ビットコインに代表される仮想通貨は、2009年の登場以来、少しずつひろがりをみせてきました。2017年は仮想通貨元年と呼ばれるほどに、その利用者は世界中で急増しています。日本では2016年6月、資金決済に関する法律(資金決済法)の改正により、仮想通貨が法律に定められ、他の通貨と同様に扱われることとなりました。しかし一方で、税法は整備されておらず、その取扱いについてはいまだ見解の域を脱していないのが現状です。今回は個人の確定申告にかかわる、仮想通貨に関する所得の計算方法等について、国税庁の公表をご紹介します。
仮想通貨の売買等に伴う損益の所得区分
仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、原則として雑所得に区分され、その所得金額が20万円を超える場合には、所得税の確定申告が必要となります。 雑所得の金額の計算上生じた損失については、雑所得以外の他の所得と通算することはできません。
なお、事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられるため、その所得区分は事業所得となります。そのほか、例えば、その収入によって生計をたてていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。
所得の計算のしかた
仮想通貨によって利益が生じる例として、売却した場合のほか、他の仮想通貨とトレードした場合や日本円に換算した場合、仮想通貨を使って商品を購入した場合等が挙げられます。仮想通貨が自分の手から離れた時点で生じた所得が20万円を超える場合には、その所得について申告しなければなりませんが、仮想通貨を保有しているだけの場合は、取得した時点と比べて含み益が出ていたとしても申告の必要はありません。
では、仮想通貨によって利益が生じた場合の所得の計算のしかたはどのようになるのでしょうか。事例を用いて解説します。
仮想通貨の売却
・3月9日 2,000,000円(支払手数料含む)で4ビットコインを購入した
・5月20日 0.2ビットコイン(支払手数料含む)を110,000円で売却した
110,000円 ― (2,000,000円÷4BTC) × 0.2BTC = 10,000円 |
【売却価格】 【1ビットコインあたりの取得価格】 【支払ビットコイン】 【所得金額】 |
保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価格と仮想通貨の取得価格との差額が所得金額となります。
仮想通貨での商品の購入
・3月9日 2,000,000円(支払手数料含む)で4ビットコインを購入した
・9月28日 155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料含む)を支払った
155,000円 ― (2,000,000円÷4BTC) × 0.3BTC = 5,000円 |
【商品価格】 【1ビットコインあたりの取得価格】 【支払ビットコイン】 【所得金額】 |
保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価格と仮想通貨の取得価格との差額が所得金額となります。商品価格とは、日本円で支払う場合の支払額の総額(消費税込み)をいいます。
仮想通貨と仮想通貨の交換
・3月9日 2,000,000円(支払手数料含む)で4ビットコインを購入した
・11月2日 他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価600,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料含む)を使用した
600,000円 ― (2,000,000円÷4BTC) × 1BTC = 100,000円 |
【他の仮想通貨の時価】 【1ビットコインあたりの取得価格】 【支払ビットコイン】 【所得金額】 |
保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価格)と保有する仮想通貨の取得価格との差額が、所得金額となります。購入金額とは、他の購入金額を購入する際に支払う仮想通貨の総額を日本円に換算した金額をいいます。
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仮想通貨の所得の計算には、年間取引報告書が発行されない業者があったり、取得時や使用時のレートの確認が困難であったりと、問題点が多くあります。また、法人が仮想通貨を保有するケースも急増すると考えられますが、現状、法人税法上の取扱いは不明確なままで、今後の動きについて注視していく必要があります。
仮想通貨で生じた所得には税金がかかるという認識のもと、運用には十分ご留意いただければと思います。また、仮想通貨に興味をお持ちの方は、税理士法人キャシュモ担当者までご相談ください。