会社名、すなわち会社の商号は、いわば会社の顔となる大切なものです。
個人事業主が自由に決めることができる事業所名としての「屋号」とは違い、法人設立による会社名を決める際には、日本の法律に則ったいくつかの守るべきルールと、知っておくとよいポイントがあります。
そのルールとポイントを知ることで、法に触れないのはもちろんのこと、パーフェクトな会社名を決めていきましょう。
会社名を決めるときに守るべき日本の法律
日本では、商法、会社法、商業登記法といった法律により、商号の選定の自由と制限について定められています。
会社名を決めるときに守るべき6つの基本ルール
会社名を決める際に守るべき基本的なルールは大きく分けて6つあります。
それぞれを細かくみていきましょう。
名前の前後どちらかに会社の種類を入れる
会社法により、会社名の中には会社の種類を含む必要があります。
例えば合同会社なら「合同会社」、株式会社なら「株式会社」の文字を社名の前後どちらかに含むようにします。
これにより、どのような会社形態の組織なのかが会社名のみから容易に判別できるようになります。
例えば、合同会社では「合同会社○○」もしくは「○○合同会社」となり、株式会社では「株式会社○○」もしくは「○○株式会社」となります。
株式会社で、「株式会社○○」のように前に入れたものは前株(まえかぶ)、「○○株式会社」のように後に入れたものは後株(あとかぶ)と呼ばれます。
前株、後株、どちらのが良いということはありませんので、語呂の良さ、読みやすさ、見やすさ、好みなど、色々な視点から考えてみるといいでしょう。
ちなみに近年台頭のIT系など、カタカナやアルファベットを使用した社名の場合は字面のよさから前株が多く、対して古くからある企業では後株が多いようです。
そういったことから、勢いがあり、時代を先取りするイメージを与えたければ前株、落ち着きと歴史ある老舗の安定感を示したければ後株とするような考え方でもよいでしょう。
会社名に公的機関や別の機関と誤認されやすい言葉は使えない
銀行、信用金庫、保険会社、信託会社などの登録を受けた一定の業種では信用維持のためにその文字を会社名の中に使う必要がある一方、それ以外の業種では使用してはいけません。
同様の理由で、例えば「株式会社デジタル庁」のように1府11省5庁の行政官庁の名称を使うことや、「○○学校」といった名称も使えません。
第三者が会社名を見て公的機関や別の機関と誤認しないか?と考えることで可否の判断が容易です。
会社名には他社の一部門と誤認されやすい言葉は使えない
同様に、「○○事業部」「○○支社」「○○支店」「○○本社」「○○本店」といった既存の会社の一部門ということを表すような名称も使えません。
使用できる文字や符号
2002年11月1日に商業登記規則等の一部改正が施行され、会社の商号に使用できる文字や符号が大幅に緩和されました。
商業登記法改正前までは会社名に使えたのは日本の文字だけでしたが、改正後にはローマ字、その他の符号のうち法務大臣が指定するものに限って使えるようになりました。
日本の文字
漢字、ひらがな、カタカナなどの日本の文字が使えます。
ローマ字
AからZまでの大文字、小文字のローマ字が使えます。
ローマ字を用いて複数の単語を区切るときにはスペースが使えます。
アラビア数字
0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、の10個のアラビア数字が使えます。
符号
文字(日本の文字を含む)を区切る際には以下の6符号が使えます。
「&」(アンパサント)
「・」(中点)
「 ‘ 」(アポストロフィ)
「- 」(ハイフン)
「, 」(コンマ)
「. 」(ピリオド)
商号の先頭や末尾には使えません。
ピリオドのみ、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして、会社の種類を表す部分以外の社名の末尾に使用可能です。
同じ住所に同じ会社名(商号)は存在できない
2006年4月30日までは、既に同じ市町村内に同じ営業目的の会社がある場合は同一もしくは類似の商号の登記はできませんでした。
しかし、2006年5月1日に新会社法が施行されこの規定が撤廃されたことで、既に同じ市区町村内に同じ名前の会社があっても、住所さえ違えば登記が可能になりました。
例えば、番地が一つ違いなだけでも違う住所ではあるので登録は可能ということです。
ただし同じ地区内に同一もしくは類似の会社名で会社を設立したことで既存の会社に損害を与えるようなことがあれば、不正競争防止法や商標権で訴えられる可能性があるので慎重に考えるべきでしょう。
また、知名度のアップや話題作りを目的に、あえて有名企業と同じ社名で設立するのは相手会社から不当競争防止法に基づき訴えられる可能性があるので、避けるべきです。
別の地域に本社以外の拠点を作る場合には本社でないことを明示
商号登記上、本社は一つしか認められないため、とある地域に本社の商号登記のある会社が、法務省の別の管轄地域に本社以外の拠点を置く場合は、会社名に支店、営業所、出張所、工場、製造所などを含めて、本社ではないことを明示する必要があります。
例えば「○○株式会社△△支店」のような商号にします。
会社名を決める際に留意しておきたい7つのポイント
会社名を決める際に留意しておくと役立つ7つのポイントについてもおさえておきましょう。
言いやすく、わかりやすい
簡潔でわかりやすく、口にしやすい会社名なら、人々の意識に残りやすいです。
口に出して言いにくいと記憶に残りにくく、会社名が長すぎてもそちらに意識がいってしまいがちです。
会社名に意味や理念をもたせる
会社の理念がわかるような会社名だと、どのような会社かがイメージしやすくなり、覚えてもらいやすくなります。
良いイメージとインパクトのある会社名にする
良いイメージやインパクトを与えるような会社名は、企業イメージの向上に大いに貢献します。
会社名がネット検索したときに表示されやすいか
今では「どんな会社か詳しく知りたい」と思ったときにはネット検索をする人がほとんどなのではないでしょうか?
このときに検索結果として表示されやすければ、サイトを訪れる人が増え、どのような会社かということを認知してもらいやすくなります。
逆に表示されにくければ、なかなかサイトにたどり着けずに検索を諦める人も出るため、企業にとって大きな損失となります。
ドメインを取得できる名前にする
ドメインとはホームページのURL、すなわちインターネット上の住所です。
ドメインを会社名と同じにすれば、公式サイトだということがわかりやすくなるメリットがあります。
日本で登記の日本の会社なら1ドメインのみ登録ができる「.co.jp」や、日本国内に常設の住所と連絡先があれば登録できる「.jp」は信用度が高いドメインです。
ドメインの取得は早い者勝ちなので、会社名の候補についてのドメイン取得が可能かを調べてみるといいでしょう。
海外展開を考えているなら単語の意味に気をつける
いずれは事業のグローバル展開も視野に入っているのなら、外国語としても意味が通じる会社名にした方がいいでしょう。
また会社名が外国語ではどのような意味なのかは意識する必要があります。
特に造語の場合は注意で、例えば見栄えや耳触りのいい、キャッチーな雰囲気に思われたローマ字表記での単語が、実は外国人にしてみればスラングで、悪い意味の言葉だった…ということも少なくありません。
事前に調べたり、現地の言葉に詳しい友人などに確認するなどしておくほうが安全です。
会社名はいつでも変更できる
いくら色々と気をつけ、熟考して決めた会社名でも、諸事情により変更を考えるようになることもあるでしょう。
そういった場合に後から会社名を変更することは可能です。
ただし会社名を変更するとなると、株式会社であれば株主総会の開催を要求されるでしょうし、定款や登記内容の変更など必要となる複数の手続きには手間がかかり、登録変更のための登録免許税3万円も必要になります。
まとめ
本記事では、会社名の決め方について解説しました。
この記事が、イメージ向上にも寄与するような、素敵な会社名をつける一助となれば幸いです。
とはいえ、考え抜いてベストと思った会社名が本当にベストなのか、悩まれる方も少なくないことと思います。
キャシュモグループでは、税理士・社労士・財務コンサルがワンチームで会社設立のお手伝いをします。
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