前回、経営者の仕事は「企業の方向づけ」「資源の最適配分」「人を動かす」の3つであると紹介しました。今回は「企業の方向づけ」の根幹となる「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を取り上げます。
ミッション・ビジョン・バリューとは何か
経営者の仕事である企業の方向づけは、「何をやるのか」「何をやめるのか」を明確にすることです。その判断基準となるのが、ミッション・ビジョン・バリューです。
ビジョン : 当面の目標 = 企業が目指す将来像、あるべき姿
バリュー : 行動規範 = 組織が共有する価値観
皆様の企業ではミッション・ビジョン・バリューを定めていますか?それは浸透していますか?
書店のビジネス本コーナーにも経営戦略の本が沢山置いてあります。「戦略」に対する関心は高い傾向にあるようです。しかし、似たような戦略を立てているにもかかわらず、業績に大きな差が生まれることが多々あります。その差が生まれてしまうのは戦略を徹底できている企業と、徹底しきれない企業に分かれてしまうからです。ミッション・ビジョン・バリューが明確で、従業員に浸透している企業は、戦略を徹底できる傾向にあります。
ビジョナリー・カンパニー
「ビジョナリー・カンパニー」※1という本をご存知でしょうか。この本の中で、ミッション・ビジョン・バリューが浸透している企業(=ビジョナリー・カンパニー)と、そこまで浸透していない企業との投資利回りを60年間に渡って比較した※2結果が紹介されています。
ビジョナリー・カンパニーはそうでない企業に比べて、投資収益が6倍以上になったそうです。長期的な視点では、儲けのみを追い求めた企業よりも、ミッション・ビジョン・バリューを追求した企業の業績が良くなります。
しかし、「ミッション・ビジョン・バリューを定めれば、儲かる」という発想は危険です。あくまで、儲けはミッション・ビジョン・バリューを追求した結果として、後からついてくるものだと考えてください。
※1 ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス著。1994年に出版され、5年連続で全米のベストセラーとなった。
※2 端的に言えばどちらの株を購入すれば儲かるのかを調査した。
自分の頭で考えて、体現者となる
ミッション・ビジョン・バリューは他の企業のマネをしたり、誰かに考えてもらったりしては意味がありません。形だけのものには意味がないですし、むしろない方がよいくらいです。経営者が自分で考え、自分が誰よりも信じて、先頭に立って実践することが大切です。
考える際のポイントとしては
② 働く人たちが幸せになること
③ 結果的に高収益であること
という3つの要素はどの企業にも必要ですので、これらを軸に考えることをおすすめしています。
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繰り返しになりますが、経営者自身が信念を持って実践したときに、ミッション・ビジョン・バリューは初めて意味を持ちます。自分の一挙手一投足は常に見られているという意識を持って、ミッション・ビジョン・バリューに則した行動を心がけていくことが大切です。
<参考文献>
・小宮一慶(2017)『経営者の教科書』ダイヤモンド社
・ジェシー・ストーナー(2004)『ザ・ビジョン』ダイヤモンド社