小口現金の運用は多くの企業で採用されています。
小口現金を扱うにはメリットとデメリットがありますが、意外と多くのデメリットがあるのが事実です。ここでは、小口現金のメリットとデメリットを解説した上で、小口現金を廃止した場合のメリットをご紹介します。そして最後に、小口現金を廃止するにはどのような方法があるのかご紹介します。
小口現金のメリット
小口現金のメリットは、急な現金精算が可能である点です。
社員が立て替えた現金の精算をする場合、すぐにお金を支払える小回りのよさが小口現金のメリットです。また、商品を購入する時に、支払方法が代金引換しか選べない場合、小口現金があれば、そこから精算することができます。あるいは、会社が自治体の組合などに入っている場合は、会費の支払いを現金で行わなければならない場合もあります。そうした場合もまた、小口現金があればすぐに対応可能です。
つまり、急な対応を迫られた場合や、支払の選択肢が限定されている場合に役立つのが、小口現金です。
しかし、その小口現金を扱うにあたっては様々なデメリットが存在します。それを次の章で解説します。
小口現金のデメリット
小口現金を運用していくにあたってのデメリットとして、考えられる点をいくつか挙げてみました。
現金精算のプロセスに時間と手間もかかっている
小口現金で精算をする過程には、時間と手間がかかっています。
まず、経理担当者側の視点から考えてみましょう。
経理担当者は、立替精算の依頼があるたびに、手元の業務を中断しています。
そして、金庫を開け、依頼者に現金を渡しています。この時、経理担当者は間違いなく現金を出金し、違算が発生しないようにと、出金後の残高を確認しています。ここまででかなりの時間がかかっています。
また経理担当者は、出金の日付と明細について帳簿付けをしなくてはなりません。これもまた、時間も手間もかかる作業です。
さらに、小口現金が常に使えるように、経理担当者は釣り銭を準備しておかなくてはいけません。釣り銭に気を回しておくだけでも、神経を消耗するものです。特に忙しい時、釣り銭の準備をしないといけないとなると、経理担当者の業務負荷はおのずと高くなってしまいます。
このように、経理担当者にとって、小口現金での精算にはいくつものデメリットとなる要素が存在しているのです。
一方、立替精算をする側の視点はどうでしょうか。
小口現金から立替精算を依頼する側のデメリットがあるとするなら、それは、自分のいる部署から経理の部署へ出向かないといけない点です。わざわざ出向いていくことに時間を費やしてしまうことがデメリットとして挙げられます。
以上のことから、経理担当者、立替精算をする人、ともに現金精算のプロセスにデメリットが存在することが分かります。
現金精算は心理的な焦りからミスを誘発しやすい
小口現金による現金精算は心理的な焦りからミスを誘発しやすいものです。
小口現金で精算をする時の多くは、現金を必要としている相手が経理の部署にやってきている状況です。そのため、経理担当者が現金精算をしている間は、依頼者である相手を待たせていることになるので、経理担当者に心理的な焦りが生じてしまいます。こうした状況下では、現金の数え間違いが起きるリスクが高まります。ましてや、業務が立て込んでいる時に小口現金の精算を依頼されれば、余計にミスが誘発されやすい状況を作ってしまうでしょう。
このことは、小口現金による現金精算の大きなデメリットです。
帳簿だけでなく現金の現物管理もしないといけない
小口現金を扱うにあたっては、帳簿だけでなく、現金の現物を管理していかなくてはなりません。
現金を数えて、実際の残高を把握し、帳簿と合わせる必要があるのです。
これだけでも小口現金の管理は手間な作業です。
横領などの不正を誘発するリスクがある
小口現金の管理には、セキュリティリスクが存在しています。
小口現金を会社に置いておくというのは、それだけでリスクを孕んでいます。金庫のパスワードが誰かの手に渡り、小口現金が盗難される可能性もあります。もちろんそれは大変稀なケースではありますが、想定として考えておくべき状況です。
金庫を保管するにあたって、パスワードは人の目に触れないように、厳重に管理しなくてはいけません。これだけでも手間がかかります。
小口現金に関する仕訳は手入力が必要
経理処理を行う場合、小口現金に関する仕訳は手入力が必要となります。
小口現金は、ネットバンキングやクレジットカードのように取引明細を会計システムと連携させて仕訳処理を自動化することができないので、その分経理担当者の負担となります。
小口現金を廃止するメリット
前述の通り、小口現金の運用は、メリット以上にデメリットが多く存在しています。では、小口現金を廃止するとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、解説していきます。
関係者の業務負担を軽減し、本来の業務に専念できる
小口現金を廃止することで、関係の業務負担を軽減することができます。特に経理担当者にとっての業務負担は、大幅に軽減されることが見込まれます。小口現金の入った金庫管理から解放され、現金精算のたびに手元の作業の手を止めることがなくなり、違算防止のために神経を使うことがなくなります。
立替精算を依頼する側にとっても、負担は軽減されることでしょう。経理の部署にわざわざ赴く必要がなくなるので、時間を有効に利用できるようになります。
関係者双方にとって、業務負担が軽減できるので、自分の業務に専念することができるのです。
セキュリティリスクを低減できる
小口現金を廃止すれば、その分のセキュリティリスクを低減することができます。
小口現金の入った金庫を扱うにあたっては、金庫のパスワードや保管場所の管理が必要になります。厳重に管理するとはいえ、何度も金庫を開け閉めして管理するのが人間である以上、人為的な管理ミスの可能性があります。小口現金を廃止すれば、そもそも社内に現金が置かれていないので、セキュリティのリスクがその分なくなるのです。
セキュリティリスクを低減することによって、経理担当者は自分の本来の業務に集中して取り組むことができます。当然会社にとっても、セキュリティリスクを低減できることは大きなメリットになります。
経理処理の自動化が可能となる
小口現金を廃止すれば、経理処理の自動化が可能になります。
小口現金をなくして銀行口座からの振り込みとしたり、自動引き落としや、クレジットカード決済の方法を採用すれば、銀行オンラインやクレジットカードの取引明細と会計システムを連携させ、経理処理を自動化することが可能となります。
小口現金を廃止する方法
それでは、小口現金を廃止するにはどのような方法があるのか解説していきます。
急な支払が発生する状況をなくす
小口現金を廃止するにあたって、まずするべきことは、急な支払が発生する状況をなくすことです。例として、配送業者からの代金引換の配達や、組合会費の徴収が考えられます。
支払方法が代金引換である配達の場合、配達の到着時刻が分からない場合が多いため、現金精算をするタイミングも配達時刻に合わせる必要があります。仮に配達時刻が分かっていたとしても、現金精算の手間がかかることに変わりはありません。
対応策としては、商品を注文する際は代金引換の方法を選択しないことです。代金引換しか選択肢がないような商品であれば、その情報は事前に経理担当者へ伝えるような社内ルールを作りましょう。しかしこの場合でも、銀行からその分の現金を出金して準備する必要があります。やはり、小口現金を完全に廃止するのであれば、代金引換の商品は注文しない方向で考えざるを得ません。
また、定期的に利用している配送業者であれば、月に1回の請求に切り替えてもらい、口座引落の支払方法に変えてもらうのが得策でしょう。
自治体からの組合会費の徴収に対応する際も、現金による精算が必要になってきます。地方の自治体の場合、地元の方が徴収に来られるケースがあり、そうした場合は現金で精算せざるを得ません。
対応策としては、あらかじめ銀行から組合会費を出金しておき、事前に準備しておく必要があるでしょう。
法人用のクレジットカードにて管理する
これまで小口現金からの精算に頼っていた立替精算は、法人のクレジットカードを作成することで、現金精算の手間を省くことができます。
クレジットカードを扱うので、セキュリティ管理の手間は残りますが、現金精算による時間と手間の浪費に比べれば、月1回のカード明細のチェックで事足りるので、だんぜん効率的な方法と言えます。
月に1度の立替精算とし、給与と一緒に支払う
小口現金を廃止するもう一つの方法は、立替精算を月1度のみとし、給与支払いのタイミングで一緒に支払うことです。
月に1度の立替精算とすれば、現金精算の依頼者は経理の部署へ何度も行き来する必要はなくなります。また、こうすることにより、経理担当者は月に1度の立替精算の明細書を確認するだけで済みます。給与の支払いと同時に精算するので、小口現金を準備しておく必要がありません。これにより、社内のワークフローをシンプルにすることができます。
まとめ
小口現金の運用を考えた時、ついメリットばかりに目が行きがちですが、実際にはデメリットの要素の方が多いのが実情です。小口現金は現金精算の小回りが利くというメリットがあるとは言え、その背景には、経理担当者の負担、ミス誘発のリスク、そしてセキュリティ上のリスクがあるのです。
小口現金の運用を廃止することで、そうしたリスクをなくすことができます。また、経理担当者のみならず、立替精算を依頼する人の業務負担を軽くすることが可能になります。
小口現金を廃止するには、まずは急な支払が発生するような状況をなくしましょう。その上で、法人用のクレジットカードの活用や、給与支払いと同じタイミングでの経費精算を行うことで、小口現金をなくすことは可能です。いきなりすべての対応策にとりかかるのは難しいですが、今後小口現金を廃止するのであれば、今から少しずつ社内の運用方法を検討していくのがよいでしょう。