令和3年度の最低賃金の改定額が都道府県で決まりました。
引き上げ額は過去最大となる28円の引き上げ目安となり、これを受けて都道府県の改定額は28円以上の引き上げとなりました。
改定後の東京都の最低賃金額は1041円(28円増)と都道府県の中で最高額となっています。全国平均は前年度比28円増の930円となり、今回の改定で初めて全都道府県の時給が800円を超えました。
新たな最低賃金は10月1日から順次適用されます。改定前にチェックしておきたい最低賃金について解説していきます。
最低賃金制度について
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
最低賃金の種類
最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」の2種類があります。
「特定最低賃金」は「地域別最低賃金」よりも高い金額水準で定められています。
※地域別と特定の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
なお、地域別最低賃金は、[1] 労働者の生計費、[2] 労働者の賃金、[3] 通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。
特定最低賃金
特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。全国で228件(令和2年9月1日現在)の最低賃金が定められています。この228件のうち、227件は各都道府県内の特定の産業について決定されており、1件は全国単位で決められています(全国非金属鉱業最低賃金)。
適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業所で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
一方、特定最低賃金は、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。(18歳未満又は65歳以上の方、雇い入れ後一定期間未満の技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。)。
なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
2. 試の使用期間中の方
3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
4. 軽易な業務に従事する方
5. 断続的労働に従事する方
最低賃金のチェック方法
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対
象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
参照:厚生労働省 最低賃金額以上かどうかを確認する方法
まとめ
政府は「新型コロナウイルス禍でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組みも参考にして、より早期に全国加重平均1000円とすることをめざす」としており、新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、最低賃金の引き上げで経営が厳しくなる中小企業に対して補助の割合を高めるなど支援を強化する方針です。
最低賃金が改定される発効日以降は改定後の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があり、違反すると罰則が科せられる可能性があるため慎重に対応していきたいところです。
特に、給与に固定残業代が含まれている場合は計算方法が煩雑になり時給換算すると最低賃金を下回っている可能性もあり得るので注意が必要です。
この他にも、最低賃金についてもっと詳しくお知りになりたい場合は、お近くの労働基準監督署、社会保険労務士にご相談してみてはいかがでしょうか。