制度開始以来、多くの企業にご利用いただいているキャリアアップ助成金ですが、平成29年度(2017年4月1日~2018年3月31日)から、新たな要件が加わりました。「生産性」を向上させた場合、助成金の受給額が割増されるというものになっています。
◇要件創設の背景と趣旨
近年日本では、少子高齢化が進み、労働人口が減少していくことが見込まれています。労働人口が減少していく中で、経済成長を図るためには、個々の労働者が生み出す付加価値(生産性)を高めていくことが不可欠となっています。
このような背景から、企業における生産性向上の取り組みを支援する目的で、生産性を向上させた企業が労働関係助成金※を利用する場合、その助成額や助成率が割増されることになりました。
※厚生労働省が行っている助成金の一部が対象となります。
◇生産性の測定方法
今回創設された「生産性要件」は以下の計算式で求めます。
<生産性計算式>
生産性 = 付加価値 / 雇用保険被保険者数
※付加価値 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費+ 動産・不動産賃借料 + 租税公課 |
この計算式によって算出された「生産性」を、助成金の支給申請を行う直近の会計年度におけるものと、その3年前のものと比較します。3年前のものと比較して、6%以上向上していれば、要件を満たすことになります。
◇キャリアアップ助成金の助成額の変更点
キャリアアップ助成金の助成額は生産性要件を満たした場合と、満たせなかった場合で異なります。
生産性向上≧6% | 生産性向上<6% | <参考>昨年度 | |
① 有期 → 正規 | 72万円 | 57万円 | 60万円 |
② 有期 → 無期 | 36万円 | 28万5千円 | 30万円 |
③ 無期 → 正規 | 36万円 | 28万5千円 | 30万円 |
昨年度の助成額から、生産性要件を満たした場合(生産性が6%以上向上した場合)は20%助成額が増額され、満たせなかった場合は5%引き下げられています。
この変更は平成29年4月1日以降に転換(ないしは直接雇用)された従業員に適用されます。助成金の支給申請は転換(ないしは直接雇用)から6ヶ月間雇用した後で行いますので、今回の変更が適用されるのは支給申請を平成29年10月以降に行う従業員からになります。平成29年3月31日以前に転換した場合は、従来の要件が適用されますので、注意が必要です。
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冒頭でも述べたように、日本の課題は労働者一人ひとりの生産性を向上させることにあります。これは、人材難が続く、中小企業単体においても同様です。この機会に自社の生産性を測り、向上させる方法を検討してみてはいかがでしょうか。