勤怠管理システムの導入前に読んで!満足できるツールの選び方とは?

労務お役立ち情報

ここ10年ほど、勤怠管理に対する意識の高まりと共に、勤怠管理システムも様々な会社からローンチされています。勤怠管理システムは、自社に合うものを選択すれば、非常に効率化を実感できることでしょう。IT導入助成金が出ているうちに是非導入を済ませておきたいところですが、ポイントを抑えておかないと、「痒いところに手が届かない」と感じてしまう可能性もあります。

勤怠管理システムはどこからどこまでできるのか?自社に合った選び方は?是非、導入前に本記事でポイントを抑えて、満足度の高いツールを導入してください!

勤怠管理システムを導入すべき企業とは?

企業規模によっては、「まだ導入は早い」「今のところ困っていない」と、勤怠管理システムの導入に二の足を踏んでいる企業様も多いかもしれません。勤怠管理システムの導入メリットを享受できるのはどのような特徴のある企業なのか、確認してみましょう。

10名以上の従業員がいる、または従業員が増加していく見込みがある

労務担当者が1名で勤怠管理や給与計算をしていると想定します。アナログで勤怠管理をする場合、正確性を担保しつつ、かつすみやかに給与計算結果を出したければ、対応できる従業員数は15名程度が限界といわれています。

勤怠記録は給与の計算結果にも直結しますし、更には離職票の作成や随時改定等の付随業務にも繋がってきます。勤怠管理システムを導入していれば、これらの業務に必要なデータをすぐに抽出できるため、おおよそ10名以上の従業員のいる企業で導入すれば、効率面・業務の正確性の両面においてメリットをすぐに実感できるでしょう。

また、アナログでの勤怠管理においては、従業員数が増えれば増えるほど、労務担当者が行う業務の工数は人数に応じて倍増していきます。勤怠管理システムを導入していれば、クリックひとつで自動対応できる業務が多いため、従業員が倍増したとしても業務の工数はそこまで増加しません。そのため、成長期をこれから迎える企業においては、できるだけ早い段階で勤怠管理システムを導入しておくといいでしょう。

従業員が勤務する場所が2箇所以上ある

従業員が1箇所だけで勤務していて、かつ従業員数も少なければ、勤怠管理はさほど難しくはありません。しかし、人数が少なくとも、拠点が複数ある場合や、リモートワークの社員がいる場合は、勤怠管理の難易度がぐっと高くなります。

拠点が複数ある場合、それぞれの拠点で勤怠管理に責任を持つ労務担当者を配置できればベストですが、社内のリソースを考慮すると、そこまでするのは勿体ない、という場合もあります。勤怠管理システムがあれば、勤怠記録の修正や有給等の申請についても、オンラインでやり取りができるため、勤務地が離れていても従業員の勤怠管理が容易にできます。また、遠い地域の勤怠記録であっても、見たいときにいつでも閲覧できるため、月中での人件費の計算や、時間外労働の状況のチェックも簡単にでき、「今確認したいのにできない」という状況をなくすことができます。拠点が複数あることのデメリットを解消するためにも、勤怠管理システムの導入は非常に効果的です。

なお、リモートワークの従業員については、各家庭にタイムカードの打刻機を設置するわけにもいきません。PCのログをそのまま勤怠に利用する方法もありますが、家庭でのPC操作は私時間を含む可能性が非常に高く、労働時間が過剰に計上される恐れがあります。リモートワークの従業員がいる場合は、勤怠システムの導入は必須といってもいいでしょう。

雇用形態や勤務形態が複数ある

従業員の雇用形態が同じで、かつ契約している勤務形態が同じ、定時も全員同じであれば、勤怠管理は容易です。しかし、正社員とアルバイトが混在している場合、正社員の中に管理監督者とそうでない者がいる場合、勤務開始時間と勤務終了時間が全員統一でない場合、更に、普通労働制の従業員と、変形労働制やフレックスタイム等、別の勤務形態が入り混じっている場合などは、勤怠管理が一気に煩雑になってしまいます。

従業員の残業時間の管理が企業に厳しく求められる中、個別の従業員の契約に基づいて緻密に勤怠管理を実施するには、かなりの工数がかります。勤怠管理システムを導入しておけば、最初に設定した内容に応じて自動で労働時間を管理してくれるので、非常に楽に感じることでしょう。

将来的にIPOやM&Aを検討している

近年、過重労働に対し非常に厳しい社会になりつつあることを契機に、IPOやM&Aの際のデューデリジェンスでも、労務管理は必ずと言っていいほどチェックされる項目になってきました。これには単純に法令を遵守しているかという意味合いもありますが、未払いがないことの証明に重きを置かれることがほとんどです。

勤怠管理システムは、原則本人がアカウントを利用して打刻するため「代理打刻」がしにくいことや、ログが残るため改ざんの恐れが少ないこと等から、アナログの勤怠管理より客観的であるという評価を受けやすいこと、また、過去のデータを抽出できるため、未払いがないことの証明もしやすいため、問題のない勤怠管理ができていたことをアピールしやすくなります。未払い賃金の時効は法改正により5年になりましたので、IPOやM&Aが直近でなくとも、将来的に検討しているのであれば、導入しておくことが得策でしょう。

勤怠管理システムでは何ができる?主な機能について

では、勤怠管理システムでは具体的に何ができるのでしょうか?勤怠管理システムの機能を知ることで、自社の運用にどのように適用できるのか、検討の材料にしてみましょう。

出退勤の記録、残業時間等の時間外労働時間の集計

まずは一番ベーシックな機能ですが、打刻に基づいて出勤時間・退勤時間・休憩時間等の業務時間を記録することができます。打刻した記録はデータベースに蓄積されていくため、過去分の閲覧等も容易にできます。

また、シフトを登録したり、勤務形態別に設定をしておくことで、1日あたり・1か月あたりの残業時間の集計を自動で出してくれます。なお、機能の充実した勤怠管理システムでは、あらかじめ設定した残業時間を超過した場合アラートを出す機能がついているものもあり、勤怠管理システムが、36協定違反防止の役割を果たすこともあります。

残業時間だけでなく、深夜労働時間や休日出勤時間等も、同様に管理・集計してくれるほか、有給消化日数も記録してくれるため、法的に義務化されている有給消化日数を遵守できているかの管理もでき、勤怠に関する管理全般ができると考えていいでしょう。

記録の訂正や休日出勤、残業、休暇等の各種申請

タイムカードの打刻忘れ等で打刻されている時刻に修正が必要な場合や、休日出勤、残業、休暇取得等の申請についても、申請・承認機能がついています。一般的な勤怠システムは、各従業員自身が申請内容をシステムに登録し、上司が承認した場合のみ、自動的に勤怠管理システムに登録されている情報が更新される仕組みになっています。紙での煩雑なやりとりがなくなり、処理漏れも発生しにくいため、労務担当者のみならず、従業員自身にもメリットのある仕様です。

データのとりまとめ、保管

企業には賃金台帳等、作成と保管が義務化されている資料があります。勤怠管理システムには、記録することが必須となっている「労働日数」「労働時間数」「時間外労働時間数」「深夜労働時間数」「休日労働時間数」を、自動で集計する機能があります。こういった、必要データのとりまとめも勤怠管理システムの主な機能のひとつといえるでしょう。

また、前述のとおり、打刻データ等の記録をデータベースとしてシステムの中で保管・管理し、必要な時にいつでも抽出できるようにすることも、勤怠管理システムの機能の中に含まれています。

その他業務との連携

勤怠管理システムの多くは、その他の労務関連業務を自動で行うことができるソフトと連動しています。最もオーソドックスなものは給与計算で、その他には、雇用契約システムやワークフローのシステム、経費申請等にも紐づいているものもあります。また、勤怠管理システムを人事マスタとして利用できるような設計にしてあり、社会保険のオンライン手続きと連携しているものも存在します。
幅広い業務に連動できるシステムであれば、従業員の登録は1つのシステムのみで行い、その他の業務については簡単な操作のみで終わるよう設計されているので、労務業務の負荷が非常に軽減できます。

導入してから「しまった!」が起こらないように、注意すべき点は?

ここまで読んでいただいた方にとってはメリットばかりが伝わっているかもしれませんが、自社の運用に合わないシステムを導入してしまうと、「失敗した」と感じる場合があります。勤怠管理システムは、導入後は業務効率が上がりますが、導入の準備にコストも工数もかかるので、導入後に気が付いても後戻りしにくいのが事実です。特に下記によく注意して、導入を決定してください。

変形労働制のシフト登録が、在籍人数分簡単にできるか

変形労働制の従業員がいる企業の場合、勤怠管理システムにシフトを登録し、そのシフトを基にして残業時間を計算する可能性があります。また、休日が固定ではないため、所定休日・法定休日も勤怠管理システムに登録する必要が出てきます。

従業員数が多い企業の場合、ひとりひとりのシフトを手作業で登録するのは、毎月うんざりするほどの工数がかかりますので、必ずCSVで一括登録ができるシステムを選択してください。また、CSVで登録するほどの必要はなくても、1か月分をまとめて登録し、一括で操作できるような仕様になっていなければ、効率化を目指して導入しても、結局このシフト登録に毎月時間をかけることになります。

無料体験ができるシステムなら必ず全従業員の1か月分のシフトを登録してみること、無料体験ができなければ、システムの営業担当に代理で登録してもらうところを見せてもらうべきでしょう。

休憩時間が想定している通りに計上されるか

出勤時間、退勤時間の記録については、すべての勤怠管理システムが対応していますが、休憩時間については、導入するシステムによってできることがばらばらです。特にSAASのシステムで、開発が未熟なシステムだと、休憩時間の計上に柔軟な対応ができない場合があります。

休憩開始時間と休憩終了時間にそれぞれ打刻はさせず、6時間以上の勤務なら45分、8時間以上の勤務なら1時間の休憩を自動的に計上したい場合や、1回の勤務時間に2回休憩をはさむ場合、深夜をまたぐ勤務の際に、割り増し時間内に休憩を取っていることを自動的に計算したい場合等、自社の休憩時間の計上方法や運用に合った計算方法ができるか、しっかり確認してから導入しましょう。ここがうまくいかないと、結局休憩時間を手計算にするはめになる可能性もあります。

打刻のまるめ等、自社独自の運用に適用しているか

定時前の打刻を私時間として定時に丸める場合や、逆に着替え等を考慮して打刻前の数分を勤務時間として計上する場合等、また、外出の多い業務に対して直行直帰の記録をしたい場合など、企業によって、「打刻された時間をそのまま労働時間にしない」という運用をしている企業も多いことかと思います。

このあたりを想定されていないシステムを導入してしまったら、頻繁に従業員に打刻修正を申請してもらうことになり、管理者の業務が増えてしまいます。打刻時間以外の時間を労働時間として使う場合は、システムでどのように表現できるか確認してみましょう。

データ抽出した際に、自社が使いやすい形でダウンロードできるか

賃金台帳、給与計算、人件費の計算、労務管理など、勤怠システムで打刻した情報を様々な形で利用する必要があります。システムから抽出されたデータを一度確認し、自社が使いやすい形になっているか、しっかり判断しましょう。
ベストなのは、導入前に過去1か月分の勤怠記録をすべて登録してみて、抽出した状態を確認することです。

上記で案内した以外にも、是非導入前に過去の勤怠記録を用いて操作確認をすることをお勧めします。また、導入後の運用方法や従業員へのアナウンスを想定しながら導入を検討することも有益です。導入したけど結局他の部分で都度手作業をたくさんしている・・・とならないようにしっかりと準備をし、勤怠管理システムを御社の労務管理に役立てるようにしましょう。
また、今導入してしまったサービスに満足していなくても、SAASのサービスであれば、要望をどんどん上げていくことで、比較的早く機能改修が行われることが期待できます。
この記事が、皆様が心から満足できる勤怠管理システムに出逢うための手助けとなれば幸いです。