう一つ、「消費税」という観点があります。

消費税は受け取った消費税から、支払った消費税を引いた差分を納めますが、創業から2年間は納税義務がありません。これは個人事業主も法人も同じなので、消費税だけを見れば個人事業主として開業して2年間営業し、そこで法人に切り替えることで最大4年間の免除を受けることが出来ます。

この点については消費税以外の税金、そして2023年10月1日から導入されるインボイス制度などについても注意が必要です。

まとめ

今回は個人事業主とはなにか?法人との比較と起業をする際にどちらを選ぶかという点について解説しました。

一般的には起業=会社を作るというイメージが強いせいか、比較をせずに会社を設立して利益を圧迫するというケースも多く見られます。個人事業主や株式会社といった形態そのものは利益とは関係ありません。一番大事なのは自らの事業に適した形態で、事業自体に注力し、売上・利益を伸ばしていくことです。この点では会社員時代に比べて総務や税務、法務といった部分に大きなリソースを取られてしまうのが現実です。

近年ではこういった間接業務をアウトソーシングするという流れが強まっています。間接業務はプロに任せて、自分は事業にできるだけ集中するというのも有力な選択肢でしょう。