入社前の健康確認、どこまで聞いていい?―採用時の適正判断と個人情報の取り扱い

労務お役立ち情報

採用活動の中で、応募者の健康状態を確認したいという声はよくあります。
「体力に自信があるか」「持病はないか」といった確認は、業務への影響や早期離職を防ぎたい企業にとって自然な関心です。

しかし、健康情報の取り扱いは非常に慎重でなければなりません。不適切な対応は、個人情報保護法違反や採用差別とみなされるリスクがあります。

本記事では、採用時に健康状態を確認する際に企業が知っておくべき3つの法的ポイントについて解説します。

個人情報保護法

個人情報保護法:健康情報は「要配慮個人情報」

応募者の健康状態や病歴、通院歴などの情報は、個人情報保護法上「要配慮個人情報」に該当します。これは、差別や偏見につながるおそれがあるため、特に慎重な取り扱いが求められる情報です。

企業がこの情報を取得するには、明確な利用目的を伝えた上で、本人の同意を得る必要があります。ただし、仮に同意を得たとしても、「業務遂行に本当に必要な範囲」に限って取得すべきです。

労働安全衛生法

労働安全衛生法:雇入時健康診断の義務は“採用後”

労働安全衛生法では、企業に対し「雇い入れ時健康診断」の実施を義務づけています。
ただしこれは、採用が決まった後に実施するものであり、選考過程で健康診断を求めることは原則避けるべきです。

仮に採用後の健康診断で異常所見が見つかったとしても、直ちに内定を取り消すことはできません。
本人への確認、業務上の支障の有無、配置転換の可能性などを慎重に検討し、「客観的かつ合理的な理由」がある場合に限って対応する必要があります。

厚労省「公正な採用選考の基本」

厚労省「公正な採用選考の基本」:聞いてはいけない項目

厚生労働省は、「公正な採用選考の基本」として、企業が応募者に聞いてはならない項目を明示しています。
そこには、病歴・持病・通院状況・家族の病気など、採用に直接関係しない事項が含まれています。「就職差別につながるおそれがある」として、「HIV」「B型・C型肝炎」「ウイルス性肝炎」等の感染情報、色覚多様性(色覚異常)、遺伝子検査の情報については、業務上特に必要がない限り、一律に聞くべきではないと厚労省は具体的に指導しています。

業務上、健康面での配慮が必要な場合には、**「就業にあたり健康面で特別な配慮が必要な場合はお知らせください」**といった案内をするにとどめ、本人からの任意申告を受ける形が望ましいです。

まとめ

採用時の健康状態の確認について、企業が注意すべきポイントは以下の3つです。

・健康状態は「要配慮個人情報」。本人の同意がなければ取得不可
・健康診断は「採用後」に実施するのが原則
・本人から申告があった場合は、誠実に合理的配慮を検討する

採用時には、業務遂行に必要な能力や適性に基づいた公平な選考を行い、健康情報については慎重かつ適切な取り扱いを心がけて下さい。

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