1993年に創設された技能実習制度を廃止し、就労を通じた人材育成及び人材確保を目的とする「育成就労制度」の創設などを盛り込んだ入管法及び技能実習法の一部を改正する法律が6月14日に成立しました。法律名を「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改称し、公布日6月21日から3年を超えない範囲内で政令に定める日から施行されます。
今回は育成就労制度について説明していきます。
育成就労制度について
育成就労制度は、現行の特定技能で受け入れている産業分野を軸に検討される育成就労産業分野において、特定技能1号水準の技能を有する人材の育成を目指し、人手不足産業における人材確保という目的も明確になります。
受け入れ機関は原則3年の就労期間において、業務や技能、日本語能力等の育成を行いますが、技能実習制度では認められなかった本人の意向による転籍も一定の要件の下で可能となります。一方で、技能実習制度における監理団体に代わり監理支援機関を設け、外部監査人の設置を許可要件とするなど、中立・独立性を担保します。
また、外国人技能実習機構に代わる外国人育成就労機構を設立し、その機能に育成就労外国人の転籍の支援や、特定技能1号の外国人に対する相談援助業務などを追加します。
このほか、施行日までに技能実習生として入国した者は、技能実習1号から2号など、次の段階に資格を変更するまでのおおむね3年間、引き続き在留を認める経過措置を設けます。
技能実習制度の現状
技能実習制度は、外国人が日本の技術や知識を学ぶための制度として1993年に創設されましたが、多くの問題を抱えているのが現状です。
労働力確保のために技能実習生を受け入れることは禁止されているにもかかわらず、現状は労働力確保を目的として技能実習生を受け入れている企業が多く、理念と実態がかけ離れてしまっています。
また、技能実習生は転籍が原則不可能になっているため、仮にハラスメントを受けた場合でも技能実習生が一方的に不利益を被るケースが発生し、失踪してしまうという問題もあります。
技能実習制度が国際的に批判されているという現状もあります。長時間労働や低賃金、ハラスメントなどの問題を踏まえ、2023年のアメリカ国防省の報告でも、「日本の技能実習制度では労働搾取が行われている」など、この制度に反対しています。
技能実習制度と育成就労制度の違い
技能実習制度が我が国での技能等の修得等を通じた人材育成により国際貢献を行うことを目的とする制度であるのに対し、育成就労制度は、我が国の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度であり、制度の目的が異なります。
そして、このような制度目的の違いを踏まえ、育成就労制度では、外国人を労働者としてより適切に権利保護するという観点から、技能実習制度では認められなかった外国人本人の意向による転籍を一定の条件の下で認めることに加え、受入れ対象分野を特定産業分野(生産性向上や国内人材確保を行ってもなお外国人の受入れが必要な分野)のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なものに限り、原則3年間の就労を通じた人材育成によって特定技能1号の技能水準の人材を育成することを目指すものとしています。
まとめ
育成就労制度について、2024年7月時点現在でわかる内容を解説しました。
育成就労制度は、2027年から開始され、2030年までが移行期間となる見込みです。
育成就労産業分野や入国後講習の内容など未確定な部分もあります。
今後も働き手が減り、人手不足に苦しむ日本の企業にとって、育成就労制度はメリットの大きい制度になるでしょう。
準備なしに受け入れることは難しいため、将来的な受け入れに向けて準備しておくことをおすすめします。
受け入れに係る労務相談、労務条件の設定、給与計算などのご相談は、社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
参照:厚生労働省「育成就労制度の創設等」